夢と花と風

2009/11/27(金)18:23

離農の刻

父さんの鍬はいつも光っていた いつも泥で濡れていて重かった 暗渠排水は 冷たいさび色の水を流した 手ぬぐいを浸けると 一回でさび色に染める水 痩せた土は 父さんの手で少しづつ少しづつ 呼吸を始めたようだったよね 初めて稲が稔った時 初めて畑が作物で緑になった時 20センチも掘ると水がにじみ出る土地から穫れた 指で輪を作ったくらいの 小さなじゃがいも 山の斜面に転がるように育ったマサカリ南瓜 嬉しかったよね 父さん でもだんだん大地は過去へ帰っていった まるで 最初の姿を求めるかのように・・ 柳と葦でいっぱいになって 水が 足の下からズブズブと湧いてくる あの日は凍てついて すべてを拒否していた なのに父さんは離農を決めたその日 握ることも出来ないほどに凍った土を手に 佇んでいたよね 辛かったね 父さん でもね誇りだったよ そんな父さんが 庭を走り回っていたエゾリスは今もいるのかな。

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