“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2018/04/18(水)00:52

《東京の和食界に新たな風》五十嵐@六本木 その2

大久保一彦が見たエンターテイメント(34)

《東京の和食界に新たな風》五十嵐@六本木 その2  前回の記事に続き、天然虎河豚の鮟肝巻きからスタートです。 下関の天然虎河豚に北海道余市の鮟肝を巻いてレモンで酸味をつけたちり酢でいただきます。 お酒は、京都伏見『澤屋まつもと』のウルトラ 純米大吟醸です。 とても合います。  虎河豚を巻いた鮟肝に続いて喉黒塩焼きが供せられます。 サクッとした皮目とふっくらした焼き上がりは、五十嵐料理長の火入れは調理技術のすばらしさの象徴的な料理と言えるでしょう。のどぐろの脂の旨さは、魚本体だけにとどまらず、下に敷いたちぢみほうれん草にこぼれ落ち広がり、炒り米と干し椎茸でとった出汁の旨さを膨らませます。五十嵐料理長は、だし汁に鰹を使わなかったのはこのこぼれ落ちる脂を計算しているようで、旨味を出すイノシン酸を一口目の喉黒の余韻に求め、魚の香りを溢れ出る喉黒の脂に求めた、まさに一皿を食べて完成する料理ですね。しかも、素晴らしいのは、食べ混んだ人でもそうでない人でも良さがわかることです。 とても奥行きのある料理ですね。  喉黒の余韻に浸っていると続いてのお料理の花山葵と海苔を添えた赤貝のお造りが供せたれます。 こちらは、お醤油の代わりに佐賀産の海苔の佃煮を山葵の代わりに花山葵を組み合わせおります。気候が春めいた頃の宇部の赤貝の香りを春らしい香りで包み込んだお料理です。 あわせるワインはシャブリ プルミエ クリュ フルショームです。キレのあるすばらしい酸と味わい深いコクは魚介、醤油、わさびの特徴を膨らませすぎず、寄り添います。おいしいですね。 赤貝に続きまして、天ぷらです。揚げ油は『たきや』と同じく胡麻油ではなく紅花一番搾りを使用しています。この天ぷらも自信の一皿だそうで、それもそのはず、当店では開店前半年かけていかにあっさりと軽くサックサクに揚げれるかを研究したそうです。天ネタは空豆、こしあぶら、徳島産の椎茸です。紅花の香りがきて、それぞれのふくよかな味わいが広がります。 続いて、口直しに菊菜のスムージーが供せられます。 ダンボネ氏は、「食べ飽き、食べ疲れ」させないのが信条だそう、当初から中盤でスムージーや野菜ジュース的なものを取り入れるアイデアがあり、これで一気に口や気持ちがリセットされます」と言います。 春菊の苦味のアクセントもよく、バナナや林檎やオレンジの甘さや酸味とのバランスのよいスムージーと言えるでしょう。 さあ、これで料理も終盤線に向かいます。 いよいよお肉です。三種の楽しみのお肉が提供されます。 醤油粕で漬けた土佐赤牛のサーロインと、以前視察しました大田さんの但馬牛の肉巻きTKG(卵かけご飯)」、それから岩手県一ノ関の千葉さんの門崎牛(かんざき)のハラミを玉ねぎと黒酢とはちみつで作ったソースでステーキ風にしたものです。知り合いの生産者の料理がお皿にのることが多くなりましたね。 赤ワインはクロ ルネ ポムロールです。しっかりした骨格と質感がありながら決して重過ぎません。ふくよかでとても余韻のあるバランスのワインです。 お肉の後はしじみ汁です。一晩かけてエキスを抽出したしじみ汁は、軽い味噌のアクセントです。 しじみ汁を飲むと何でこんなにしみじみするんだろう、ですって(笑)。 しじみ汁に続いては、お鮨です。まず、炭火焼き竹岡の太刀魚です。遠目で見ていて、串打ちや炉で焼きが素晴らしいので、見入ってしましたね。 さて、こちらは変わっていて酢飯の上乗せです。以前、福岡の『行天』(魚アカデミー福岡校)で江戸前の小鰭が供せられましたが、あのときを思い出します。江戸前の小鰭は脂のりが強烈で、やや重油っぽい微香があることすらあります。その小鰭を食べるときにネタとシャリを逆さにして食べてください、と。そうすることで、酸から香りが広がり、魚の濃厚な旨さがきた記憶が蘇りました。 シャリは與兵衛、琥珀、米寿のブレンドで、ふわふわの太刀魚と非常によく合っています。 あわせるお酒は島根県純米酒王祿で、とても相性がいいです。 二つ目のお鮨は羅臼馬糞雲丹と富山湾の白海老の手巻き寿司です。 ボリュームのある味わいの雲丹と白海老ですから説明はいらないでしょう。 お鮨の余韻で名物の蕎麦かと思いきや、炙りばちこと九条葱と高野豆腐の吉野煮が供せられます。いわば、亭主と客人が酒を酌み交わすための強肴的な位置づけなのかもしれません。 九条葱、壬生菜、高野豆腐をカサゴの出汁で吉野煮にして炊き合わせです。上には炙ったばちこがのせてあります。あわせるお酒は滋賀の七本槍の熱燗をです。お酒が進んでしまいますね。 本日のコースでは8種類の出汁を駆使しているそうです。アメージング!!  お料理はまだまだ続きます。続いては、茨城県涸沼(ひぬま)産の天然ものの鰻の小丼です。 もはや、五十嵐料理長の焼きについてはふれる必要はありませんね。お茶碗は人気作陶家の信楽の澤克典(さわかつのり)氏のものだそうです。  さて、最後のお料理が名物の十割蕎麦です。 そば切りがすばらしいですね。最高の喉越しです。五十嵐では〆蕎麦として供するため、食べ疲れしないように細く仕上げているのが特徴です。細くてもしっかりと蕎麦の香りが楽しめます。本日は、茨城県下妻産の常陸秋そばです。最近、私が好んでよく使う蕎麦粉です。胡麻汁わさび乗せが特徴的で、蕎麦の香りと余韻を膨らませながら美味しくいただけます。おまけに、二八蕎麦のお土産付き。五十嵐料理長が分単位でお仕事されているのがわかります。五十嵐の労を惜しまず、客人に喜んでいただこうという姿勢が伝わった一品でした。  最後は『銀座奥田』からのデザートの定番のさっぱりと苺とシャーベットにスパークリングワイン。 お好みの茶碗でお抹茶をいただき、おいとまです。素敵な時間を過ごすことができました。 そして、楽しかったです。 ダンボネさん、ありがとうございました。 五十嵐 住所、電話とも非公開

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