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“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2018.09.03
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キムチの教えに至った経緯 ~2012年5月号『繁盛の達人』(現在の『四方よし通信』)より
 今日は、7年前の寄稿を振り返ります。

「どうしたらお客様の共感を得られるかを考えましょう」

近頃、講演などをしていて、「大久保先生、最近の飲食業界はどうなんですか?」という質問をよくいただきます。

「戦後の右肩上がりの時代とは商売をする人も消費者も違う価値観で動くようになってしまいました。その違う価値観っておわかりですか?」

この手の質問に対して、私はこう質問を返します。

 

大逆転の時代到来、その活路は?

第二次大戦後しばらくは食べるのもままない時代でしたから食べ物・衣類を充足する時代、すなわち物の充足の時代でした。そして、1970年初頭、日本が少し豊かになるとそこから右肩上がりでバブルまで外食産業が発達していくわけなのですが、それはレジャーとしての外食が発達したわけです。バブルが崩壊しても外食の市場規模の拡大は続きます。ただし、そこからは「レジャーを身近に」から始まる外食の日常化のマーケットの発達でした。さらに、1990年代後半からは利便性のマーケットが拡大します。

これらはすべて、戦後の二度のベビーブームによる生産年齢人口の激増にあり、学校を卒業して、収入を得る新卒者が商売の見込み客として供給され続けために、あらゆる産業にチャンスがありました。いわば、供給より需要が多かった売り手市場だったのです。これは歴史的にまれなビジネスチャンスだったのです。

 

 しかし、2005年ぐらいから人口減少が始まり、需要と供給のバランスが完全に逆転、それまでの人口増加の時代の前提が崩れ去ってしまいました。

今まででしたら必ずどこかに需要があって、その需要を掘り起こすことで商売はうまくいくことがありました。したがって、たまたまやったことがあたってしまうということはままあったのです。しかし、2005年ぐらいから、外食産業に限らずどのマーケットも、需要よりも供給の方が多くなり、力のあるものは繁栄して、力のないものは全くなんともならない状況になりつつあります。厳しくなりますから、なんとかして需要・ニーズがあるものに目を向けようということで、マーケット・イン志向が強まっています。私も常々小商圏化への対応などと申してきましたけどもニーズに向けて皆がやっきになっています。

ところが、生産年齢人口の激減が顕著になった2010年になり、このニーズという可能性もだいたい掘り起こされてしまい、潜在的なニーズは少なくなりつつあります。

現に、消費者にとって欲しいものはだいたい世の中にあり、見つけたとしても、形で見えるものは大手が真似してしまい、それで長期的にやっていくことは困難になりつつあります。

 

市場が成熟してお客様が感じる価値は形の見えないものに

一見すると、供給可能なものは掘り起こされたと思われがちで、商売を悲観的に考える人が多いです。それが、冒頭の「これからの外食産業はどうですか?」と言う悲観的なニュアンスの質問です。

しかし、実は外食産業は大いなる可能性があったのです。

その答えは、理屈を超えた中にあり、般若心経で「色即是空、空即是色」という言葉がありますが、この言葉がまさに答えです。これからの価値はものや商品のように形として見えるものではなく、心を楽しませてくれたり、共感したりといった形のないものに価値は宿るということです。

これからの時代求められるものは目に見えない“価値観”になったのです。今までは、ものや商品など目に見えるもの自体が価値で、「流行っているものをパクれ」と言う経営者やコンサルタントが全盛の時代でしたが、そのようなやりかたでは最大手でないと商機は見出せなくなりつつあります。

そうなんです!これからは“目に見えない価値観”が提供できて、店は繁栄できる時代になったのです。消費者もそのような店であれば、喜んで高いお金を払う時代になったのです。

したがって、このことに気づいた、ものの豊かな時代に生まれた人間にとっては始まった入れ替え戦が面白い時代なってきているのです。

 

