弁護士YA日記

2011/08/26(金)14:27

目に見えなくても存在する大切なもの

今回の相馬訪問では、説明会後、相馬に一泊して、相馬時代に大変お世話になったご夫妻のお宅にお邪魔した。 調停委員をされていた奥様と一緒にお仕事させていただいたことをきっかけにお付き合いさせて頂くようになったのだが、高校で物理を教えておられたというご主人様共々、親しみやすい雰囲気ながらも、高潔なお人柄で沢山の方々に慕われているご夫妻である。もう70代半ばでいらっしゃるのに、心がお若いせいか、活き活きとされていて、とてもそんなお年には見えない。 本業のお仕事以外にも、里親をされたり、民生委員をされたりと、公益的な活動にも深い慈愛を持って取り組まれており、体験に裏打ちされたお話には、心に沁みるものがあり、何時間一緒に過ごさせて頂いても、時間があっという間に過ぎてしまう。 あのように年を重ねていくことができたら・・・と憧れている。 相馬で得た貴重な出会いに感謝したい。 さて、今回も、ご夫妻からは素敵なお話を沢山お聞きできた。 私が印象に残ったことをいくつか。 自然散策が大好きなご主人は、早朝の雨の中、生き物の鼓動を感じる時間が大好きだと仰る。一歩一歩踏みしめて歩く度に、大地の鼓動が足に伝わる気がすると。 そして、そうやって歩いているうちに、ふと、こう感じられたという。 「平凡な人生を自分の意志で着実に一歩一歩歩むことは、実は非凡なことである」 ねえ?ため息が出そうな程、素敵な言葉でしょう? ・・・ご主人の積み重ねた誠実な生き方からあふれ出る格言は、本質を突いていて、心に突き刺さる。 また、昨年、ピンチヒッターとして懇願されて、久々に高校の教壇に立つことになった際、年若い教員から、形ばかりの「面接」があったという。 物理という学問で伝えたいことは何ですか、と。 ご主人の答えは、これまた味わい深い。 「自分は、世の中には、直接目に見えなくても存在するものが沢山あること、を伝えたい。 直接見えなくて、他者と接触する『現象』により、初めて存在することがわかるものは世の中にたくさんある。  空気は見えないけれど、空のコップを浴槽に沈めるとごぼっと出てくる泡がある。 光は見えないけれど、闇夜に懐中電灯を持っていき、懐中電灯にタバコをかざせば、煙の粒子が光に照らされて見えることで、光の存在が分かる。  自分の目で見たものしか信じない大人にはなってほしくない。世の中には、目には見えないけれど存在するものが沢山あり、目に見えるものよりずっとかけがえのない大切なものが多い」 正直言って、高校時代、テストで0点を取ったことがあるくらい、物理は大嫌いで、自分には一生縁のない学問だと思っていた。 でも、こんな言葉を聞くと、物理ってなんてロマンのある学問なんだろうと、心惹かれてしまう。私も、こんな先生に教えていただいていれば、今頃、物理学者に・・・(いくら何でも無理だが)なんて思うほど、素敵なお話だった。 奥様は、ご主人のお話を柔らかな笑顔で聞きながら、美味しい手料理や手作りのマドレーヌなどを次々とテーブルに並べ、召し上がれと勧めてくださる。 居心地の良い時間に、説明会を終えてずっしりと重くなった心が、はらりと溶けていき、鳥肌が立つような危機感でささくれた神経が休まっていく。 沢山笑い、そして、沢山泣き(葦名先生の涙ならいくらでも置いていってください・・・とご夫妻のご心痛を慰めにきたつもりの筈の私が慰められる始末)、素敵な時間を過ごさせていただいた。 恐縮するくらい沢山の心のこもったお土産を頂き、「実家と思って、また来てください。葦名先生は、娘だから」と大雨の中、いつまでも手を振って下さったご夫妻の姿が目に焼き付いて離れない。 また必ず行きます。 相馬は、私の大切な故郷ですから。 本当にありがとうございました。

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