たった一言
某スポーツの世界大会の通訳ボランティアをした時のこと。私の担当国の一つがチリチームでした。チリはスペイン語圏。で、私のスペイン語がどうかというと・・・実に怪しい(笑)ポルトガル語が少し分かるので なんとか聞き取る事はできるのだけどそれまでにスペイン語を話したことが無いので、「???・・・」て感じです。なのに いつものように あまり考えもせず悩みもせず「いいよ~。担当するよ~」とお気楽に引き受けたのです。チリチームは 見事にスペイン語しか話せない(のか、話さないのか?)人達でした。でも、とっても温かい人達だったおかげで 無事に(?)通訳をこなす事ができました。どんな風だったか・・・それは本当なら私以外は“通訳”とは呼ばないような仕事っぷりでしたチリチームの選手は2人ミゲルとフィリップ、コーチ1人監督1人の 合計4人だけ。だから常に4人は一緒に行動していました。ある日 ミゲルとフィリップはダントツトップで予選を勝ち抜きました。とってもかっこよくて感動した私はその日の夕食会場で「ウノ(スペイン語で1)だったね~~~!」と指を一本立てて言いました。“ウノ”だけがスペイン語です(笑)でも、どうやら通じたようで ミゲルもフィリップもにこっと笑って同じように指を一本立ててくれました。それから、「明日(決勝)もウノでね!」(またもや“ウノ”だけがスペイン語!)と両手で胸の前にガッツポーズを作りました。多分通じたようで 同じようにミゲルとフィリップもガッツポーズを作って「頑張るよ」みたいな事を言ってくれました。次の決勝当日。他の通訳も兼ねていた私はチリチームの試合の結果を知らずにいました。そこへ競技を終えたミゲルとフィリップが現れました。「ミゲル~!フィリップ! ウノだったぁ?」(相変わらずウノだけがスペイン語)二人は 残念そうに首を振って 指を二本立てました。1秒も差がないくらいほんのわずか遅くて2位だったのです・・・・・。それでも、二人は笑顔で 表彰式でもらった花束を私にくれ、銀メダルを首にかけてくれました。ありがとうと言いながら。「ウノ」で始まり「ウノ」で終わる私の通訳。次は北京オリンピックで会おうねって約束しました。たった一言でも そこから広がる心と心の会話が必ずあります。“言葉なんていらない”とよく言うけれど 言葉は必要です。話せなくても話そうとするかどうかが 大きな違いだと私は思っています。それにしても 今になって思い出してみると・・・・「ドス(“2”)」くらいは言えば良かったな。言えたのに!(笑)P.S.もちろん、「ウノ」以外に他の仕事もちゃんとしましたよ!(笑)