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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2017.01.14
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カテゴリ:カテゴリ未分類
原発事故避難者に対する住宅供与支援打ち切り問題について、先日、亀井真紀弁護士、神田友輔弁護士と東京であった会議の際に協議した。
時間が無い中、「微力でもできることをやろう」ということを確認し合えた。3人で話していると、いつも「微力でも」「少しでも」「一つでも」という言葉がキーワードになってくる。それだけ難しい問題ということなのだけれど、どんなに巨大な問題に対しても、できることを諦めないスタンスが、私がお二人を敬愛している最大の理由だということを改めて感じてなんだか嬉しかった。

さて、寒波襲来の中、心が熱くなる大切な思い出を書き留めておきたい。

先日、思いがけず、故郷富山の銘菓「月世界」を頂いた。月世界の公式HPはこちら。
http://www.tukisekai.co.jp/index.html

「新鮮な鶏卵と和三盆糖、寒天、白双糖を煮詰めた糖蜜と併せて乾燥した口当たりの良い上品なお菓子」で、「暁の空に浮かぶ淡い月影にも似て、月世界となづけられました。 口にはこぶとしずかにとける独特の風味」という説明を読んだだけで美味しそうじゃないですか?

そうです、実際にも、本当に美味しいのです!
子どもの頃から、ほろりと口で溶けてゆく上品な甘さが何とも好きで、1箱(4個入り)を一人で全部食べてしまえる位、大好きなお菓子でした。

だから、本当に嬉しくて、箱を空けようとしたら、突然、大学の同級生、Wくんのことを思い出した。
Wくんは、私が大学2年生の時まで入っていたESS(English Speaking Society)のディベートセクションで一緒だった。

Wくんは、神戸出身で、18歳まで富山にいた私にとって、初めて接する「常に関西弁を話している関西人」だった。
Wくんは、関西弁こそ達者であったものの、「一般受けする面白い人」ではなくて、正体は未だに把握できないものの何かものすごく熱いものを自分の中に抱えていて、でも、なかなか周囲にはその熱さが理解できなくて、扱いにくいというか、一筋縄にはいかない偏屈な面を持っている人だった。

でも、私は、そんなWくんの一筋縄ではいかない偏屈さの裏にある「熱さ」が少しだけ理解できるような気がして、大学で会って話すだけでは時間が足りなくて、次第に、電話で色々なことを話すようになった。何を話していたかまったく覚えていないけれど、朝方まで電話したことも何度かあったような気がするから、1~2時間のレベルではない長電話だったのだろう。
今から思うと、私は、Wくんが持っていたものとは異なるけれど、やはり自分でも持て余すような「熱さ」を抱えている人間だったから、Wくんとあれほど仲良くなれたのだと思う。私は、Wくんほど強烈でも偏屈でもなかったですけどね(笑)。

と書くと、ロマンスを想像される方もいるかもしれませんが、お互い、恋愛感情はまったくなく(と断言するのもどうかと思いますが、本当にそうだったんですもん)、ただ、恋愛感情がおよそなかった分、お互いのことを美化することなく、私は、Wくんの長所短所が本当によく見えたし、おそらく、Wくんもそうだったのだろう、私の駄目なところ、弱いところを、容赦なく指摘してきた。

「駄目なところ」「弱いところ」の指摘まで話が繋がったのは、ディベートという半年間続く一つのテーマで肯定側・否定側に分かれて勝ち負けを決める討論ゲームが私たちのフィールドだったからで、勝負の世界ではやはり弱さを認識し、克服することが必要だったからということに尽きる。

私は、Wくんから何度となく、「葦名さんは、綺麗なディベートが得意ですよね。でも、綺麗なだけじゃ勝てないですよ。汚くても泥にまみれても、せこいなこいつ、と言われても勝ちにいかな。葦名さんは、綺麗だけど弱いディベーターですよ。僕から言わせれば、そんなん、完全に自己満足で、スピーチセクションにでも移って勝手にやってればって感じですけどね」という趣旨のことを言われていて、もう本当にきつかったけど、でも、Wくんの言っていることは本質を突いていることが分かっていたから、その通りだと認めるしかなかった。

