弁護士YA日記

2016/12/23(金)02:40

公正証書

弁護士業務(168)

書きたいことが沢山あるのに、余りにも本業が忙しい師走。 もう一頑張りです。 さて、先日、公証人役場に「公正証書」を作成しにいきました。 「公正証書」とは、当事者間の合意を公証人が聴取して文書化した書面なのですが、最大の特徴は、執行認諾約款(約束を守らなかった場合は、給与や預金口座を差し押さえられても文句は言いませんという条項)さえあれば、その公正証書に基づいて強制執行ができるという点です。 養育費のような長期間にわたる支払いの場合、支払いが滞ることは親権者にとって死活問題です。 公正証書があれば、支払いがない場合に直ちに強制執行手続をとれるのに対し、公正証書を作成していない場合は、「こんな合意があったのですよ」「あったのに払ってくれないのですよ」という話を裁判所に持ち込むことから始めなければならず、短くても数ヶ月、長ければ1年以上も時間が掛かってしまいます。 一般論として、裁判所の調停や訴訟を通さずに当事者間で合意が成立することは、紛争解決としては望ましい終わり方なのですが、そこで安堵せずに、もう一歩、公正証書まで作成しておくと、本当に困った時に活きてきます。 「俺を信用しないのか、絶対に迷惑をかけない。信じてくれ」と言われても、「あなたを信じているからこそ、何かあったときに辛い思いをしたくないの。あなたの気持ちを公正証書にして下さいな」といったたおやかな対応が必要なわけですね。 たとえ金箔入りの紙に、毛筆で麗々しく書かれた立派な合意書でも、公正証書には敵いません。 という観点から、私は、短期一括の支払いが見込まれるといった例外的な事情が存在する場合を除き、金銭の支払いを受ける側のご依頼を受けた場合は、必ず公正証書作成まで持ち込みます。 未来を見通し、最悪の事態に備えて今取れる対策を取っておくことは、公正証書作成に限らず、弁護士の大切な役割だと私は思っています。 おお!このブログでは極めて珍しい一般的な法的知識の解説でした! 本題に戻します。 という事情から、公正証書を作り終えてホッとした私、一緒にいらした依頼者のXさんに、「これでもう安心です。公正証書は、普通の合意書より120倍は強いですからね!」と力強く宣言したわけです。 するとXさん、「ありがとうございます。ところで先生、何故120倍なんでしょう?」と仰ったので、たいした意味も無かったので焦った私、「いつもは100倍なんですけどね、今日は12月でしょう?特別ポイントがついて120倍です!」と今書いていても何言っているんだろうなあというようなことを答えてしまいました。 Xさんは、大笑いしながら、「先生。前から思っていたんですけど、先生、面白いですよね?」と仰るので、「いやいや、今まで誰にも面白いなんて言われたことないですけど?」と言うと、「いやいや、皆、絶対、先生って面白いなあって思っていますって。言わないだけで、皆、内心、絶対思ってる筈ですよ」と続け、私も「え~!いや、それはないと思いますよ!」となんだか大笑いのやりとりになりました。 12月の寒空の下、Xさんとくだらないやりとりをして笑い転げた瞬間、Xさんの何か吹っ切れたような頬を真っ赤に染めた満開の笑顔、なんだか愛しくて書き留めておこうと思いました。 この後も折を見て書きたいことを、更新していきますね。

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