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カテゴリ:東日本大震災
昨日は、福岡まで出張。
九州大学にて、「弁護士過疎地域における原発震災~被災地における法律家の役割」と題する講演会を行うためだ。 講演会を企画してくださったのは、九州大学法科大学院で教鞭をとっておられる武内謙治さん。 拙ブログの記事、「法律家らしいとは何か-渡辺淑彦弁護士の訴えに想う」をご覧になったことがきっかけで、渡辺さんと私をお招き下さった。 http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201110230000/ 既に何度か書いているが、私にとって、渡辺さんは、尊敬、信頼し合っている弁護士仲間であると同時に、一番の親友(心の友)という存在でもあり、一緒に講師をつとめることができるなんて夢みたい!とこの日が来るのを楽しみに待っていた。 被災地である東北からもっとも遠い九州に住む学生に、どうやったら、現在進行形の悲惨な被害を伝えられるか、どうやったら私たちの想いを届けられるか、渡辺さんと議論しながら準備をするのもとても楽しかった。 最終的には、 1、司法過疎問題を知る 2、原発事故被害の全体像と基礎知識 3、原発被災地の現状と法律家の役割 の3部構成で、パワーポイントで被災地の写真や避難区域の地図、九州で原発事故が起きた場合の想定される避難区域マップなどを映し出しながら、ビジュアルにも訴えつつ、学生の想像力を刺激しようということになった(レジュメの内容や資料は、8割方、渡辺さんご提供!) 準備は概ね円滑に進んだが、唯一渡辺さんが抵抗したのが、原子力賠償紛争審査会に渡辺さんが出席した際の映像を流すこと。 「涙声だし、怒りで口が良く回らなくなっているから恥ずかしいし、第一、自分が行くんだから、重ねて映像を流す必要ないよ。葦名さんのブログ記事で十分だよ」 という渡辺さんに、 「誰かを守るために必死になって怒っている法律家の姿は絶対に学生を揺さぶるよ。明るて面白くて落ち着いて話す渡辺さんと映像の中の渡辺さん、両方を見てほしいんだよ。私は、渡辺淑彦という法律家の素晴らしさをどうしても伝えたいから、これは外せない」 と強引に押し切った。 とはいえ、渡辺さんが出席するシーンは全体で25分と少々長かったため、15分程度に絞る必要があったが、この動画編集作業は、武内さんが快く引き受けてくださり、懸案も片付いた。 事前の準備は大体済んだので、あとは、当日、会って細かい役割分担を詰めようとなったのだけど、福岡空港で渡辺さんと久々の再会を果たした嬉しさで、地下鉄を乗り過ごしそうになるほど、おしゃべりに夢中になってしまい、一向に本題に話が向かわない。 九大の最寄駅にお迎えに来てくださった武内さんが、また、大変な聴き上手だったことも手伝って、二人とも完全におしゃべり星人と化してしまう。 結局、ろくに細かい役割分担を詰めることなく、本番を迎えてしまったが、結果的にはかえってこれが奏功したのか、お互いの発言にその場で触発されて、その場で、とっさに話を振ったり、フォローを入れたり、と、何というか共振しながら話が膨らんでいく感覚があり、今までにない新鮮な体験ができた。正直なところ、講演をその通り再現することは不可能だと思う。それくらいライブ感があった。 講演は、聴衆がいてこそ初めて成り立つが、学生さんたちが真剣にこちらを見ている目が、時間が経つにつれ、強くキラキラとしていくことが良くわかり、「一生懸命聴いてくれている、こんなに向かってくる目にどうしても伝えたい!」とこちらも熱が入り、90分があっという間だった。 被災者からの声を紹介する場面では、次第に渡辺さんの声が震え始め、「あーあ、渡辺さん、泣いちゃったよ、お互い泣かないように気を付けようねって言ったのに」と思い、フォローしようと思って立った私も「渡辺さんが伝えたかったことは、福島で現実に起きていることです。福島の苦しむ人たちのこと・・・」位まで言って、込み上げてくるものがあって、絶句してしまった。