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YUMEMIRUTOKI

絵里ちゃん

1.絵里ちゃん

彼女の名前は絵里。中学1年生です。
彼女はもう長い間、学校に通っていません。
お母さんは、最初はやっきになって
学校に通わせようとしていましたが、
今はもうあきらめてしまいました。
もう4年も前のことです。
中学校になって、入学当初は通っていましたが、
そのうちにまた通えなくなってしまいました。

絵里ちゃんの家は、母子家庭です。
お母さんは、2年前に離婚しました。
でも、絵里ちゃんは、二人きりになっても寂しくありません。
お父さんと一緒に暮らしていた頃よりも
今の方が、好きです。
お母さんは、お父さんに怒鳴られてばかりいて
我慢ばかりしていましたけど、
今はとてもいい顔をしています。
毎日仕事に行ってますけど、それも前と変わりません。
お母さんとは、休みの日にデートします。
平日忙しいのに、休みの日には、
必ずどこかに連れ出してくれます。
二人の一番のお気に入りは、古本屋です。
そこで何時間も立ち読みをしています。
お母さんも絵里ちゃんも本が好きなんです。


2.朝

絵里ちゃんは、朝が一番好きです。
朝のひんやりとした空気を感じながら、
まどろんだ時を過ごします。
郊外に住んでいるから、時々とおりすぎる車の音以外は、
静かです。
そして、そんな時間だと窓の外で
鳥たちがさえずるのが聞こえます。
うぐいすにかっこう、それからすずめたち。
時間にせかされていたときには、
ぜんぜん気づかなかったものだけど、
今はいろんなさえずりが、合唱するのが聞こえます。

お母さんは、仕事に出かける準備のために
台所に立ってお弁当を作ります。
絵里ちゃんの分と2つ。
学校に行っていれば、給食があるのだけど、
通学しても、一日いられないことが多くて、
途中で帰ってきてしまいます。
そんなときは、自分で台所にたって食事を作ります。
本当は、中学に入って小学校のときのもろもろの
過去を忘れて、新しい学校生活が送れたらよかったんだけど、
今度は、勉強にもついていけなくなったのです。
「絵里ちゃんは、賢いから休んでもすぐにおいつけるから大丈夫」
と小学校の時には、先生にそのように言われたものですけど、
今は休んだ分を取り戻すのがむずかしくなってしまいました。

お母さんは、フリースクールを探してくれました。
でも、送り迎えのいるフリースクールが一箇所見つけただけで、
仕事しながらは、通わせてあげられない、
とあきらめています。
絵里ちゃんも本当は居場所がほしいんです。
そして、友達もね・・・


3.出会い

それは、突然やってきました。
いつものようにお母さんが出かけて
絵里ちゃんは一人でした。
そして、いつものように窓の外を眺めていました。
お日様の光がまばゆいばかり・・・

絵里ちゃん、と呼ばれたような気がしました。
振り返ると、そこに女の人が立っていました。
でも、その女性の体が透き通っているのです。
スターウォーズに出てきたホログラムみたいだわ、
と絵里ちゃんは思いました。
驚かせたかしら?とその人は
微笑みながら言いました。
うーん、本当は言ったんじゃないの。
そのように伝わってきたの。
絵里ちゃんの心にね。
そう、テレパシーみたいにね。
けれども、絵里ちゃんは驚きませんでした。
だって、その人のことを
よく知っているような気がしたのですもの。
初めて会ったという気がしないの。

私がどこからきたと思う?と
その人は、言いました。
絵里ちゃんは、首をかしげます。
ぜんぜん見当がつかないもの。
「私は、ミュー。プレアデスから、来たの」


4.ぼくは12歳

それでも絵里ちゃんは、驚きませんでした。
そのとき、ふっと心に思い浮かんだのは、
絵里ちゃんの大好きな
『ぼくは12歳』という詩集の中の詩です。

  ぼくはうちゅう人だ

 ぼくは
 うちゅう人だ
 また
 土のそこから
 じかんの
 ながれにそって
 ぼくを
 よぶこえがする

小学6年のときにその少年の詩を
初めて読んだとき、絵里ちゃんは衝撃を覚えました。
同じ年の子が、こんな詩を書くだなんて・・・
なんだか信じられませんでした。
絵里ちゃんもその頃には、
詩を書いたりもしたけれども
そんな風に言葉を扱うことはできないなと
思いました。

