比較シリーズを理解するための会計(8)
前回の続きで、変動費比率(限界利益率)と固定費比率がの増減が営業利益に与える影響について考えてみます。段々あらぬ方向へ話がすすんでいきそうです(笑)。「売上高が10%増加」した場合、営業利益が何%増加するのかをいくつか例を挙げてみます。まず、営業利益率10%で固定し、変動費と固定費を動かします。同じ営業利益率10%でも変動費比率が小さく、固定費比率が大きい方が増益率が大きくなります。そして損益分岐点売上高が高くなります。つまりより赤字になりやすいということです。逆に固定費比率が小さい方が増益幅は小さいです。逆に言えば収益が安定しているといえます。また損益分岐点売上が低く、赤字に強い会社だと言えます。次に変動費が60%で一定として、固定費を動かしてみます。変動費が一定なので、固定費が大きくなれば当然営業利益率は低くなります。そして増益率は大きくなり、損益分岐点売上高は高く、赤字に弱い会社となります。固定費が小さくなれば営業利益率は高くなり、増益率は低くなります。しかし損益分岐点売上高は低くなり、赤字になりにくくなります。つまり収益の変動が小さく、安定していると言えます。次に固定費を20%で一定として、変動費を動かします。変動費比率が大きいほど、営業利益率は小さくなります。そして、増益率は大きくなり、損益分岐点売上高は高くなります。つまり赤字に弱い会社ということになります。変動費比率が小さいほど営業利益率は高くなりますが、増益率は小さくなります。しかし損益分岐点売上高は低いので、赤字になりにくく、収益が安定します。これらのことからわかること1.固定費比率が大きい → 売上の増加に対する増益率も大きい → 収益は安定していない → 月次で既存店売上の良い会社であれば増益率が大きく上方修正の可能性がより高いので 短期的な値幅取りに向いている2.固定費比率が小さい → 売上増加に対する増益率は小さい → 収益は安定している → 長期投資に向いている 3.営業利益率が高い(上の例では30%の場合) → 固定費比率に関わらず売上増加に対する 増益率は小さい → 収益は安定している → 長期投資に向いているなどのことが言えるのではないかと思います。実際の会社の例を出して比較してみます。何でも比較は大事です。適当に選んだドラッグストアです。有価証券報告書からP/Lの内訳を拾ってみました。(暇なヤツとバカにされそうです)赤字が固定費、青時が変動費とします。それぞれ売上高が5%増加した場合いくら営業利益が増加するのかを計算してみます。キリン堂 745 → +503 (+67.5%)ライフォート 1083 → +323 (+29.8%)セイジョー 1810 → +453 (+25.0%)この3社は固定費比率が16%~17%と比較的近いので、上の説明の「固定費が一定の場合」に該当するケースと言えそうです。つまり、固定費比率一定の場合、キリン堂のように変動費比率が大きい方が増益幅が大きく、セイジョーのように変動費比率は小さい会社は増益率が小さくなります。同じ売上高が5%増加しても利益に与える影響はこんなにも違うということです。短期的にはキリン堂のような会社(既存店が良い場合)、長期保有であればセイジョーが良さそうだと言えるかもしれません。 今回で会計シリーズを終わります。期待はずれだったかもしれませんが、それでも最後まで読んでくださった方々には感謝申し上げます。私としてもかなり冒険的な企画だったので大目に見てください(笑)。財務諸表の分析をどこまですべきか、また何をすべきかについては模索中です。