出立

果たして、住み慣れたと言えるかしら。 都合十年。 嫁と三年。子供と一年。 ゴチャゴチャしていた部屋も、何も無くなると随分広がるものである。 寂しいような楽しいような。 この庭にはゴーヤを植えた。ジャングルみたいになったものである。 七夕には机を出して、嫁と一緒に鍋を喰べた。 ほとんどヨソにいたと言え、小生にも思い出はそれなりに。 トラック去りて、さぁわしらもいざ駅へとカバンを背負うと、 向かいのパン屋さん（ちなみに名前はアンプードゥという）のご主人と奥さんが出てきた。 ずっとうちの娘様の成長を見てくれていたそうだ。 うちの娘様も、バイバイと手を振った。 神戸を去るのはこれで二度目である。 なのでもしかしたら三度目の邂逅があるかも知れん。 それもこれもお天道様の思し召しじゃ。 さて、小生が次に向かうのはいづこの土地でありましょうか。 グッバイ神戸。