株券未発行株式に対する強制執行の手続で配当留保供託がされた場合における破産法42条2項本文の適用の有無
株券が発行されていない株式(振替株式を除く)に対する強制執行の手続において配当表記載の債権者の配当額に相当する金銭が供託され、その供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けた場合における破産法42条2項本文の適用の有無(最高裁判所第二小法廷 平成30年4月18日決定) 「事案の概要」債権者であるXは、平成27年12月、債務承認及び弁済契約公正証書の執行力のある正本に基づき、債務者であるAに対する貸金返還債務履行請求権等を請求債権とする株式差押命令の申立をし、株券未発行株式であるA保有の株式に対する差押命令を得た。なお、Xの他に3名の債権者もそれぞれ本件株式に対する差押命令を得ており、債権者B1に関しては、B1から請求債権を譲り受けたB2が債権者の地位を承継した。本件株式について売却命令による売却がなされ、平成28年11月、本件株式の売却代金について開かれた配当期日において、配当表に記載されたX及びB2の配当額につき、債権者Cから異議の申し出があり、所定の期間内にX及びB2に対する配当異議の訴えが提起された。そのため、執行裁判所は、配当異議の申出のない部分につき配当を実施した上、X及びB2の配当額に相当する部分については、執行裁判所の裁判所書記官が上記配当額に相当する金銭の供託をした。ところが、Aは、上記供託の事由が消滅する前の平成29年1月、破産手続開始の決定を受け、その破産管財人が執行裁判所に本件差押命令の取消しを求める上申書を提出した。原々審は、職権により本件差押命令を取り消す旨の決定をしたところ、Xが執行抗告をした。原審は、執行抗告を棄却した。これに対し、Xが許可抗告をした。 「判旨」株券が発行されていない株式(振替株式を除く)に対する強制執行の手続において、当該株式につき売却命令による売却がされた後、配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが提起されたために上記配当額に相当する金銭の供託がされた場合において、その供託の事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、当該強制執行の手続につき、破産法42条2項本文の適用がある。判例タイムズ1452号30頁