2016年6月を振り返る―像の文字化と文字の像化を通じた論理能力向上に向けて(5/5)
(5)2016年6月の学びを概括する 本稿は、2016年6月の学びを振り返ることで、像を文字化し、また文字を像化する訓練を通じて、論理能力を向上させるとともに、学んだ中身を深化させることを目的として、ここまで執筆してきたものである。 ここで改めて6月の学びを概括しておくとすると、全ての問題を繋げて把握することの大切さを学んだ月であったといえると思う。小論執筆の学びにおいては、現代の時事問題について、この間集中的に学んできた「戦後日本のあり方」という問題がどのようにオバマの「広島演説」に関係してきているのかの考察を行うことができた。言語学関連の学びでは、ソシュール言語理論の独自の概念だと捉えていた「ラング」と「パロール」に関して、三浦言語学の「言語表現」と「非言語表現」とのつながりに気づいたことが大きな収穫であった。一般教養・弁証法・認識論の学びにおいても、「いのちの歴史」を単にそれだけとして学ぶのではなくて、ナイチンゲールやヘーゲルの論理と繋げて把握する重要性を学んだ。『敗北を抱きしめて』に関しては、この間の新聞社説への学びで大きく浮上してきた、現代日本人の主体性のなさの根本には、どのような問題が根源として含まれているのかという点について、いろいろと考察をすることができたと思う。全て、現実の世界に対峙する自分自身が、自分自身の問題として世界のあらゆる問題を説いていくのだという思想家魂がなければ、学問などやっていても単なる閑散事となってしまうということだと思う。そういう意味では、「世界全体の一般的な連関・運動・発展の法則についての科学」(『弁証法はどういう科学か』p.23)たる弁証法の学びにも、意識的に取り組んでいく必要がある。 6月は他にも、他会員の論稿やレポートなどに全てコメントすることができた。今回の振り返りに関してもそうであるが、全ての「書く」という行為について、像を文字化するとはどういうことで、どのようにすればしっかりと像を文字化できるのか、考えながら実践することができたのではないかとも思う。 では、こうした学びを踏まえて、2016年7月の課題を以下に設定しておく。 小論執筆の学びについては、8月4日第1項締め切りのブログ掲載用論稿「文法家列伝:ソシュール編」をしっかりと書き上げることが最も大きな課題となる。言語研究史上のソシュールの位置づけ、特にソシュールの直前までの潮流であった比較言語学とのつながりや時枝・三浦言語学への発展にどのような影響があったのかという観点から執筆していきたい。今回の振り返りでのまとめを踏まえて、さらに序論でどのような問題意識を明確にするのかという点も含めて、これまでよりも高いレベルの論稿に仕上げたいと思う。 言語学関連の学びに関しては、6月にやり残した丸山圭三郎『ソシュールを読む』をしっかりと読んでいきたい。特にこの著作については、ソシュールの原文が広く引用されているので、これまでの理解をソシュールの言葉そのもので裏付けるべく取り組んでいきたい。また、9月27日第1項締め切りのブログ掲載用論稿「三浦つとむ『認識と言語の理論』を読む」執筆の準備として、これまでスカイプ学習会で学んだ内容を復習しつつ、要約したものをしっかりと読んでおきたい。本論の三本柱とその三本柱のそれぞれの3つの視点に関しても、大枠で構想しておきたい。 一般教養、弁証法、認識論の学びとしては、まず、スカイプ学習会用の課題として、本田克也他『看護のための「いのちの歴史」の物語』第4章第5章を読むこととする。また、吉本隆明『日本近代文学の名作』読書会に関わって、江戸川乱歩『陰獣』も読んでおく。他にも、吉田裕『昭和天皇の終戦史』、加えて最近離れていた南郷学派の著作として、南郷継正『武道哲学講義(1)(2)(3)』、瀬江千史他『医学教育概論(6)』、聖瞳子他『医療実践方法を論理の学に(1)』も読んでおきたい。ドイツ語に関しても、少しでも復習を始めたい。7月◆第1-2週(1-9日) ・ヘーゲル『哲学史』デカルト~マルブランシュ ・南郷継正『武道哲学講義(1)』 ・南郷継正『武道哲学講義(2)』 ・振り返り執筆 ・例会への論点提出 ・論点への見解執筆◆第3週(10-16日) ・聖瞳子他『医療実践方法を論理の学に(1)』 ・丸山圭三郎『ソシュールを読む』 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第1部復習 ・ブログ掲載用論稿「文法家列伝:ソシュール編」構想◆第4週(17-23日) ・瀬江千史他『医学教育概論(6)』 ・本田克也他『看護のための「いのちの歴史」の物語』第4章第5章 ・吉本隆明『日本近代文学の名作』江戸川乱歩 ・江戸川乱歩『陰獣』 ・三浦つとむ『認識と言語の理論』第2部復習 ・ブログ掲載用論稿「文法家列伝:ソシュール編」執筆 ・例会の感想執筆◆第5-6週(24-31日) ・南郷継正『武道哲学講義(3)』 ・吉田裕『昭和天皇の終戦史』 ・ヘーゲル『哲学史』ロック~ドイツの通俗哲学 ・ブログ掲載用論稿「文法家列伝:ソシュール編」執筆 ・スカイプ学習会の振り返り