でもその少年の書く、詩にとても心が惹かれました。
その少年の感性に、興味を感じたのです。

  ひとり

 ひとり
 ただくずされるのを
 まつだけ

というたった3行の詩が
絵里ちゃんに、いいようのない
孤独を感じさせました・・・

ぼくはぜったいにしなない、と
そう詩に書き残して、
その少年は大空に舞っていきました。
彼は、怖くなかったのかしら?
絵里ちゃんにとっては、まだ死は、
怖いという恐れしか感じられませんでした。

死については、まだ何もわからなかったけれども
彼がもっている透明な、
心の世界に、絵里ちゃんはなにかしら
感ずるものがありました。


5.ミューのおはなし

「そうね、あなたは、自分がなにものなのかを
知っているのよね」
とミューが言う声に、われに返り、
絵里ちゃんは、その女性の顔をじっと見つめました。

私が、なにものなのかを知っているのかしら?
絵里ちゃんには、よくわかりませんでした。

「本当は知っているのよ、ただ忘れているだけ。
それとも、まだ眠りついているのかな」
その言葉もよくわからなかったけど、
眠りついている、という言葉が妙に気に入りました。

「ふふ、私は何をしに来たと思う?
あなたとお友だちになりにきたの」
とミューは話をはじめました。
地球にきてね、何回かこんな風に
お友だちになろうと思って、
話しかけてみるんだけど
たいていの人は、そしらぬ顔をして通り過ぎていくわ。
ただのそら耳だと思うのね。

そうでなけれは、ある人たちは、
私を神か天使のように思うのね。
そうよ、宗教と言う世界に描かれた存在のようにね。
そして、自分は神のお告げを得た、
特別な存在だと思ったりするのね。
私たちは、同じ存在、なのにね。

本当は、自然に目覚めていくものなの。
その人が本当に求めていればね、
そして、時がくればね。
ただ、この星は、あまりにも間違った教えや考え方が
はびこってしまって、
何が正しくて、何が間違っているのかすら、
わからなくなってしまっているのね。
自分がなぜ、生まれてきたのか、
何を求めて生きているのかさえものね。

「絵里ちゃんは、どうかしら?」
うーん、なんだかむずかしいお話だな、と
絵里ちゃんは思いました。
ただ、なんとなくわかるような気がしました。
心のどこかが、そのおはなしを真剣に
受け止めて聞いていました。



6.星の王子さま

星の王子さまのお話を知っているかしら?
あなたもまた、たまたま地球と言う星に降り立った
王子様なのよ。
でも、みなそのことを覚えていないから、
自分がほんとうに求めているものが、
見えないままに生きてしまうのね。

そうして目の前にある、ものにしがみついてしまったり、
本当はぜんぜん必要ではないものを
求めて生きてしまったりするの。

絵里ちゃんは、星の王子さまのお話は、
よく知っていました。
思い浮かぶのは、
一日中、灯をつけたり、消したりする人や、
机に向かって天文学的な数字を
計算し続ける大人の姿、などです。

それから、キツネの言葉も心に残ってます。
「心でみなくちゃものごとは、よく見えないってことさ。
かんじんなことは目には見えないんだよ」

そうそう、そのとおりよ、とミューは言いました。
大切なことは、目に見えるところにはないの。
だからね、お金も地位も名誉なんていう
形あるところのものに、価値はないのよ、本当は。
そして、大切なものは、別なところにあるの。
だからね、絵里ちゃんが、なじめないでいることは
少しも変じゃないの。

でもね、いつまでも立ち止まっていたら、
どうなるかしら?
窓の外の風景は、移り変わるけれども
絵里ちゃんの心には、何が残るかしら?
たりないものはないかしら?


7.旅立ち

ふふふ、そうそう本当は、
絵里ちゃんは知っているのよね。
ただ、勇気がないだけ。
大丈夫よ、あなたにはお母さんもついてるし、
私もこうしてやってきたのだから。

バラの言うことは気にしなくていいの。
ただ、感じたことを大事にしなさいな。
人は、体験するために生まれて、
旅をしていくのだから。
星の王子さまのようにね・・・
そうしたら、あなたにもわかってくるようになるわ。
バラの花の本当の気持ちがね。
誰もあなたを傷つけようと思って
傷つけたんじゃない。
本当は、人は自分が傷つきたくなくて、
人を傷つけているんだってね。

いいのよ、一度に理解しようとしなくてもね。
これは、単なる始まりなのよ。
絵里ちゃんの目覚めはね、これからなんだから。
そしてね、一度私の声が聞こえたら、
いつもあなたはその声を聞くことができるわ。
心の目で見るってことは、
そういうことなんだから。
わかるでしょ、ね、絵里ちゃん。


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