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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2020.01.13
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カテゴリ:留学
先日お会いしたアメリカの弁護士さんに、「アメリカでは、95%もの訴訟が、trialに進むことなく、pretrial の段階で和解で解決する、何故それほどまでに高い割合で和解が成立するのか」と最近、法曹となると誰彼構わずお聞きしている質問をさせて頂きました。同じ質問を色々な方にお聞きするのは、私が心底聞きたい点であるため、という単純な理由ではありますが、お答えをお聞きしていると、アメリカの司法の特質が浮かび上がってくるような気がして、いつもとても楽しいです。
この方は、次のようにお答え下さいました。とてもオーソドックスなお答えです。

理由は2つあると僕は思います。
1つは、やはり、complete discovery、完全な証拠開示手続きがあること。こちらに不利な証拠も分かるので、見通しが立てられる。逆に、日本でdiscovery がないなんて信じられないです。
もう1つは、trial に進んだ場合に、jury 、陪審の判断が、unpredictable、予測不可能であること。陪審の判断が、こちらの見立てと全然違った場合に、弁護士の責任も重大でとてもそんなリスクは取れないです。

アメリカ司法におけるDiscoveryの位置付けは良く分かるのですが、Discoveryがない国からやってきた私としては、疑問がつきません。最大の疑問は、何故、Discoveryが機能するのかという点です。実務の現場にいると、故意かどうかはともかくとして、依頼者はじめ当事者が不利な事実や証拠を、裁判所はおろか、弁護士にも言わない、明かさないということは、決して珍しいことではありません。自分に不利なことを言いたくないという気持ちは良く理解できるので、その気持ちをどうほぐすか溶かすか、というのもとても大事な弁護士の仕事ではあると私は思っています。ただ、どんなに信頼関係を築いてきたつもりでも、やはり、予期せぬ事実や証拠が出てきてしまうということは避けられないのではないか、どうやってcomplete discovery を実現するのか、というのが私の疑問です。

その方は、私の疑問に真摯に耳を傾けて下さった上で、「証拠隠すのがどんなにリスキーで恐ろしいことかということを依頼者に説明するんだよ。凄い額の罰金課されるかも、とか、相手方の訴訟費用も全部持つ羽目になるとか、裁判に問答無用で負けちゃうとか、もう考えられる限りの恐ろしい事態をね」と答えてくださったので、「それは結局、裁判官が凄い裁量を持っているってことですかね?でも裁量が大きいってことは、Judgeの怖さも、Judgeによるってことにはならないんですか?優しい(笑)Judgeもいるのでは?」とさらに質問を重ねました。

すると彼は、「Judge個人の個性はもちろんあります。それぞれにキャラクターの違いもありますしね。でも、やっぱり、米国の弁護士は、裁判所に逆らうと大変なことになるという共通認識を強く持っています。だって、裁判所って、三権分立の一翼でしょ?国家権力の担い手ですよ!」と答えて下さいました。

その瞬間、自分の中で、腑に落ちる感覚と引っ掛かる感覚、両方感じました。
確かに裁判所は司法権の担い手、三権分立の一翼を担っています。法律家でであれば、基本中の基本知識です。だから、腑に落ちたんですね、確かにその通り、彼の言っていることは、理屈ではよく理解できます。もしその意識が米国の法曹に共有されているとすれば、裁判官の持つ力は実質的にも極めて強大でしょう。

ただ、一方で、引っ掛かったのは、私には言えない言葉だなと感じたこと。
私は多分今まで本気で、裁判所が三権分立の一翼、とか、国家権力を行使している、とか本気で信じたことがないかもしれない、と、ふと、思いました。その感覚が、日本の実務の中で醸成されたのか、私個人の姿勢の問題なのか、はまだ良く分かりません。でもとにかく、私が、日本の司法制度を説明しようとするときに、パッとこういう表現は出てこないんじゃないかと感じたんですよね。

やっぱり、こういう対話、こういう気付きは大事です。
今後も出来る限り多くの法律家とお話しできる機会を作っていきたいです。






Last updated  2020.01.13 02:25:42



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