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弁護士YA日記

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2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2017.05.03
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カテゴリ:読書日記

70回目の憲法記念日に、私が心から感銘を受け、これからも一生、私を支え続けていくだろう大切な本をご紹介します。

日本を代表する憲法学者、佐藤幸治先生のご著書「立憲主義について 成立過程と現代社会」は、書名の通り、立憲主義の生成過程を紐解き、歴史を踏まえた上で、現代社会に置ける立憲主義の意義が書かれた本です。

ハードカバーではなく、約260頁とそれほどのページ数がない本の筈ですが、非常に濃密な内容で、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、そして、日本、それぞれの歴史を俯瞰しての日本国憲法の位置付けが、どこまでも深く、あらゆる意味で「美しい」文章で綴られており、余りにも豊かな知性と教養に裏打ちされた迫力と説得力が、拝読する度に、私の心に迫ってきます。

初めて拝読したのは一年ほど前ですが、憲法学という学問の底知れぬ深味、佐藤幸治という知の巨人の凄みを、書いてあることのすべてを理解できたわけではとてもありませんが、思い知らされ、打ちのめされ、読み終わった後、しばらく呆然としていました。

見上げるほどの巨木も萌えいずる緑の若木もある、これほどまでに豊かで多様な森がこの一人の偉大な学者の中にあるのだろうともう本当にひれ伏すしかない知性で、この世にこんな人がいるのかと心から思いました。

ただ、私が驚き圧倒されている本質は、佐藤先生の圧倒的な知性と教養は勿論なのですが、合間合間に、鋭くほとばしる、そして、終章では隠さず綴られる佐藤先生の「日本国憲法」と「司法」に対する想いです。 特に明らかに相当の頁を割いている「弁護士」という職業が果たすべき役割につき、佐藤先生の想いを吐露されている下りには、もう終盤、自分がどの言葉に反応して泣いているのか自分でもよく分からなくなるくらい、心が熱くなりました。

実は、私は、東日本大震災後、弁護士という進路選択は正しかったのだろうか、と根本から悩んだ時期があります。国家公務員のように大きな制度設計に携わるわけでもない、医師のように命と直接向き合えるわけでもない、私達は何のために誰のためにどこに向かって仕事をしているのだろう・・・そんなことがいつも心の底に流れていました。
そんな折に、この本を拝読したので、佐藤先生が、明らかに弁護士を対象に、大きな期待と励ましを格調高く綴って下さっていることが、心に本当に染み入ったのですね。


また、法科大学院の取り組みを紹介する下り(243頁)の注217で、私の敬愛する恩師である後藤昭先生の最終講義に触れられており、私が、最終講義当日も涙した「専門家を目指すというのは、つまり他人のために勉強する責任を自分が引き受けることだと思います」という言葉に、よりによって、佐藤幸治先生のご著書の中で再会するとは思いがけない不意打ちで、「あなたは他人のために勉強する責任を果たしていますか」という後藤先生の声が本の中から聞こえてきて、「ごめんなさい、もっと頑張ります」と心の中で返事をする、というサプライズもありました。

以来、この本は私の宝物になったのですが、私のような若輩者が、佐藤先生のご本の書評を書くのは恐れ多すぎると思い、自分の心に大切にしまっていた本でした。
では、何故、一年も経ってから、急に?ということなのですが、実は、先日、とある機会に、佐藤幸治先生のご講演を拝聴する機会に恵まれ、本の核心部分が肉声で心に届く事態に、一年前をはるかに超える感動に襲われ、ああ、もう、この感動を言葉にどうしても留めたいという衝動にかられてしまったのです。

御年80歳の佐藤先生は、当初、座って講演を始められたのですが、5分も経たないうちに「演台が低いですね」と仰り、すっと立ち上がられました。
それから約90分間、佐藤先生は、澄んだ瞳で、背中をすくっと伸ばして、現状の政治状況、法の支配のあるべき姿、法の支配を真の意味で実現するための司法改革の理念、法曹養成の現状への憂い・・・等を、静かな口調で、でも、ひたひたと聴く者の心に迫ってくる迫力で、お話しされました。 
憲法学者としての人生を懸けていらっしゃるような真摯な空気が、会場全体を蔽っていたあの時間は、夢のように幸せな時間でした。


本の中に、終戦直前に亡くなった哲学者西田幾多郎氏の「本当の日本はこれからと存じます」という言葉を佐藤先生ご自身が心深く受け止め、この言葉の意味する世界は憲法前文の世界観にあるのではないかと書いていらっしゃる下りがあるのですが(「立憲主義」218~219頁)ご講演を拝聴して、佐藤先生自身、西田氏はじめ、絶望的な状況の中で、なお、日本の未来を思って亡くなった知性を心に受け継ぎ、今を生きていらっしゃるのだなあと改めて感じ、帰宅してからも、しばらく涙が止まりませんでした。

私の心に、佐藤先生の高潔な佇まいと眼差しが刻まれてしまい、思い出す度に、背筋が伸び、心が引き締まり、私の責任を果たさなければという気持ちになります。

ご講演後、サインも頂きました!ものすごく緊張しましたが、本当に本当に嬉しかったです。
佐藤先生、お疲れのところ、本当にありがとうございました!



 この時代に生まれ合わせた法曹としての責任を、私なりに誠実に真摯に全力で果たしていきたいと思います。
改めて自分に言い聞かせる70回目の憲法記念日でした。








Last updated  2017.05.03 00:51:18



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