期限の利益の喪失を主張することが信義則違反とされた例
貸金業者が期限の利益喪失特約により債務者が期限の利益を喪失したと主張するのは信義誠実の原則により許されないとされた事例平成11年10月29日 450万円貸付返済約束 平成11年11月から平成16年10月まで毎月28日限り元金各7万5000円及び経過利息を支払うという約束で利息は年29.8%、損害金は年36.5%の各割合で計算するものとされていた。また借主が各分割弁済日に支払うべき元金の支払を怠ったときは通知催告なくして期限の利益を失い、残債務全額及び及び残元金に対する遅延損害金を即時に支払う旨の特約があった。借主が過払い金の返還請求訴訟を提起したところ、被告は次のような主張をして争った。「借主は2回目の支払日である平成11年12月28日に支払うべき金員を2日送れた同月30日に支払っていることから、借主は本件期限の利益喪失特約に基づき期限の利益を喪失し、その後の支払は任意になされた損害金の支払いであって、貸金業法43条1項に基づく弁済とみなされるから法律上の原因があるので不当利得にあたらない」これに対し、原告は被告の主張は信義則に反するか権利の乱用であるとし、また本件においては貸金業法43条1項の要件を満たさないと反論した。原審は原告の請求を全部認容したので被告は控訴した。本判決は、まず、期限の利益喪失の有無の点について、原告は平成11年12月28日に元金7万5000円及び利息制限法び制限利率15%により計算した利息の合計12万7062円を払うべき義務があり、これを怠ったので本件期限の利益喪失特約に該当する事由が生じたということができるとした。しかし本判決は、本件の具体的な状況のもとで、期限の利益を喪失したと主張するのは信義則に反して許されないと判断した。その根拠とした事実は 1 借主は本件支払期間中を通じて貸主から一括弁済を求められたことも、一括弁済すべき義務が発生している旨知らされたこともなかった2 借主は平成11年12月28日の支払をわずか2日遅れたにすぎないこと、同日に支払うべき金額は12万7062円であったところ借主は約定のとおり17万9769円を支払うべき義務があると誤信しており、本来支払うべき金額を知っていれば支払えた可能性もあったといえること 3借主は第3回目以降も毎月28日の支払日に遅れて支払ったことがあったが貸主は遅れて支払われた分については同月29日から現実に支払った日までの間だけを年36.5%の割合で利息計算しその余を元金に充当計算しており借主は貸主のこのような取り扱いから遅れた日数分のみ利率の高い利息などを払えばよいと信じ切っていたこと4 貸主は借主が3のような誤信をしていることを知りながら一括弁済を求めるなどその誤解を解く努力をせず借主の誤信をそのまま放置して高利率の利息などの支払いを受けてきた などが挙げらている。また本判決は上記のとおり貸主が借主に対して期限の利益喪失を主張することは信義則に違反するから借主は貸主に損害金を支払う関係にないから領収書兼利用明細書の損害金の記載は事実と相違している等の理由により本件では貸金業法43条1項のみなし弁済規定は適用されないとした。 大阪高裁平成20年1月29日判決 判例時報2005号19頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!