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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2017.08.11
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カテゴリ:弁護士業務

4年ぶりに、清水純一くん(仮名)が、会いに来てくれた。
4年前のことも、以前に書きました。

https://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201307220000/

純一くんは、拙稿「熱意で守った教師への夢」(季刊刑事弁護41号、現代人文社、2004年)の主人公で、9年前から念願叶って高校の教員となった。純一くんと出会ったのは2004年なので、かれこれ13年のお付き合いになる。

そう、13年も経つのです・・・、13年も経っているので、純一くんも立派な大人で、かつ、立派な社会人なのですが、私の中には、全力で守ってあげなければならなかった20歳の頃の純一くんがいるので、いつ会っても母親のような気持ちになってしまう。
この日も、改札口で出迎えるなり、「何か食べる?」と声をかけてしまった。お昼時間はとっくに過ぎていたから、冷静に考えたらお腹が空いている筈はないのだけれど、学校の先生のご好意と愛情で、給食を持ち帰らせてもらって何とか命を繋いでいたという過酷な子ども時代を知っているので、「お腹が空いているんじゃないか」、「ちゃんと食べているのか」という気持ちが先に立ってしまうのだ。

純一くんは、昔と変わらない笑顔で、「お腹は大丈夫です。それより、先生の事務所を見せてください。」ときっぱり言った。

あら、そう?それじゃあ、暑いけど歩いていこうか、と応じて、駅から事務所までの徒歩10分弱の道を、順番ごちゃ混ぜに色んな話をしながら歩いた。純一くんは、多弁ではないけれど、多分誰に対してもそうだと思うのだが、人の話をいつもものすごくまっすぐに聞く。真摯な眼差しで、全身で耳を傾けて。
だから、会話が弾むのですね。色んな事を話したくなる、心を開いて打ち明けたくなる「聴き方」を、彼は一体どこで身につけたのだろう。
変わらない良いところだなあ、と懐かしみつつ、純一くんが思っている以上に、純一くんに話を聞いてもらえる生徒は幸せだろうなあと思った。

事務所を一通り案内してからも、詳しいことは書きませんが、お互いに色んなことを話した。
話をする中で、純一くんが「時々、ふと思うんですけど、教師って何も形になる物を残せないなって思います。物を作れば作った物が残るでしょう。先生だって、判決とかで、やったことを形に残せるじゃないですか。毎日が形にならないまま過ぎていくと、自分は何をやっているのかなって空しくなってしまうことがあります」と言ってきた。

「空しい」なんて言葉が純一くんの口から出るとは思わなかったので、ちょっとびっくりしたけれど、私も弁護士登録後数年経って、自分のやっていることに何の意味があるのだろうか、と強く不安を抱えた時期があったし、もっと言えば、その問いは、今も含めて一生抱えて追い求めていくことになるのだろう、でも、自分はその苦しさから逃げずに追い求めていきたい、という私なりの静かな覚悟がいつもあるので、純一くんの抱えている「空しさ」、よく分かるような気がした。

でも、それでも、「形に残る」ことだけが、仕事をする意義ではない、ということも伝えたいと思い、

「私も日々の仕事、形になんて残っていないよ。勿論、良い判決や良い和解、良い解決ができたら嬉しい。でも、私に会えて良かった、ここに来て良かった、って思ってもらえることが嬉しい。少しでも人生が明るくなった、未来を考えられるようになったって思ってもらえることが嬉しい。でも、その嬉しさは、私の中ではなくて、一人一人の相談者と依頼者の中に残るものだから、私の中に蓄積して形になっていくものではないよね。純一くんのお仕事もそういうところがあるんじゃない?純一くんにお話を聞いてもらって、純一くんと出会えて、本当に良かったって、いつかどこかで生徒が思ってくれたら素敵だよね。人を育てる仕事って本当に凄いと思うな。私も、未だに忘れない学校の先生、何人もいるもん。何年経っても何十年経っても、私の心に残っている先生のことを考えると、本当に凄い仕事だなって思う。」

というようなことを話してみた。
純一くんは、「先生の仕事も形に残らないんですね。僕の仕事と一緒のところもあるんですね」とちょっと嬉しそうだった。きっと純一くんが、一生かけて、純一くんの答えを出す問いだよね。
お互いに頑張っていこう。

その後、再び駅まで送っていった。別れ際、純一くんは、「今日はありがとうございました。お会いできて嬉しかったです」と両手を差し出してくれた。ちょっと熱でもあるのではないかと心配になってしまうほど暖かかった純一くんの手に触れた瞬間、13年前の握手が蘇ってきて、ちょっと目が潤んでしまったことは内緒です。

純一くん、元気でね。
私もずっと元気に頑張っていきます。






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Last updated  2017.08.11 04:03:12
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