2009/07/08(水)11:22
ヴェニスに死す (トオマス・マン)
読書メーターでの「読書会」に参加するために読了。こんな機会でもないと読まない本だなぁ。
読み慣れない文章にてこずっった。なにしろこの岩波文庫、図書館で借りたんだけど、1987年発行の40刷、定価が¥200というのは時代を感じさせる。訳の文体はともかく、文字の大きさ、フォントにもてこずりった。カタカナ表記部分、絶対に「-」を使わない主義らしい「トオマス・マン」「テエブル」「エレベエタア」なのだから。また、難しい言葉の使用法が独特「諧謔」(かいぎゃく)「愕然」(がくぜん)は漢字にルビなのに「のうずい」(脳髄)「せっぷん」(接吻)「せきつい」(脊椎)「まんえん」(蔓延)などはひらがな表記。単語を目立たせる手法なのかと思ったけど、いくつも繰り返されるので訳者の癖なのかと思う。
冒頭、ぐだぐだと話がなかなか進まないので読むスピードも遅れがちなのだが、老作家が少年に会ったころから惹きこまれる。
少し病身にも見える完全なる美、陽のあたる海岸に築く砂の城、熱風と石炭酸の臭い、激しく燃える太陽、すべるように進むゴンドラ。少年と老作家の言葉が通じないことで「完全なる美」の手が届かないが故の憧憬がさらに増す。ただ単に「耽美」とか「恋」とか現代風に言うならば「やおい」か「BL」風味か(違う気も)、というよりは「美」そのものを追求するあるいはせずにはいられない魂の物語、なのではないか。
手が届かなくても求めるものがあったほうが幸せか、それを知らないまま過ごした方が?私は求めたい、貪欲に。
ヴェニスに死す〔2000年〕改
2000年版だとちょっとは読みやすいんだろうか?
余談だが「ひかがみ」は検索した。膝の裏側のくぼんだ部分、だそうだ。そんなところにも「美」を見つけるといいうことすなわち美の探究。
石炭酸とはフェノールのこと。アレ、臭いんだよね…