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誰にでも過去の傷の一つや二つくらいあるだろう。
その傷は時々発作のように痛み出し、全てを絶望や悲しみへと導いてしまう。 二年経った今でも、思い出は鮮明だ。 浅草。 彼女は今度の記念日に浅草の雷門に御参りに行くから一緒に行かない?と言うメールを送ってきた。 俺は約束の時間よりも遅れて浅草に到着した。 ちょうど冬本番に突入した時期で、彼女はとても寒そうに少し怒って待っていた。 着いてすぐにお土産袋に入ったお守りを渡された。 そこには絆のお守りと記されていた。 彼女に別れを切り出したのは、一ヶ月以上前だった。 理由は俺の臆病さだった。 ただただ若かったと言えるだろうか。 浅草は付き合って初めてのイベント事でバレンタインデーの日に一緒に行った思い出の場所。 バレンタインデーは初めて彼女の浮気を知った日でもあった。 思い出深い浅草の町・雷門を一緒に歩いた。 出店一軒一軒を見てお土産を手にとってくだらない事を話しながら進んでいった。 御参りして、五重塔のような建物を彼女がはしゃぎながら写メールを撮ってるのを横目で見て微笑んでいた。 その後、食事をしようと店を探したが、なんとなく見つからず、隅田川の淵に座った。 しばらく黙って真っ暗な川をを眺めていると、突然彼女が泣き出した。 俺は困惑して、泣くなよと一言言ってまた黙った。 「帰ろう」と泣きながら言う、彼女を抱きながら地下鉄の駅へ。 改札前で切符を買うと、彼女は買わず 「思い出に浸りたいから一人で残る、先に帰って」 「今日で駄目だったら諦めるつもりだったから」 と言って泣きじゃくる。 「お前を置いて帰れるわけねーだろ」と困り、しばらく躊躇する俺だったが、ここで折れたら負けだと言う変な意地で、走って改札を通り、ちょうど来ていた地下鉄銀座線に乗り込んだ。 泣いている彼女を残して。 地下鉄の中で人目も憚らず初めて泣いた。 自分のした事の罪の重さを憎みながら、これで良かったと言い聞かし続けた。 今でも、その描写がフィルム映画の様に頭の中で容易に描ける。 焼きついているの方が正しいか。 俺はそれから二年間ずっと罪の意識と大事なものを失った大きな喪失感に苛まれている。 でも人はそうやって辛い過去を背負いながら、日々を生きている。 ポジティブに、生産的に。 そういう生き物だから。 誰だってそうなんだ。 そう言い聞かせている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.05.10 06:36:44
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