『インシテミル』/米澤穂信
しがない大学生結城理久彦は車が欲しかった。車があればきっと女にもてるだろうと考えたからだ。コンビニで求人情報誌を見ていた彼に声をかけてきたのは、形容しがい絶世の佳人、須和名祥子。その姿からは想像がつかないがどうやら彼女もアルバイトを探しているらしい。須和名に毒気を抜かれながらも、共にページをめくっていくうちに、彼等の目に入ってきたのは、人文科学的実験の被験者「時給一一二0百円」の文字。 果たして本当に時給112,000円のアルバイトは存在するのだろうか。半信半疑ながらその怪しい広告に引き寄せられた訳ありの男女十二名。アルバイトの内容は、外界から隔離されたシェルター-暗鬼館-の中での一週間の生活をモニタリングされるというものだった。一週間後結城は生きてこのシェルターを出られるのか、須和名祥子の正体とは・・・ 久しぶりに本のこと。一ヶ月くらい前に読んだ『インシテミル』は面白かったです。その前に初めて読んだ米澤本の『ボトルネック』がいまいちだったのでどうかなと思ったのだけど、さすがこのミス!10位、さくさくと軽く読めて二転三転楽しめるミステリーでした。内容はクリスティの『そして誰もいなくなった』を思わせるクローズドサークル物。外界から隔離された場所に男女数名(この場合十二名)が集められ、一人ずつ何者かによって殺されていくことで話が展開します。犯人は誰なのか、そもそも暗鬼館に彼を集めた招待主の目的とは何なのか。先にも述べたようにかなりテンポよく話が進んでいくので最後まで飽きることなく読み進めることができました。 この小説がこのミス!で評価されたポイントが「これまでなんとかリアルに見せようとしてきた先人の苦労や、外野からのツッコミを逆手にとって、平然とミステリーにみました、という作者家のメッセージが伝わる」とあるように、暗鬼館自体がミステリー小説の国であり、その中に一般人(とミステリー読み数名)が迷い込んだという趣です。殺人方法が『僧正殺人事件』や『二つの微笑を持つ女』など古今東西のミステリーを下敷きにしたものであったり、主人公自身が大学のミステリーサークルの部員(これは後に明かされる)であるなど、暗鬼館のミステリー世界と現実世界が上手く中和されていて、ミステリー仕立てを違和感なく受け入れることができました。 ミステリー小説ファンの人が読めば、ニヤリと出来るような箇所がたくさんあるのだと思いますが、そうでなくとも楽しく読了できました。難をいえばヒロインの須和名祥子があまり魅力的でなかったこと。犯人の動機がいまいちよくつかめなかったこと。反対に個人的に面白かったのは、主人公結城と同じミステリ倶楽部のOBである岩井のやりとりが、いかにも部の後輩×OBのもの然としていて、きっと作者もそのような環境に身を置いたことがあるのだろうなと想像できました。 「ただ、パニックになった気持ちは、わからなくもないんですよ」 少しの間を置いて。 「なにしろ、クローズドサークルは全滅アリ、ですからね」インシテミル 今月も残すところ一週間足らず、六月もあっという間に過ぎていきました。。。仕事のこととか仕事のこととか仕事のこととかで溜まったモノがたくさんあって、次の休みには絶対萩に石仏(山東省石仏展@萩美術館)を見に行くと心に決めているのに。。。休み返上の予感がしてます。。。無事石仏に会えますように☆あとは、来月のdopingpanda@福岡ロゴス(7/5)、チケット取ってしまったのでそれを楽しみに頑張ろうと思います☆☆