8割の日本人は「塩分」で高血圧にはならない
次に出てきたのが、「塩分」の問題です。
私たちは大所高所のものが「ひとつだけ」ではなかなか意識の形成が難しいのですが、そこに「添え物」のようなものがつくと、「ある考え」がたちまち強固になり「信念」になるという特徴があります。食事のとき、ステーキにつけ合わせがつくとより食欲が湧くというのと似たような感じでしょうか。
血圧の場合では、「血圧が高いのはダメですよ」と言ってもそれだけだと具体的な恐怖は感じられません。「血圧が高いと……」「血管の強さが……」と言っても、多くの人は血管がどういう仕組みなのかということまではわからないからです。
血圧140㎜Hgと聞いても余程の人でない限り、それがどのくらいの圧力で、身体にどういう影響を与えるかということにピンときません。ところがそこに 具体的なものが加わると、その具体的なものが正しいか間違っているかとは関係なく、対象物がたちまち具象化されて明確になるわけです。
血圧の問題においては、それが「塩を食べると血圧が上がる。ヘタをすると脳溢血で死ぬ危険性がある」というものでした。
血圧が高いと脳溢血で死ぬ危険性があるというのはそれだけで十分に怖いことですが、「そうならないために は食塩を減らす減塩をすればいい」となると、「食塩を少なくすれば自分は血管が切れないで助かるのだ」となり、「具体的な方法を教えてもらえた」ということで血圧の問題が突如として親しみのあるものになります。
そこで非常な勢いで「減塩」が流行になりました。特に、母日家族の食事を担当しているお母さんは、味噌汁を減塩し、なるべく醤油を使わないように し、塩辛い漬物を食べさせないように努力します。
そうすることによって、自分が家族の健康を守っているのだという一種の生きがいのようなものも感じられ、国民総出で「減塩! 減塩!」となりました。
『フェイクニュースを見破る 武器としての理系思考』武田邦彦 (ビジネス社刊) R060608 P106
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最終更新日
2024.06.08 00:00:36
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