現実に、私の2年間のディベート大会の戦績は、ベスト8が最高で、それ以上に進んだことは一度もなかった。ディベートの試合は2人1組のユニットで、2日間にわたって、1日3試合、計6試合ある。
私は、初日は連勝するものの、その結果を受けて2日目の対戦相手が強くなってくると、連敗するという流れが本当に多く、自分でも情けなかった。強い相手だと、事前に立てた作戦通りにディベートが展開しないので、臨機応変の対応が必要だったのに、それができなかった。自分のストーリーから抜け出せず、勝負を分けるトピックを見極めて、自分のストーリーを捨ててでもそのトピックに集中して勝ちに行くことができなかったのだ。

「勝ちに行くディベート」「勝ちに拘るディベート」でも「美しいディベート」は展開できるし、実際に、そのようなディベートを展開できる人が本当に強いディベーターなのだけど、Wくんが言っていたのは、「美しさは度外視してでも勝ちに行け」ということだったわけで、私には、そうできるだけの勇気も根性も技術もなかったということだ。

2年間のディベート活動は、このような形で不完全燃焼で終わったが、Wくんの本質を突いたアドバイスは、その後、私の人生のものすごく重大な局面で活きてきた。

それは、司法試験の論文試験。ちょっとマニアックな話になりますが、旧司法試験は、短答・論文・口頭の3段階で行われ、このうち最難関は、2日間にわたって行われる1日3科目×2の計6科目について、出題にされる問題に記述式の文章で解答する論文試験だった。

あれ?1日3科目の2日間、計6科目・・・そうです、ディベートの試合と同じだったのですね。
初日の3科目は、自分では何となく無難にこなせた気がしたが、2日目の最初の科目で、私はつまづいた。何の科目だったか覚えていなかったが、論証が時間切れで途中で終わってしまい、いわゆる「途中答案」になってしまったのだ。

もう駄目だ、もう今年は終わりだ・・・と頭が真っ白になりかけた時、Wくんの声がこだました。
「葦名さん、二日目からが葦名さんの本当の勝負所ですよ。ここで勝たなあかん。どんなにみっともなくてもここで勝たな、葦名さんは、一生勝てません。笑われても恰好悪くてもいいから勝ちにいきましょうよ。泣いている場合ですか。勝ちましょうよ」
Wくんと一緒に組んだディベートの試合で、負けそうになる度に、Wくんは、私の肩を揺すぶりそうな勢いで迫ってきていた。

その声が、論文試験会場で突然頭一杯に鳴り響いた。
ディベートでは、一度もWくんの想いに応えられなかったけど、私はもう私の人生に負けたくないんだ。
そういう想いが強烈に沸き上がってきて、とにかく最後まで諦めない、綺麗な答案じゃなくても、最後まで全力を出し切る、そう強く思って、残りの2科目も無我夢中で取り組んだ。

最終的には、この論文試験に何とか合格したため、今、弁護士として仕事をできているわけだが、「綺麗じゃなくても、泥臭くてもみっともなくても、最後まで絶対に諦めないでできることを全部する」という姿勢は、実は、試験以上に弁護士としての仕事上で重要であることは、日々の実感であったりする。

Wくん、Wくんが教えてくれたことは、私の中で今も生きているよ。
ありがとう。もうずっと音信不通の彼に、今言いたいこと、かな。

ところで、「月世界」でなんでWくんを思い出したかというと、私が帰省土産でサークルの皆に「月世界」を持って行ったところ、Wくんは一口食べて顔をしかめ、「うわ、まずい!この食感、この甘さ、すべてがアウトですわ。関西にこんなまずいお菓子ありませんって。こんなんが銘菓だなんて富山県民、おかしいんちゃうか」と酷評したからです!

当時は、え~!?と思うだけで反論できなかったけど、Wくんにもう一つ言いたい(笑)。
「月世界」は、やっぱり凄く美味しいと思います!Wくんの味覚が変なんだよ!

皆様も機会があれば、是非、ご賞味くださいね。






Last updated  2017.01.14 08:32:27



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