片頭痛を考える
たいそうな頭痛持ちだと思う。頭痛の発作が始まると、頭を少し動かしただけで割れるように痛み、吐き気を感じる。水分すら受け付けないので、発作が治まるまでは、ほぼ飲まず食わず。手洗いに立つことすら苦痛になり、静かな真っ暗にした部屋でただただ寝て、発作の波の過ぎるのを待つだけ。それでも30代前半までは30時間ほどで治まっていたものが、35才を過ぎたころから3日間ほど続くようになってしまった。こうなると、自分はもとより、家族への負担も増えてくる。事実、このころの夫の有給休暇の消化理由が、「妻の体調が悪いので・・・」というもの。別にかいがいしく私の介抱してくれるわけではなく、ようやく動き回れるようになった乳飲み子の世話をする人間が必要となっていたわけだ。どうにかならないものかと、3年ほど前に頭痛外来の門をくぐった。そこで処方されたのは、片頭痛の治療薬として登場したトリプタン製剤。これはすごかった!!従来の頭痛薬とは全く違い、発作の起こるメカニズムそのものを止めてしまう。一度起こったら我慢するしかなかった発作が、薬を飲用後30分ほどで「なかったように」消えてしまうのだ。頭痛そのものを忘れてしまう。おかげで頭痛のコントロールはほぼうまくいっており、私は人生の何日間かを得をした、というわけ。めでたし、めでたし。では、なかったのだ。しっぺ返しというか、何度かに一度、薬も受け付けない大発作が起こる。こうなると、薬と出会う以前と同じく、治まるまで3日間、飲まず食わず、かつ、動かず過ごさなければならない。大発作までいかなくとも、ふらふらとめまいが続くような状態になることもある。思うに、私にとっての片頭痛の発作というのは、体のリセットに近いのだと思う。そもそも、緊張状態(意識する、しないにかかわらず)が続くと脳の血管が収縮し、血流量が減る。その状態がピークまで達すると、今度は反動で血管が緩み、血流量が増える。片頭痛の発作は血管が緩んだそのタイミングで起こる。つまり、自分ではうまく緩められない(緩めたほうがよい)血管を、体が強制的に緩めた結果おまけのように起こるのが片頭痛、というわけ。いわば、「休め!」のサイン。薬で抑え、体のサインを無視することで、時折しわ寄せが大発作やふらふらという形になって現れてくるのだろう。月に一回ペースの飲まず食わずの状態というのも、この飽食の時代にあっては案外、理にかなったことかもしれず、事実、発作を薬で抑えられるようになってからは体重も増えてしまった。そんなわけで、特効薬ともいえる薬と出会ったことは喜ばしいことなのだけれど、薬で発作を抑え続けるのが果たしてベストなのかどうか・・・。かといって、あの痛みをただ耐える、というのも自分のカラダ、上手な付き合い方をまだまだ考える必要がありそう。片頭痛持ちの人自身はもちろん、そのパートナーにぜひ読んでいただきたい。