お札に肖像が描かれる理由
日本のお札、1万円札には福沢諭吉、5千円札には樋口一葉、千円札には野口英世の肖像が描かれています。なぜお札には肖像が描かれているのでしょうか?一般的には次の4つの理由があります。第一は偽造防止です。人物の顔は使う人にとって印象に残りやすいものなので、わずかな違いでも容易に識別できます。技術的な面でも風景と違って原版の復刻による偽造が難しく、複写による偽造も肖像に細かな描写技術がふんだんに使われているので、極めて困難とされます。第二はお札を使う人に親近感をもってもらうためです。従って歴史的な功労者、英雄、文化人などの知名度が高く、多くの人たちに親しまれている人が肖像のモデルに選ばれます。第三は金額や種類を簡単に判別できることです。例えば米国ドルのように全て同じサイズで印刷の色まで統一されている場合は、そこに描かれている人物の肖像が種類を判別する決め手になります。第四は政治的目的に基づくということです。ヨーロッパなどでは、国王などが自分の肖像を彫刻したコインを発行して権威を誇示しました。その延長でコインの後に登場した紙幣にも肖像が描かれました。日本では明治20(1887)年に政府がお札の肖像の候補として、日本武尊、武内宿禰、藤原鎌足、聖徳太子、和気清麻呂、坂上田村麻呂、菅原道真を決定しました。大東亜戦争終了後、GHQより「聖徳太子は平和愛好者と認めるが、他の6人は軍国主義的色彩がある」としてお札の肖像候補から外されました。現在では、日本銀行法第47条第2項により財務大臣が公示することが定められています。出典:日本銀行金融研究所貨幣博物館