税理士の本音

2007/06/15(金)20:54

起業の際の注意点

その他(118)

新会社法において、最低資本金制度の撤廃や会社機関の簡素化などが図られたことにより、以前よりも株式会社が作り易くなりました。 そのためか、私の関与先になっていただいたお客さまの中にも、新規に開業された方が多数いらっしゃいます。 皆さん、前職に関係する業界で、新規に事業を開業されておりますので、業界内の動向を見極めながら各自それぞれのビジネスプランを持っていらっしゃいます。 基本的にビジネスプランの作成にあたっては、自分が参入しようとする業界に対する深い知識・経験・分析能力などが要求されますし、事業の成功のためには、自分が作成したプランを実行する勇気も要求されます。 自分の前職に関係する業界で起業しようとする方は、基本的に、上記成功のための要件を満たしているのだろうと思います。この場合における税理士の役割は、よほどその業界に特化して豊富な知識と経験を有している場合を除いて、聞き役に徹するのが基本だと思います。そして経営者の話を良く聞いた上で、経営者の頭の中にしまってあるアイデアを数値化・文書化するのが税理士の役割だと思います。 上述の通り起業家は事業成功のためのアイデアをいっぱいもっている場合が多いのですが、反面会社の資金繰りについては、注意不足になりがちです。 これは私自身の経験則からも言えることなのですが、新規に事業を起こした場合、自己資金は予想以上のスピードで減少していきます。一人で設立した会社でも、使おうと思えば500万円、1000万円くらいのお金はあっという間に消えてなくなります。事務所の権利金及び賃借料、事務所の造作費、新品のコピー機等のOA機器、机イス等の器具備品、商品の仕入代金、その他諸々。会社を設立すると色々な営業の訪問を受けますが、これらの資産等を営業氏の言いなりに新品で揃えたらあっという間に自己資金が底をつきますので、注意が必要です。 初年度の資金収支がマイナスになるのは仕方ありませんが、半年後、1年後には資金収支が均衡するように、現実の収入(売上)の動向に細心の注意を払いながら、支出(資産の購入等)を管理することが重要です。 成功する経営者は、私の経験則上、上記の知識・経験・分析能力・勇気の他に、資金繰りに細心の注意を払う方に多いようです。常にリターン(収入)を考えながら支出をマネジメントすることが、成功の一要因になっているようです。 それと、もう一つ起業するに際して大切なことがあります。事業資金の準備です。 会社員時代の預貯金で全ての事業資金を賄うことが出来れば理想的ですが、事業資金の全てを自己資金で準備できる方は少数派です。 一般的に企業経営者が事業資金を調達するに際しては、銀行等の金融機関を利用しますが、銀行は基本的に過去の「実績」に対して信用を供与して資金の貸し出しをするところですから、実績のない新規の開業の場合には、貸し出しに応じてもらえないことが多いようです。 その点、国民生活金融公庫は、政府系金融機関として公的な使命(創業支援など)を担っていますから、新規開業の場合でも、経営者個人の経歴や事業計画の内容などを審査して、貸し出しに応じてもらえることがあります。 開業資金は国民生活金融公庫で調達し、事業が軌道に乗ったら銀行からの資金調達も選択肢の中に入れて行く、というのが、新規開業者の標準的な事業資金の調達方法だと思います。 標準的な資金調達の方法を選択する場合、国金や銀行に何度も足を運ばなければいけない、自分でキチンとした決算書等を作成できないのであれば、会計事務所に決算書類作成を依頼しなければいけない等、それなりに手間隙がかかりますが、そのあたりの事前準備がキチンとできない経営者は、かなりの確率で、資金繰りに失敗しますので、注意が必要です。 それと経営者の中には自己資金だけで見切り発車し、事業資金に不足が生じたら安易に商工ローン等のノンバンクに資金調達を頼ろうとする方もいらっしゃいますが、2~3%台の金利でも元利の返済が出来ないと判断された企業が、その何倍もの金利負担に耐えることができるはずもありませんので、充分な事業資金を標準的な方法により調達できない場合には、起業を延期された方が良いと思います。 最後に、開業1年目から多くの利益を出せる企業というのは、かなりの少数派です。1年目は慎重に安全運転をしながら、将来の成長のための種をまく時期だと思います。そして2年目で芽が出て、3年目に初めて花が咲く、というのが、成功した会社の標準例だと思います。 ちなみに私の場合は、1年目は「う~ん、何だかなあ。」、2年目は「何とかなるかも?」、そして3年目の今年は、「何とかなりそう?」という状況です。(笑) 起業家の皆さん、一緒にがんばっていきましょう!

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