ゆきよきの言語学・夏目漱石・日本史

2013/12/02(月)12:28

現代の言語道具説19「お客さまが近づいていると」

言語学(310)

 中日新聞に連載中の町田健氏による「現代日本誤百科」批判の19回目である。今回は、「お客さまが近づいていると」と言う表現をめぐる町田氏の見解を見ていこう。  町田氏はこの表現のシチュエーションとして、「駅のホームで誰かが列車のあまり近くにいる場合、発車できない。この時、アナウンスに表題のような文句が使われることがある」と説明する。そして「まず問題なのは「お客さま」に対して敬語が使われていないことだ」としたうえで、「近づかれていると」と敬語にしても、「列車に近づいている途中なのか、近づいた後で止まっているのか、意味が曖昧なままだ」から、結論として、「お客さまが列車に近づきすぎていらっしゃると」のように言うべきだと断ずる。  第1の指摘、つまり「お客さま」に敬語を使えという指摘は最もだろう。しかし、「意味が曖昧」は情況としては良く分からない。  「列車に近づいている途中」でも、そのまま指摘しなければ「近づいた後で止まっている」状態になりかねず、どちらも危険と言わざるを得ない。結論として町田氏が述べた「お客さまが列車に近づきすぎていらっしゃると」のようにすれば、確かに「近づいた後で止まっている」方の意味だと分かるが、このアナウンスの表現者は、こうしたことを伝えたかったのではないように思う。  「すぎて」いなくても危険は危険である。町田氏の最後の提案では逆に、「すぎなければいいのか」と反問されてしまうだろう。ただ今回は、全体として理にかなった解説になっていた。

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