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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2014.07.21
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カテゴリ:弁護士業務
先日、渡辺淑彦弁護士と共に、「法律家の使命と役割~原発震災から考える」と題した講演を行うために、九州大学に遠征に行って来た。
九州大学には、2012年の1月にもお邪魔しており、2年半ぶりの再訪。
前回の感動は余りにも忘れがたく、ブログにも書いた。

http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201201130000/


そして二年半後の再訪の感動も、二週間が経過しようとする現在も全身に残っている。
今回も前回同様、武内謙治さんのご招待だったのだが、武内さんの教育者、研究者、そして1人の人間としての誠実さに裏打ちされた細やかかつ幅広いご準備に、心の底から感動すると共に、自分が果たしてこのようなご対応に値するだけの人間なのだろうかと何度も自問自答した。

一例を挙げると、今回の講演会の資料として、武内さんは、過去、渡辺さんと私が執筆したすべての文章、渡辺さんと私が取り上げられたすべての新聞記事を検索して資料化、講演前に学生さんに配布し、講演までに読んでくるよう指示されていた。
私は、講演当日に、この資料を実際に紙媒体で受領したが、ずしりと重みのある資料を一枚一枚めくりながら、これひとつとっても永久保存版だと感じ、武内さんがこの資料を作成するために費やされた時間と労力に頭が下がる想いだった。

準備は、「多忙を極める」という言葉が日本一ふさわしいのではないかと思われる渡辺さんと、メールのやりとりをしつつ、夜中に何度か電話で話し合うという形で進めていったが、「武内さんの誠実な情熱に応えたい」が合い言葉だった。

とはいえ、問題は、1時間半、何を話すかである。
震災から既に3年が経過した。「被災地の実態」を伝えるだけなら、良質なドキュメンタリー番組を視聴する方がはるかに有益だ。法律家である私たちだからこそ伝えられることは何だろう。
また、今回は、1人ではない、2人で教壇に立つ。1人で講義する場合は、自分が何を話すかは当然分かっている。でも、2人の場合、お互いの話すことがすべて分かっているわけではない。せっかくだから、2人だからこそできることがしたい。
個人的には、最前線で3年間、悲しみと怒りを抱えながら、果敢に闘い続けている渡辺さんの、法律家として人間としての素晴らしさを、渡辺さんが1人で講義する以上に伝える内容にしたいとも思った。

渡辺さんと率直に意見交換しながら、結論的には、「学生さんたちの感情を揺さぶりたい」、「自分の頭で考え、判断し、行動するという、法律実務家の日常を体験して欲しい」という想いから、渡辺さんの提案で、「学生さんとの討論を中心とした講義をしよう」という結論に落ち着いた。
討論の素材は、渡辺さんが実際に受けた相談を元に、4題用意した。いずれも、私たちも正解が分からない難しい問題ばかりである。でも、難しい問題だからこそ、当事者意識を持って考えて欲しい、そう思ったのだ。

「討論中心の講義」という軸が決まれば、後は何とかなる、と楽しみに「九州場所」(武内さんが大相撲好きの私のために、つけて下さった講義のニックネームです)の日を待つばかり。わくわくしていたところ、「戦後最大の台風」が上陸する予報で、果たして予定通り行けるのか、そして帰って来られるのか、が最大の悩みになってしまったが、台風をすり抜けるように行き来できたのは、本当に幸運としか言いようがない。

九州場所

講義は、まっすぐにこちらを見つめてくる若く真摯な学生さんたちの目線を全身に感じながら始まった。
敬愛する渡辺さんとの講義は、事前に思った以上に楽しかった。お互いの話に触発されて話が発展していくライブ感は、1人で講義していると絶対に味わえない。
ただ、この充実感は、渡辺さんの圧倒的な能力が前提にあり、私一人ではこんな講義には到底ならない。話の一つ一つが現場の実感に裏付けられていて凄まじい迫力があるし、3年間様々な観点から思考を深めてきたことが、一緒に90分を過ごす中でよく分かり、心打たれ続けた。

そして、メインイベントの学生さんとの討論では、難しい問題ばかりの上、マイクを突然向けられるという非日常の中、一生懸命考えながら言葉を紡ぐ学生さんの真摯な姿勢に、感動した。悩んだ末、「分かりません」と答える学生さんもいたが、講義後の感想文に「何も答えられず情けないと思ったが、ぱっと思いつきで答えが出せるような問題ではないのでこれからも考えていきたいと思った」という記載があったことに代表されるように、皆が真剣に考えてくれていることがよく分かり、こんな時間に居合わせることができて私は本当に幸せだと思った。

はっとするような鋭い感受性がみなぎる学生さんの意見には渡辺さんも私も触発され、事前に想定していないことをその場で話すことになる。二重三重にも思考が広がる2人+学生さんたちのコラボレーション、もっと長い時間、続けたかったのですが、残念ながらタイムアウト。

タイムスケジュールの管理を含め、反省点は多々あるが(リベンジしたいです!)、

「原発事故とその対策という今までに体験したことのない問題に対して、どのように対応していくのかということには単純に法律を当てはめるのではなく自分の意見を持つことが大事であると感じた」

「共感力が大事というので、討論の事例に親身になろうと意識してみたら問題がさらに難しく感じました。ゼミでの議論やニュースに関してなど、こうしたらいいのでは、と思うこと、考えることは多々あるけれど、双方が納得できる落としどころを見つけるのは大変だと実感しました」

等の感想を読むと、学生さんたちがこの90分、私たちの話を受動的に聞くのではなく、自分の頭をフル回転させて考えてくれていたことがよく分かり、思い切って討論をメインに据えて本当に良かったと思った。

講義後は、台風情報を集めたり、取材に来て下さっていた新聞記者さんとお話ししたり、質問に残った学生さんたちとお話ししたりしているうちに、今度は、武内ゼミにお邪魔する時間になった。
武内さんの事前準備は不要というお言葉に甘えて、本当に何の準備もしていかなかったのだが、20人弱の少人数のゼミ、講義の時以上に、学生さんたちのキラキラした瞳がまぶしい。質問に答えたり、渡辺さんと掛け合いしたりで、本編以上にリラックスしてお話でき、これまた幸せな時間となった。

ただ、非常に気がかりだったのが、「弁護士はもう需要がないと聞きますが」「弁護士は余っていると報道されていますが」の枕詞をつけながら、渡辺さんと私の活動の実態を質問される学生さんが複数いらしたこと。
法曹志望者を事前に諦めさせてしまうようなネガティブ情報ばかり流れていることで、実際にも優秀な学生さんの進路として法律家が選ばれなくなっているとすれば、国家的損失である。

法律家があってこその法治国家。司法過疎地で働いた経験のある渡辺さんと私にとっては、共通の確信である。
情熱溢れる優秀な人材に法律家を目指してもらわないと困る。
そのために私たちができることは何だろうか。新たな課題を背負った気がした。

お楽しみの締めくくりは、博多名物もつ鍋。
正直なところ、「もつ?内臓でしょ?」位にしか思っていなかった私ですが、新鮮なもつが投入された野菜たっぷりのお鍋の余りの美味しさに、欠食児童のように何倍もお代わりしてがつがつ食べてしまいました。前回の水炊きといい、九州、恐るべし。
何より、心許せる仲間と本音で語り続けた時間、思い返す度に、私はまだまだ頑張れる、と思います。

武内さん、九州大学の皆さん、そして渡辺さん、本当に本当にありがとうございました。
私も、皆様から頂いたエネルギーを糧に、日々を一生懸命生きていきたいと思います。





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Last updated  2014.07.22 17:00:26
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