珍獣は闊歩する!

2018/04/29(日)16:17

ソラリスの陽のもとに スタニスワフ・レム

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デビルサバイバー2や最近のSF映画の影響で、SF小説に興味を持ち、読んでみようと思いました。 タイトルから内容がわからないものから読んでいきたいと思います。 第1回は「惑星ソラリス」でおなじみのソラリスの陽のもとに、です。 あらすじ 赤と青の2つの太陽と、意思を持つ海のある惑星ソラリスに、宇宙飛行士のケルビンが降り立った。 研究所にはいると、そこには恐れおののき、疑心暗鬼になったスナウトという研究員がいたが、主人公の昔の研究仲間であったギバリャンは死亡していた。怪訝に思いながらも、シャワーを浴び、部屋で休んでいると、廊下を歩く女の足音がする。ここには女はいないはず、と思いつつ見てみると、黒人の目のパッチリした女だった。冷凍室に行き、ギバリャンの死体を見たときにも、その女はギバリャンにしがみついていた。あとからスナウトに訊くと、地球にいた頃のギバリャンの知り合いだという。しかし、なぜソラリスの海がそのような者を創り、遣わせたのか?地球人を試しているのか?「お客」は研究員1人につき1人つくという。主人公の前に現れたのは、ハリーという、10年前自殺に追い込んだ恋人だった。ロケットに閉じ込めて発射しても、液体窒素を飲んでも死なない彼女、記憶を持たない彼女に恐ろしさを感じるが、「お客」を殲滅しようとするサルトリウス博士には賛成できないと思った主人公がとった行動とは……? 読破して思ったのは、「あ~これが電波系の元祖か」ということ。 「…とても奇妙な考えが浮かんでくるの。どうしてそんな考えが浮かんでくるのかさっぱりわからないけど」 「何だかわたしの頭の中にあるだけではなくて、ずっと遠いところにもあるような感じよ。まるで…だめだわ、わたしには言えないわ。とても言葉では言いあらわせない」 ハリーはソラリスの海から創られた分身だから、なんか大きいものから意思を受け取って話しているわけです。これが本当の電波系です。人外なのだからしょうがない。あと「宇宙人みたいな女」っていう表現があるけど、これもハリーが元なんじゃないかなと思います。記憶がないから話がかみ合わないし、主人公の記憶の複製だから20歳から歳とらないし、無条件で主人公に愛を注ぐし……。現実味がなくてブキミなんです。 ソラリスの目的については、作中では不明ですが、研究者の一番疎ましい存在のコピーを送ってくるということは、「地球の中ですら、人とうまくいってないのに、この惑星の海と分かりあえると思うな」というメッセージだと思います。最初の犠牲者ファフナーは、地球にいた頃捨てた嬰児が4倍くらいの大きさになってソラリスの海から出てきて、それで自殺したらしいので。コピー人間から逃れるには、ソラリスから脱出するか自殺するしかないんです。ソラリスという星は、生物同士の弱肉強食や、それによる分化や進化すら否定していそうです。ゼリー状の海の全てが平等で、意思が一つなんです。それがソラリスの考える最強の平和なんです。そこに入ってしまった人間は郷に従うしかないのです。

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