いろいろな店をお手伝いしていて、同じものを売っていても、物を通してを売っている店の業況は極めていいです。

付加価値を生み出すものは何かというと、料理のようなものや商品ではなく、その物の背景にある想いであったり、心であったり、共感を与えるものになってきています。

そこで、今月の「今はこれをやれ」でお伝えしたいのは、「どうしたらお客様の共感を得られるかを考えましょう」です。

今までの連続セミナーでミッションやビジョン、想いなどのお話をさせていただきましたが、今月は4月ですので、もう一度この部分を見直して、それをどう伝えていくかを考えます。

売るものは同じでいいのです。これからは新しいものを考えよう、なんてことは考えなくてもいいです。何故かというと、もう誰かが売っている場合がほとんどだからです。

そうではなくて、同じものを売っているのですが今までの店とは違うことがお客様に伝わるかを考えましょう。その違いを生み出すのが、売っている背景です。

わかりやすく表現するならば、想いを持って商売をしなければいけないという時代が来たのです。この新しい商売のやりかたに向けて一歩足を踏み出していただければと思います。

 

右肩上がりの時代に忘れたもの

最近、私は、未来に向かって十年、二十年、五十年と続く店を作るために、店の向かうべき方向をファシリテートさせていただき、その具現化のために、ロールプレイングを通して店の様々な部分を再構築させていただいております。

その指導の時に、「私たちコンサルタントは右肩上がりの時代を経験したために大切なことを見落として来たな」とふと思うことがあります。

それは、サービス業の本質的な部分です。見落としてきたサービスの本質的な部分とは、サービス業は心を売るおもてなし業であることと、技を通してサービスを行う職人的な要素です。

確かに、右肩上がりのチェーンストアのように、ターゲット層のニーズを逆算し、接触回数や接触時間を最低ラインにし、標準化を行い、不満をおこさないサービスにすることが良かった時代はありました。しかし、そのようなサービスを削ってニーズを生み出すやりかたは、心を売るおもてなし業という性質と、技を通してサービスを行う職人的な性質のプライオリティを下げ、高級店を除いて、多くのサービスマンをダメにしてしまったように思います。

サービス業というのはお客様に心地よいサービスをして喜んでいただくという付加価値を売るものです。マーケティング志向が強い時代でしたから、削るという方向に進みましたが、これからの時代の方向からするとむしろ逆で、足していかなければいけなかったわけです。この足す経営の背景にあるべきものが想いなのだと思うのです。

私は、この点を痛感したのです。

 参考までにサービスを削ることを是とした時代に急増した現象を列挙します。

 

サービスを削る時代に急増した現象

・お客様との接触回数、接触時間を減らすことで生産性の向上、

不満になる要素を無くしマニュアルによる訓練で多店舗化を実現した。

・時間で働くパート・アルバイトが主体になったので、時給意識は高くなったが、

プロ意識が無くなった

・パート・アルバイト主体になり、店を回すことが主体になり、サービスの質より、

効率重点に考える人が多くなった

・人手不足なり、作業を教えることに終始する現場が増えた

・飲食店はつらい職場だと考える人が増えた

 

最近、ロールプレイングをするときに掘り下げることがあります。

トヨタの5W(“5なぜ”)のような質問ですが、みてみましょう。

 

大久保: オリエンテーションが終わり、新人さんが現場に来ました。

新人さんが初めて入ってきたら、どんな業務をしますか?

クライアント: 洗い物ですね。

大久保: なぜ、洗い物をさせるんですか?

クライアント: それは・・

(中略)

大久保: 次にどんなことをやってもらうんですか?

クライアント: お運びです

大久保: どんなお運びをしてもらうんですか?

クライント: レバ刺しとキムチを

大久保: どうしてレバ刺しとキムチなんですか?

クライアント: 説明がないからです

 

 このやりとりを聞いて何か感じませんか?

