
ホテルでの朝、波のさざめきで目が覚めた。外は青い光の夜明け。僕はベッドから抜け出すと、白いレースのカーテン越しに海を見た。海はきのうとまったく表情を変えていなかった。でもどこか新鮮な感じがした。
顔を洗い、歯を磨いてから、まだベッドの中でぐずぐずしていた父さんに行き先を告げ、僕はひとりで散歩に出ようとした。すると父さんに「ここは外国で治安が良くないから、ホテルの敷地からは出るなよ」と呼び止められた。僕は「わかったよ父さん」と返事をし、そのまま部屋を出た。
吹きさらしになっている開放的なロビーに下りてきたところで、海が僕を呼んでいた。
芝生の敷地とプールの脇を抜け、プライベート・ビーチに出ると、そこにはエメラルドグリーンとオーシャンブルーのハワイの海が待っていた。
東の空を振り仰ぐと、ちょうど朝日が昇るところだった。うっすらとバラ色に染まった漂う雲の切れ間から、金色の曙光が射し、惜し気もなく無償の財宝をこの世界に投げ掛けていた。
この静かな気持ちはいったい何だろう?
僕はこの限りある時のうちの永劫を、うつろいゆく時の美しさの中に、しっかりと繋ぎとめた。
今日、そう、いよいよこの日が来たんだ。その時は、はじまりは静かで、やがて勢いを増す日輪のように白昼の闘いへと移行してゆく。しかし僕は、その輝ける時がどのように過ぎてゆくのかを知らない。
コンピュータと人間との闘い。それはコンピュータを生み出した、人工知能の実現を志す人間と、己の頭脳の限界に挑戦する専門棋士との闘い。
計算力では人間を遥かに凌駕するコンピュータに対して、人間が勝るもの。それは読みを省略する能力「直観力」だ。
「直観力」とはいったい何なのだろう?
この神秘の能力を解き明かすことが、これからの僕自身の「闘い」なんだ。
すべては神様のお導きのままに――。僕の想いは朝焼けに染まった雲の彼方に、海原を渡りゆく潮風によって運ばれ、そして広大無辺の大空の中に溶け込んでいった。
【読者の声】
神童視点, 2010/5/25 ★★★★★
By あぎ "あぎ" (東京)
神童とか扱う小説は多くても、神童視点の小説は今までなかっただろう。
分かりやすく書かれていれば、余計にこの作品の凄さを思い知る。
子供口調で物語が進展して、成長にあわせて徐々に漢字が増えてる技巧は中々のもの。
コンピューターの将棋対決は、こちらもドキドキするほど楽しかった。
将棋についてはあまり判らなかったが、ああ今大変なところで、歴史が変わるところなんだ、というのが判った。
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