「物語 チシマザクラ」19 3月30日更新
目次34 あとがき
私は桜が好きな、83歳の老爺である。
この物語の桜爺と重なる部分もあるが、登場人物、生物、はフィクションであり、架空のものである。
ただ、桜の部分はできるだけリアルに書きたいと、現地を訪ねたり、インターネットや図書館で調べたりした。
私は少年の頃から桜が好きだったが、桜に強い関心を持つようになったのが、2007年4月、中国東北部(旧満州)で、日本人が植えた桜を見てからである。
2013年3月、45ヶ国の桜を基に「桜は今、世界のどこかに咲いている」(考古堂書店)という書名で、紀行文の中に桜の写真(ピンポケもある)を入れて出版したら、読売新聞の夕刊(2013、3、14)で紹介され、図書館や個人で購入してくださり、旅費の半分くらいは印税でまかなうことが出来て、ありがたかった。
私は高校生の時から放浪癖があって、少し、金が貯まると、ふらりと1人で出かけた。それがだんだんエスカレートして、初めてアメリカへ行ったのは37歳の夏だった。(その時、1ドル360円)旅費を稼ために夜も働いた(塾)
外国旅行に夢中になり、2002年7月、アイスランランドを旅行し、レイキャベビクの植物園で、日本の桜の木を見たが、それが「チシマザクラ」だったとは分からなかった。
私が現在、一番好きな桜はチシマザクラである。北の荒地で、風雪に耐えながらも薄紅色から純白に変わって、可憐な花を咲かせるチシマザクラの生態に魅せられた。
チシマザクラは温暖で、肥沃な土壌には育たない事を知リ、チシマザクラの逞しさに驚いた。
桜の誕生は、100万年くらい前、バラが進化して事は科学的に証明されている。
その場所がネパールのヒマラヤ山麓だという説を私は支持している。バラが「ヤマザクラ」となって、日本に辿り着いたのは10万年位前だと言われている。
ヤマザクラは日本列島で、多種の桜に分かれて、中部地方の高山で「タカネザクラ(高嶺桜)となり、北上して、北海道に入り、北東の千島列島の国後島で「チシマザクラ」が誕生した。(最初は「クナシリザクラ」と言われた)
千島列島は終戦(1945年8月)まで日本の領土だったので、チシマザクラは日本で生まれた大切な桜である。
現在、千島列島は、まだ、ロシアの領土となっている。戦後、チシマザクラは殆ど伐採されてしまった。
明治時代の初期、国後島から持ち帰ったチシマザクラが根室で清隆寺を中心に保護されて、増えている事を知り、更に感動した。
5年前のクリスマス、大学の先輩の娘で、アイスランドに住んでいる朝子さんから、
「アイスランドに咲く桜はチシマザクラが殆どで、ソメイヨシノは育ちにくいです」
ということを聞いて、強い衝撃を受けた。
私は、北極に近いアイスランドに日本で誕生したチシマザクラが、咲く事に強い関心を持つようになった。(上記8行はプロローグにも書いた)
以来、朝子さんから、アイスランドのチシマザクラに関する情報をいろいろ聞かせていただいた。
その事実を知ってチシマザクラのファンジックな物語を書こうと思ったのがきっかけである。
アイスランドのクリスマスや人魚の情報も得た。いろいろ調べると、デンマークを初め、北欧の子どもたち(7,8歳まで)人魚は実在すると思っている子どもが多いことも分かった。
この物語にはウララという名の人魚を登場させた。
私にとって、人魚はチシマザクラがよく似合った。フェクションのファンタジックな物語の中で、アイスランドの海から北極海を1万2千キロメートルも根室まで泳がせて来させることは残酷だと思った。
「物語 チシマザクラ」には3つのテーマが入っている。
1、 チシマザクラの誕生、生態、アイスランドに日本のチシマザクラ咲く実態。
2、日本人の庶民の中にある、相手の気持ちになって、目立たないようにする親切の「思いやり」。
3、家族がいない老人の最期と、死後の本人の願いを、どのように実現するか。
である。
1つの物語にテーマが多過ぎたことを反省している。原稿ばかりが膨らんで(400字450枚)、こじ付けが多くて、支離滅裂の物語になってしまった。)
「何事も欲張ることは良くない」と猛反省している。
物語に登場する、「人魚、桜爺、少年」は実在のモデルはいない。私の妄想であり、フェクションである。
目立たないが、六さんやサチも大切な登場人物であった。
私は桜爺や、次郎や、六さんや、サチのような「思いやり」の人でありたいと思うのだが、、現実はエゴセントリックで、自分勝手な人間になってしまうことも多い。
私は、この物語の最後に、チシマザクラにエールを送る。
「チシマザクラよ、故郷の国後島に里帰りして、存分に花咲け!」 完
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最後になりましたが、アイスランドのチシマザクラ、クリスマス、環境の情報を提供してくださった朝子さんに厚く御礼申し上げます。
他に、頂いた情報や資料を基に、この物語を作らせていただいた諸氏と機関に厚く御礼申し上げます。 峰村剛
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