ヒントはサービス業であることです

 答えはレバ刺しやキムチがドリンクを出したあとのファーストコンタクトである重要な瞬間であるのに、作業が簡単だから新人に任せていることです。これではサービス業にはなりません。もしかしたら、レバ刺しの事故もこのようなレバ刺しの提供を軽んじたために起こったのかもしれません。

 そこで、さらに質問を続けます。

大久保: キムチの提供のトレーニングってどうやって行うんですか?

クライアント:テーブル番号を覚えてもらって、最初は私が手本を見せて、

近くで数回見ながらやってもらいます。

大久保: えっ?それだけですか?

クライアント: (それが何か・・)

大久保: 例えばこの4名テーブルで4名でお座りのお客様にキムチを運ぶときに、

     どの位置に立ち止まるんですか?

     で、どんな表情で、どんなしぐさで、どんな言葉をかけるんですか?

 

そうなんです。

実は、多くの店で、新人はサービスについて何も教わっていないのです。ただ、“やってはいけない”ルールを主に教わっただけなのです。

 飲食店において多くの人は、教えるというのは難しい業務を教えると勘違いをしています。

しかし、接客は技術なのです。

テニスの指導者ならフォアハンドを何度も何度も繰り返すように、野球の指導者なら練習前にやるキャッチボールや素振りのように“基本のき”をやらせますよね。

しかし、飲食店の現場では、サービスマンになろうとしている初心者のパート・アルバイトに、いきなりしっかりとした練習もせずに“OJT”と称し試合をさせていることがほとんどなのです。つまり、多くの現場では簡単な作業と称し、無理やりアドリブでいきなり試合をさせているのです。アドリブはある程度基礎があって成立するわけですが、挙句の果てには、“仕事ができないヤツ”とレッテルを貼り、つらい仕事をさせ続け退社に追い込みます。そして、自分が悪いにも関わらず、「人が定着しない」、「いい人が来ない」と嘆き、日々、仕事に追われる現場にしてしまうのです。

 

私が現場指導に入る前、「なぜ、キムチにそこまでこだわるのか?」と疑問を抱く経営者や店長がいるかもしれません。しかし、実際に現場に入り、業務を進めていくと私がなぜ、キムチにこだわるかを理解していただけます。

焼肉店において、キムチの提供のような単純そうに見える業務こそ、入社して間もない新人スタッフに徹底的に教えるべきことと考えています。

つまり、「はい、キムチ、簡単」という考え方と、「キムチの提供って一番難しいんですよ。お客様に一番最初に提供するお料理だから、想いを込めて提供しなければいけないのですよ」という考え方では、新人スタッフに伝わる思いは全く違うものになります。

これが徹底的の意味するものです。

実際、店のオーナーさんや店長が“想い”という言葉がよく使いますが、現場でお客様に対するサービスに落とし込まれているかというと、そうではないケースを多くみかけます。

最近、「私が現場に入ってお手伝いしよう」と思ったのは、ここまでしつこくこだわってロールプレイングができるという人財が現場のスタッフにはいないからです。効率化の時代にこのようなことは大切でないと思われるようになったのでしょう。

キムチの提供のような業務は野球で言えば、素振りやキャッチボールのような位置づけです。中途半端に上手な高校球児はキャッチボールを一生懸命しませんが、プロの一流選手になればなるほど素振りなど基礎練習をすごくします。良いサービスは心と技とチーム力が必要ですから、この「なぜ基礎練習をするのか」を理解して、基礎を極めることがこれからの時代はとても大切なのです。もはや、一流でなければ、利便性を軸としたチェーン店に飲み込まれる時代なのです。

もし、皆さんがこのことに共感して、こういう方向でやろうということを決めたとするなら、とことんまでこだわって欲しいのです。

これが今月の今はこれをやれ。想いを明確にして、とことんまで追求していただきたいのです。

 

いよいよ入れ替え戦が始まりましたが、皆さんのお店がさらに発展して、10年、20年先もしっかりとした足が踏み出せるように頑張っていきましょう!

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Last updated  2018.09.06 11:04:19
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