第2話 バブルの中へ【 第2話 バブルの中へ 】何の為に働くのか? そんなことは考えもしなかった。 ただ誰からも認められる人間になりたいと思っていた。 就職先についても、大して考えた訳でもなく 当時一番人気が有り、世間体も給料も良さそう という理由で銀行を選んだ。 何よりも、みんなから一目置かれると思ったし 女の子にモテたい!という軽いものだった。 ・・・・・・・・ 当時、私は自分に自信が持てず 他人に映る自分をいつも気にして生きていた。 ブランドのスーツで身を固めることで 自分の価値を高められると思ってた。 自分に中味がないことを悟られまいと はったりと、背伸びを続ける毎日。 でも、その頃はそれでも何とかうまくいった。 村上春樹の小説が好きで、都会的でクールな 生き方に憧れていた私は、昼はキリリと仕事。 夜はジャズを聴きながら静かに酒を飲む…。 なんて生活が最高にカッコイイと思っていた。 しかし現実は小説とは違う。(あたり前か) 朝早くから深夜近くまで働き、その後は居酒屋 で上司のグチを聞きながら酒を飲む。 20時間近くも履きっぱなしの革靴は臭くなり スーツもヨレヨレ。 う~む、これが社会人というものなんだ。 一年生ながら妙に達観したのを覚えている。 時代はバブルの真っ只中。 この仕事が世の中の為になってるとか 駄目とか、そんなこと考える余裕もなかった。 毎日ノルマ、それが出来たらまたノルマ…。 ノルマをこなすと、君は優秀だからと言われ もっと沢山の割り当てが振り分けられる。 出来ないとケチョンケチョンに罵倒される。 どっちにころんでも大変なのだ! ウィークディはそんな毎日でも まだこの頃は、休みを取れる余裕もあった。 海好きな私は、横浜に転勤になったのを機に 独身寮の3人でサーフィンチームを結成し 毎週末茅ヶ崎の海に繰り出した。 といっても、みんな初心者ばかりだったので なかなか波に乗れない。 2~3時間もすると海からあがり デニーズで「今日の波は全然ダメだよな~」 とか言いながら ナタデココを食べるのがいつものコース。 当時は真剣に、自分が支店長や頭取になったら ゴルフや料亭で接待するのではなく ヨットやサーフィンで接待する 斬新な銀行マンになりたいと考えていた。 「銀行員」という言葉からイメージする通り 銀縁メガネをかけ小難しい顔をしている 本当にそんな人ばかりに思えた。 「俺達は、そうはなりたくないよな。」 よく3人で、そんな話をしたものだ。 ~つまらない顔したおっさんにはならない~ わがヘッポコサーフチームの誓いの言葉は そんな思いから生まれた。 プライベートが充実すると、仕事も充実する。 相変わらずノルマに追われる毎日ではあったが 関西の厳しい商売とくらべて 関東での仕事はとても楽に感じた。 そんな中で、私はお客さんや環境にも恵まれ 順調に成績を伸ばしていった。 下手くそだったサーフィンも次第に上達し どんどん楽しくなっていった。 相変わらずデニーズのナタデココは美味しく チームの3人での語らいは愉快だった。 全てが順風満帆に進んで行くように思えた。 (第3話へ続く) 第1話 → 「いまあなたは幸せですか?」 第2話 → 「バブルの中へ」 第3話 → 「崩壊」 第4話 → 「事を成す」 第5話 → 「キラッと生きる」 コラム → 「私には夢がある」 公式HP Body curiosity |