弁護士YA日記

2013/02/16(土)11:00

「ひよこ」の思い出

先日、東京出張の帰り、東京駅の売店にあった銘菓「ひよこ」に目が止まった。 不意に、小学校1年生の時、担任をしてくださったK先生のことを思い出した。 K先生は、当時、おいくつだったのだろう。明るくて元気で面白くて、何より、子どもたちへの愛情に溢れた男の先生だった。 みんな、K先生のことが大好きで、登校すると、順番に抱っこをせがんだものだ。随分重かっただろうに、私には、K先生の笑顔の記憶しかない。 授業中、分からないことがあって、みんなで口々に質問すると、K先生は必ず、「そうだなあ、それは、やってみなくちゃ分からないから、やってみよう!」と仰った。その後、みんなで、手を叩きながら「やって~みなくちゃ、わからない~、やって~みなくちゃわからない~」と独特の節をつけて、机に座ったまま踊っていたっけ。 今から振り返れば、6~7歳の幼子の質問だから、大人から見れば、「やってみなくても(やるまでもなく)分かる」ことばかりだったと思うのに、K先生は、決して、質問を潰したり遮ったりされなかった。 「やってみなくちゃわからない」という合い言葉の元、本当に、やってみて、やってみて分かったこと、K先生に報告に行くと、いつも嬉しそうに聞いてくださった。 分からないことを分からないと言うことはちっとも恥ずかしいことじゃないんだ。 調べてみないとどういう答えがあるかは分からないんだ。 そして、調べてみて分かった!って辿り着くことって、とても楽しいことなんだ。 ・・・小学校1年生の時にそう思えたこと、実は、とても大事な原体験だったのではないだろうか。今、振り返ると、はっとする。 さて、K先生が、東京出張のお土産で、クラス40人全員に「ひよこ」を買ってきて下さったことがあった。 ひよこを形どったコロンとした愛らしい形に包まれた、ほろりと溶ける白あん。 なんと美味しいお菓子なんだろうと子ども心に思ったものだ。皆で、大騒ぎしながら食べた記憶、未だに色褪せない。 K先生は、「ひよこ」を買ってきた時の子どもたちの喜び様を保護者会で、こんな風にお話されたという。 「ひよこの食べ方それぞれに子どもたちの個性が出るんですよ。頭からがぶりと美味しそうにかぶりつく子、おしりのほうから惜しみ惜しみかじる子、半分まで食べて後はおうちで食べようと大事そうに紙にくるむ子、色々でね。そういう姿を見ているだけで、飽きませんよ。楽しいです」 母から、後日、そのエピソードを聞いた時は、何とも思わなかったのだけど、今になって、K先生の暖かな眼差しが心に沁みていくような気がする。 K先生は、本当にひとりひとりの子どもの個性をのびのびとおおらかに見守って下さる先生だったのだなあ、だから、私は、あんなにも小学校1年生の時、楽しかったのだなあとしみじみと感じる。 光溢れる教室の中で、思い思いに「ひよこ」をかじる小学校1年生、その姿をニコニコと見守るK先生・・・掛け値なしに幸せな風景だ。 その後の学校生活は、私にとって、必ずしも楽しい思い出ばかりではなかったのだけど、最初の「学校」である小学校1年生で、K先生に担任していただけて本当に幸せだったなあと思う。 思わず、衝動買いしてしまった「ひよこ」、昔と変わらず、懐かしくて甘い味でした。 K先生、お元気ですか。 私は、元気です。先生に教えて頂いた、「やってみなくちゃわからない」精神、今も大切にしているんですよ。 先生にいつかお会いできる日を楽しみにしております。

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