テーマ:夢を叶える人になる(1217)
カテゴリ:夢と現実
・・・『当節長屋の花見』の続き 八「そうだ。このあたりを見てちゃぁいけねぇ。 遠くの見事な桜を眺めてりゃぁいいんだ・・」 長家のかみさん「なに言ってんだい! よ~く見なよ。 何か動いてるんだよ!」 長家の衆A「あれ!? 女のようですぜ・・」 B「金髪に振り袖姿だ・・」 C「どれどれ、あーっ、着物を着た女だ!」 大家「お~い、そんな高いところに昇ってないで、 降りといで・・」 熊「あっ、なんてぇ乱暴な女だ! 飛び降りやがった・・」 八「昨今の女は、威勢がいいや」 長家の衆A「それにしても、不細工な女だな・・」 B「全身、毛だらけだよ・・」 C「どう、ひいきめに見ても、 さるだよ、モンキー・・」 女「おう、おう、おう! 降りろと言うから降りて きてやったんでぇ! 不細工だの、毛だらけだの、猿だのと、 やかましいやいっ!」 熊「お~、江戸っ子みてぇな猿だな・・」 大家「おまえさん、どちらからお出でなすった?」 女「どちら、と云うほどの所じゃねぇけどよ、 ・・ちょいと逃げて来たのさ」 八「何か悪いことしたんか?」 女「見損なっちゃあいけねぇや。 あたいはロボットだよ。 人間と違って悪事は働かないね」 熊「へぇ~、ロボットが何で逃げるんでぇ?」 女「あたいを買った野郎が、超変態なのさ」 八「へぇ~、どんな変態野郎だ・・?」 女「あたいの全身に猿の縫いぐるみを着せて、 頭に金髪のカツラを被せて、 ミニの振り袖を着せて、 足には厚底ブーツまで履(は)かせたってわけさ」 熊「へぇ~、変わったことする変態だな・・?」 女「べらぼーめ! 変態が変わったことしねぇで、 誰がするんでぇ・・ そのうえ、セクハラするんだ・・」 大家「ロボットに痴漢するのかい・・?」 女「そうさ、着物の裾(すそ)をまくり上げて、 何時間もしげしげと眺めてから、 全身を舐(な)めまわすのさ。 たまんねぇよ、まったく・・」 八「筋金入りの変態だな!」 熊「それで、トンズラしたってわけだ」 女「あっ、来た来た・・、あいつだよ。 あたいを追っ掛けて来やがった・・」 八「なんだ、呉服屋のバカ旦・・、 いや若旦那じゃねぇか・・」 熊「バカ旦那のストーカーか・・」 大家「よしよし、ここはひとつ、懲(こ)らしめ のために、みんなでとっちめてやろうじ ゃないか・・。 いいかい、みんな早いとこ酒飲んで、 酔った振りしてバカ旦那に絡(から)むんだ。 ・・そこで、ひそひそ・・いいかい?」 一同「がってん、承知!」 大家「これ、ロボちゃんや、その毛皮とカツラと 振り袖と厚底ブーツとを貸しとくれ」 女「やだよ~。 坊主で裸じゃ世間体が悪いじゃん・・」 一同「てゃんでぇ! ロボットに世間体もへったくれも あるかってんだ・・」 ・・なんともはや、乱暴にもロボットから身ぐるみ 剥いでしまいましたな・・。 大家「いいかい、ロボちゃんは、そこのゴミ捨て場 の脇に隠れておいで」 ・・準備が出来て、一同、手ぐすねひいて待ち構え ています・・・ ・・そんな陰謀が、前方で待ち構えているとはつゆ 知らず、件(くだん)の若旦那は「あたしのロボ子は、 どこざんす・・」 ・・と汗をかきながら、やって来ましたな・・。 八「いよ~っ、若旦那。こんち、いい陽気で結構で ござんすねぇ~」 若旦那「結構じゃござんせんよ。 あたしのロボ子が居なくなったざんす」 熊「なあに、ちょいと買い物に行ったんだ」 大家「直ぐに戻りますよ。それよりどうです! 今夜は折角の花見日和ですよ! 若旦那もご一緒にどうです!」 若旦那「あたしゃ酒には弱いざんす・・」 八「な~に、でぇじょうぶ。 今夜は下戸(げこ)の集まりなんで・・」 長家のかみさん「さあさあ名物の団子もありますよ」 若旦那「おや? 団子もあるのかい? あたしゃ、団子には目が無いざんす・・」 八「若旦那、どうぞこちらへ。 遠くの見事な桜が眺める特等席でやす」 若旦那「うんうん、遠いけど見事な桜ざんす。 ・・・もごもご、旨い団子ざんす・・」 大家「さあさあ若旦那キューッとやってくださいよ。 酒はいくらでもありますからね!」 若旦那「キューッ、旨い! それにしてもさっきから後ろでなにか 動いているざんす・・?」 大家「おーっと、若旦那。 このあたりを見てるのは野暮ですよ・・。 ここは、『遠見の桜』といいましてね、 遠くの桜だけをさーっと見て帰るのが粋(いき)、 とされている名所なんですから」 若旦那「おや、さいざんすか? あたしゃ、 粋で世渡りしてるざんす」 長家のかみさん「さあさあ、粋の若旦那、威勢良く パーッと呑みましょうよ」 ・・さあ、呑めや歌えで乗せられた若旦那、 すっかりべろんべろんに出来上がってしまいました 若旦那「ふーっ、酔った酔ったよ、べらぼーめ!」 八「おや、若旦那、言葉遣いが変わっちまったよ」 熊「え~、若旦那、これからどちらへ・・?」 若旦那「ふーっ、なにをっ? どちらへ? どちらのどちらなんだってんだ! べらぼーめ・・」 大家「若旦那。着物が汗臭いから、 こちらのさっぱりした着物に着替えて、 さあさあ・・」 ・・といって、ロボ子が着ていた毛皮と振り袖を 着せちゃいましたな・・。 若旦那「着物が汗かいた・・? だらしねぇ着物だ・・!」 八「若旦那、夜露に濡れるといけねぇ。 この帽子をかぶりなせぇ・・」 ・・といって、ロボ子がかぶっていた金髪のカツラ をかぶせちゃいましたよ・・。 熊「若旦那、履物が見当たらねぇんで、 この新品の靴をはいて行きなせぇ・・」 ・・といって、ロボ子のはいていた厚底ブーツを はかせられた若旦那は「ゴチになったよ、ベらぼー め・・」と言いながらよろよろと行ってしまいまし たので、一同手をたたいて大笑い・・。 大家「ロボちゃんや。さあ敵(かたき)はとったよ。 さてロボちゃん、お前さんのこれからの身の 振り方だが・・、
どうだい、うちの長家へ来るかい・・? 酒はあるし、みんなで歓迎するよ」 ロボ「ご親切は有り難いんでやんすが・・、 あたいも酒には弱いんで・・・」 お後がよろしいようで お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.16 17:26:07
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