テーマ:子どもと教育問題(293)
カテゴリ:教育一般
【引きこもりや「キレる若者」など対人関係の不適応が問題化していることを受け、文部科学省は来年度から、人間の社会行動やコミュニケーションに関係する脳の機能や構造を特定する研究に乗り出す方針を固めた。脳のある部位の変化や個人的特徴が、行動などにどのような影響を与えるかを示す指標を作り、問題行動や社会性障害の予防や治療につなげることを目指す。 文科省や専門家によると、脳の生物学的な特徴と社会行動との関係は、動物では比較的解明が進んでいる。マウスでは、ある種の脳内物質を欠くと自閉的行動を示したり、攻撃性が高まることが分かってきたという。】(【】内は記事から一部引用、Google ニュース/毎日新聞:2008年8月18日)
記事のような研究も必要なことかもしれないが、厚生労働省ならともかく、文部科学省にはこうした研究よりも、教育学的あるいは社会学的な観点からの考察が望まれる。文部科学省には「引きこもり」や「キレる」の原因は、現在社会における人間関係のあり方や、学校教育をはじめとした教育のあり方にこそ、求めてほしい。 確かに人間も、先天的に「ある種の脳内物質」が欠けることで、「自閉的行動を示したり」「攻撃性が高まる」事が起こりうるだろう。しかし、次のネットニュース記事のような状況は決して、先天的な要因が主たる問題ではない。 【東京都教育委員会は7日、平成19年度の児童・生徒の問題行動についての実態調査結果を公表し、都内公立小中高校での「暴力行為」の発生件数が、18年度より3割も増加していることがわかった。ただし、暴力行為が発生した学校数は1割増にとどまっており、都教委は「一部の学校の特定の児童・生徒が、繰り返し暴力行為を起こすことが多い」と分析している。】(【】内は記事から一部引用、Google ニュース/MSN産経ニュース:2008年8月7日) こうした教育現場での「キレる」原因を、こどもたちの先天的な要因に求める研究をいの一番に取り組むような姿勢は、その教育の大元締めである文部科学省の責任放棄に近い態度だと言っていい。文部科学省は、薬物治療でもって、学校現場でのいじめや暴力を解決しようとでも思っているのだろうか。 私の学童保育での経験でも、「キレたり」「暴力的な」子でも、その後の生活のあり方、正確には学童保育所での生活のあり方により、大きく改善した例も少なくない。先天的な要因により難しい場合もあるかも知れないが、こうした改善策こそ文部科学省は重視して研究すべきだろう。 私は、少なくとも先天的に重大な要因がない限り、「キレる」「攻撃性が高まる」ということは、人間関係の中で十分に改善できる問題だと思っている。もちろん、その原因となった人間関係の問題は、個々のケースごとに違っており、それに応じてその後の人間関係のあり方の改善の仕方も違ってくる。 そして、推測による私見で言えば、おそらく人間関係のあり方の違いにより、脳内物質の分泌の状況も違ってくると考えている。さらに、自己をコントロールするための、脳内ネットワークも、人間関係のあり方により大きく変化すると考えている。 そして、その脳内物質の分泌や脳内ネットワークの改善は、薬物投与などの外的な処置に頼るよりも、人間関係での実践こそが、最も効果的で、確実で安全に達成できると思っている。是非、こうした観点からの専門家諸氏の取り組みを望むものだ。 エッセイは、次のページでいろいろ掲載しています。 遊邑エッセイ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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