|
カテゴリ:カテゴリ未分類
第1章 毒物が蓄讀していくリサイクル品の危険性
家電リサイクル法の悪夢 リサイクルは今に始まったことではありません。むしろ、昔はものを大切にしていましたからリサイクルも盛んでした。しかし、現在私たちが取り組もうとしているリサイクルは昔とまったく違う内容とスケールを持つリサイクルなのです。 そこには思いもかけぬことが待っています。 一つはリサイクルを進めることによってリサイクル品に毒物が蓄積し、それが私たちの健康を直接脅かすことになると予想されることです。そこでリサイクル品への毒物の侵入ルートを中心に整理してみました。第二に、廃棄物を減らし環境を改善するつもりのリサイクルが、かえって廃棄物を増やし、環境を悪くしているという事実、どうしてそのような変なことになっているのかについて考えてみます。 ********************** 家電リサイクル法が施行されてまもなくのこと―――― ある大学の研究室には二つの冷蔵庫がありました。そのうちの一つは先生や学生が本を読んだり、パソコンに向かってレポートを書いている研究室にあり、その冷蔵庫の中にはコーラやアイスクリームが入っています。 もう一つの冷蔵庫は実験室に置いてあって薬品や毒物や劇物を入れて研究用に使っていました。 薬品は分解しやすいものもあるし、光に弱いものもあるので、悪くならないようにしっかりと冷蔵庫に入れて管理していたのです。 研究室の冷蔵庫は、食料品や冷たい飲み物が入っていることや、なんといっても学生が生活する場所にありますから、使い方もていねいで長持ちします。家庭用冷蔵庫は平均して七年から八年使われますが、この研究室の冷蔵庫ももう何年も使っています。 一方、実験室の冷蔵庫の中にはプラスチックでできた棚やポケットがたくさんついていて、そこに環境ホルモンやダイオキシン類似物質、さまざまな分解生成物、ときには電子製品を研究するための「ヒ素」が貯蔵されています。そして毎日のように学生がそれらを出し入れするのですが、その間にも薬品をこぼしたり、あるときには瓶を取りだすときに落としてしまい冷蔵庫の中で瓶が割れ、毒物で汚れることもあります。その毒物は冷蔵庫の棚にしみ込んで、そのままになってしまうのです。 そんなふうに汚れた冷蔵庫ですが、やがて故障がちになると捨てることになります。そのときも毒物がしみ込んだプラスチックの棚は取り外されません。冷蔵庫を捨てる学生が悪いわけでもないのです。ある学生が冷蔵庫の中で毒物をこぼしたのはもう一年ほど前で、その学生はすでに卒業していましたし、そんな話があったことを聞いた覚えのある後輩もどこに何をこぼしたのか知るよしもありません。第一、捨てるほど汚れた冷蔵庫ですから、ところどころに色がついていますし、それが毒物であるか、どのシミが無害であるかの区別をつけるのはできないのです。 毒がついている可能性があるので本当は焼却したいところです。しかし家電リサイクル法が施行されると、そのまま焼却に出したり、廃棄物貯蔵庫に持っていって捨てるわけにもいきません。冷蔵庫をそのまま捨てたら世間から「大学はリサイクルも守らないのか!」と非難を浴びるかもしれないからです。 学生は真面目な気持ちで冷蔵庫をリサイクルに出すに違いありません。 『リサイクル汚染列島』(青春出版社)武田邦彦著より お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.06.07 00:00:24
コメント(0) | コメントを書く |