泣き虫が泣き虫をフォローするのは所詮無理ということです(苦笑)。 講演後も学生さんたちの質問は1時間余り続いたし、武内さんが回収して下った感想カードもびっしりと書かれているものばかりで、本当に福岡まで行ってよかったと心から思った。 宝物の感想を少しだけ内容をご紹介。ホントは全部ご紹介したいくらい熱いです。みなさん、本当にありがとう。 ・お話を聞いて一番感じるのは現地の方々と我々との温度差です。今日の講演では知らないことだらけでしたし、友達や家族と原発事故の話になることはほとんどありません。今日を機会に自分の目で耳で知ることを大事にしていこうと感じました。渡辺先生が審査会で熱い意見を述べている映像を見ているときに感じたうまく言葉にできない胸にこみ上げた思いをこれからの生活で大事にしていこうと思います。 ・審査会のビデオの第三者的な目線で審査会に臨む委員の姿を見て以前は私もあちら側の人間だったのではないかと感じてしまいました。実際に現場を見たわけではなくても、福島の「見える地獄」「見えない地獄」の苦しみは決して福島の人々だけが負うべきものではないと強く感じました。福島の人々の苦しみは私たちの問題でもあることを強く意識していかなければらないと思います。 ・今日の講演を聞いて思ったことは原発問題を解決するためにまず必要なことは、もしも自分が被害者だったらどうだろうかということを想像することだということです。自分自身改めて、自分が被害者だったらと実際の日常生活にあてはめて考えるだけで涙が出るほどでした。今私にできることは数少ないかもしれませんが見えない地獄を可視化するためにも福島の現状にもっと向き合おうと思います。 ・講演は、自分にとっては衝撃的な内容でした。震災からも時間が経過しており、メディアによる報道も以前よりは鎮静化していることから原発の問題は収束に向かいつつあるのだろうと、とんでもない思い違いをしていた自分が恥ずかしいです。お二人の先生方が声を震わせながらお話をなさっている姿には胸を打たれました。そして、福島の方たちの無念さなどを考えると、本当にやりきれない思いでいっぱいです。講演の本筋からは外れるかもしれませんが、原発というものが奪い去ったものの大きさは計り知れず、これほどまでに恐ろしいものをこれからも利用し続けていくことへの疑問も感じます。 ・講演会で葦名弁護士と渡辺弁護士の熱いお話を伺い、図らずも涙が出そうになりました。司法過疎地域の元々の問題に留まらず、原発事故被害に対する弁護士の方々の努力は、決して手弁当でできるようなことではないと思います。それでも助けたいと願い、行動する姿は、3月11日の震災後、同じように助けになりたいと願いながら何もしてこなかった自分自身とは対照的で、内心忸怩たるものがありました。今回の講演の内容は、自分が困っている人を助けるために何を武器にしてどう行動するかを考えるために何度も何度も立ち返ることになると思います。 講演会の後は、武内さんのお心遣いで福岡名物の「水炊き」をご馳走になった。 水炊きとはなんとなんと美味しい食べ物なのでしょう。あの滋味に溢れた白いスープ、ぷりぷりした鶏肉、最後の雑炊、もう恍惚としてしまうほど素晴らしい時間でした。 今回の講演の成功(といっていいでしょう)の最大の要因は、なんといっても、武内さんの熱意です。誠実で謙虚で、でも研究者としても教育者としても熱い武内さん、「人格と人格のふれあいの中で,心が震え,魂が揺さぶられる体験というものを久しぶりにした気が致します」とメールで書いてくださっていましたが、それは私も一緒です。お招きいただき、本当にありがとうございました。 一日経った今でも、感動が全身に残っている感じ。 九州大学の皆様、本当に本当にありがとうございました! また機会があれば是非お伺いできればと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.15 01:23:48
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