カテゴリ:経営者のための連続コラム
5-1 行動指針を決める
未来の羅針盤や経営理念など向かうべき方向が決まりましたら、行動の指針を決めていきます。 リッツ・カールトンの「クレド」ですね。 行動指針というのは自分たちが向かうべきものがこれだとしたら、営業のなかでおこりうる様々なできごとに対して、各自がどう動くかという行動の軸を決めることです。 マニュアルがルールを決めて、基本はお客様に対して不満をおこさないためにスタッフの行動を制約するのに対して、行動指針をつくる場合の未来型運営は自分たちのやりたい未来を実現するために、あえて価値観を共通化して自主的な行動を行います。 5-2 理念と行動指針の違い 私は仕事柄、多くの会社の経営理念を拝見する機会がございます。 様々な経営理念を拝見させていただいて思うのは、経営理念とされているものが「これは行動指針だな」ということです。 行動指針は経営理念に向かう時にとるべき態度です。 経営の目的、すなわち、向かうべき羅針盤となる経営理念でないと、目先の対応を単発でおこなうことが多くなります。 まず、しっかり自分たちは世の中にどのような価値を提供するのか、向かうべき方向を明確にして、その方向にふさわしい行動指針を決めるべきです。 5-3 行動指針作成・見直しの四つのステップ 例えば、「洋食の技をお客様に伝える」ということをミッションに決めた店だとして検討しましょう。まず、洋食の技という概念(価値観)を店内(社内)で共有する必要があります。 手順は、価値観の見える化、価値観を行動指針に落とし込む、阻害する過去のルールを捨てる、検証・修正の四つの行程に分解することができます。 Step 1 価値観の見える化 そこで、まず、スタッフ全員参加のミーティングを行い、「洋食の技ってなんだろう」ということを、時間をかけて検討します。 注意しないといけないのは、トップダウンで行わないことです。 どうしても、早く決めたいために、上のほうから、〇〇と□□と▲▲のように決めてしまいますね。 これがいけません。 関わる人全員が共有する必要があるために、まず、全員に考えていただくことが大切です。 価値観の見える化の実際 では、実際に洋食の技という価値観をみんなで共有できるように見える化していきましょう。 まず、技の意味を考えましょう。技とは家庭では味わえないものを提供する原資と言うことができるかもしれません。 次にその原資ついて具体的に考えます。まず、調理技術そのものが考えられますね。肉の焼き方、ライスの炒め加減、玉子のとじ方、ソースの作り方、だしの取り方などなど考えるとまず浮かびますね。 他にはないでしょうか?考えて行くと、材料の目利きも技になるかもしれませんね。 それから、調理の知識もそうかもしれませんね。もしかしたら、接客もそうかもしれませんね。販売促進もそうかもしれません。 自分たちが“洋食の技”と定義すべき価値観の見える化です。 Step 2 価値観を行動指針に落とし込む 価値観が決まったところで、それぞれの価値観に対してどのように行動したらいいかを明文化します。 例えば、食材選びだったらどのように行動すべきか、調理だったどう行動すべきかを決め込みます。メニューを作る場合どうするか、接客だったら、地域密着の接客をするなど自分たちがどのように行動していくべきかを決めていきます。 Step 3 阻害する過去のルールを捨てる 行動指針を決めると過去に決めたルールと競合することがよくあります。 その場合は、その古いルール自体を見直す必要があります。 例えば、グラスワインのメニューにないメニューに対して、誕生日のお客様から「このワインのグラスはないの」と聞かれた場合、今までしたら、「グラスワインはこちらとこちらになります」と答えていたのを、お客様に喜んでいただくための費用としてスタッフにいくらまで自由裁量で判断できるように変更するなどです。 こちらは実際にポルチーニの中谷さんがやられている方法で、リッツ・カールンのやりかたを自社にあてはめてやっています。 だから、中谷さんの店では、次々と新しいワインを開けてくれるわけで、感動が口コミして、場末の立地に多くのお客様を呼び寄せています。 (中谷さんの店のおかげで、福島はトレンディスポットになりました) ⇒5-4のエンゲージメントの共有で詳述 Step 4 検証・修正 決めた行動指針というのは、現段階でよしとするものですから、店の成長にしたがい修正が必要になります。加えるべき項目が増えるかもしれませんし、廃止することもあるかもしれません。 全員で価値観を共有しながら変更を加えます。 行動指針は柔軟に考えてください。 5-4 エンゲージメントの共有 経営理念と行動指針が決まりましたら、日々の店舗で運用していきます。 店舗における運用で重要なキーワードとなるのがエンゲージメントの共有です。 エンゲージメントとはこの講座で何度もお話ししているお客様やスタッフと価値観を共有した瞬間、わかりやすい言葉で言えば「いいね」と思った瞬間です。 この瞬間を作るために5-3-3のポルチーニのように、スタッフに裁量を与えます。裁量を与え、行動指針に沿った行動をすることで、お客様とエンゲージメントを結ぶわけですが、この瞬間をいかに大切にするかが大切です。それが、エンゲージメントをスタッフ全員で共有させることになります。 例えば、ポルチーニでは、喜んでいただいたことを全スタッフ(ポルチーニは全員社員)に、瞬時にメール配信する仕組みを構築しています。 「またあの店で働きたい」の著書で売出し中の黒岩功さんは、閉店後のミーティングで今日あったお客様に喜んでいただいたことを共有しています。 方法はいろいろありますが、エンゲージメントは会社の資産になり、個人に留めず、どう、スタッフ全員でエンゲージメントを共有して、スタッフの接客の糧とできるかが大切で、この精神的な柱になるのが行動指針なのです。 大久保一彦ファンクラブ会報「四方よし通信」年末感謝号より お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.06.01 07:38:35
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