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弁護士YA日記

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http://hinodecho-law.jp/
日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2020.08.06
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カテゴリ:弁護士業務

先日、アメリカのCovid 19 の状況についてお話をさせて頂く機会が2回あったのですが、今般、研修動画や資料がオンライン上でも閲覧できるようになりましたのでご案内します。

 

まず、本年716日に行われた日弁連の連続講座「パンデミックと人権制約基準」で用いた資料はこちらです。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/international/library/ihrstudy_themes.html

この講座では、私が担当したアメリカ以外にも、他のパネリストから、日本、フランス、韓国の状況も報告されましたので、それぞれの資料を見比べて頂くと、有意義な各国の比較ができるのではないかと思います。

 

次に、翌717日に実施した関東弁護士会連合会主催の「法律家の視点から見るアメリカにおけるCovid19 の現況」ですが、こちらは資料のみならず動画も公開されています。

http://www.kanto-ba.org/suigai/index.html

 

いずれもZoomウェビナーを用いていた関係で、私からは、聞いて下さっている方々のお顔を拝見できなかったのですが、すぐに実務にお役に立つような内容ではなかったにもかかわらず、沢山の方々にご参加頂いたとのこと、心から感謝申し上げます。

 

また、研修中も研修後も、多数の質問を頂きました。その場では正確にお答えできなかったところもありましたので、以下、少し補足させて頂きます。私の個人的見解に基づくご回答なので、異なる内容や視点での回答も大いにあり得ると思いますので、あくまでもご参考までにという趣旨です。

なお、研修本体の準備段階では勿論、補足回答を作成する際にも、UIUC時代の勉強仲間に情報提供頂いたり、ご意見をお伺いしたりしました。世界のどこにいようと、学ぶ喜びを共有し続けられる友人たちに恵まれたことに感謝の気持ちで一杯です。

 

Q1 Stimulus checkは世帯宛ではなく個人宛か?

A:はい、その通りです。税金の還付を申請する際に届け出た個人の口座に振り込まれます。16歳以下の子どもの給付金は、親権を持つ親の口座に振り込まれます。

 

Q2 法律家団体のプロボノ活動は具体的に何をしたのか、どのような相談が寄せられたのか。

A:「プロボノ活動」は、無報酬でボランティアで行う活動が前提となります。それとは別に、リーガルエイドや低所得者層向けの公的事務所、パブリックディフェンダーオフィスの活動があります。

 お恥ずかしながら、私自身はこの分野までは調べきれなかったので、同時期に、カリフォルニア大学バークレー校に、日弁連推薦の客員研究員として留学されている橋ケ谷祐可さん(法テラスに所属されています)にお伺いしたところ、いずれの分野においても、「規模、多様性、制度化のレベル」がかなり日本とは違うため、軽々にお答えしづらい分野になってしまうということです。

 ただ、橋ケ谷さんからは、少なくとも後者の、リーガルエイドや低所得者層向けの公的事務所、パブリックディフェンダーオフィスの活動について、少し情報提供頂き、余りの充実した活動に驚嘆しました。ただ、橋ケ谷さんから、既にこのテーマにつき、まとまって発信される機会があるとお伺いしたので、その際には、このブログでもご案内させて頂くということで、ご回答に代えたいと思います。

 

Q3 司法が止まらなかったということですが、裁判所での感染防止対策は、どのようにしていたのか、関連して、JuryTrialはどのように行ってたのか

A:アメリカは連邦制国家ですので、連邦裁判所とは別に州裁判が各州にあります。

まず、連邦地方裁判所で行っていた対策は、下記の時系列を見て頂くのが、一番分かりやすいと思います。ざっと見る限り、手続きの延期や裁判所を一時クローズした時期があったものの、同時に、職員をテレワークにしたり、法廷に入れる人数を制限したり、teleconferencing, videoconferencingを民事、刑事共に利用して手続きを動かす工夫はしていたようです。Jury Trialに関しては、3/19に連邦裁判所全体に出されたガイドラインでは、“Conduct jury proceedings only in exceptional circumstances.”と制限されていましたが、今はマスクとソーシャルディスタンスを確保した上で復活しているようです。

https://www.uscourts.gov/news/2020/03/12/judiciary-preparedness-coronavirus-covid-19

 

州裁判所でも下記イリノイ州裁判所のwebsiteを見る限り、基本的に同様の試みが行われていたようで、オンラインでの手続き利用が強く奨励されています。もっとも、すべての州を確認したわけではないので、各州の裁判所によって運用が異なる可能性が高いです(感染状況にもよると思います)。

https://www.champaigncircuitclerk.org/courthouse-information/news/circuit-clerk-encourages-use-of-online-services-in-response-to-covid-19/

 

Q4 司法が政策を変えていく実態があったということですが、日本ではそのような実態がない理由をどうお考えですか。

これは、素晴らしく、かつ、難しい質問で、本来私がお答えできるような問題ではないと思っていますが、思っているところを書かせて頂きます。

そもそも、「司法が政策を変えていく実態」は日本にもあるところですが、どちらかというと謙抑的で、文字通り最後の崖っぷちの砦になってしまっているところがあるような気がします。一言で言ってしまうと、様々な原因で司法手続きが使いづらいのです。

一方、アメリカの場合は、良くも悪くも気軽に司法が利用されており、こんな(内緒ですが、中には、些細な、理屈が立たなそうな、話し合いで解決できそうな)ことで訴えちゃうんだ、と思ったことも実はよくあり、その結果、政策にブレーキがかかったり、政策が変わったりということも、日本よりも頻繁に生じます。

このようにアメリカで司法が気軽に利用される一つの原因が、法律家の人数と司法予算の規模の違いにあることは間違いないと思います(ちょっと話がそれるかもしれませんが、今回アメリカ中西部に留学して、中国、韓国、台湾はじめ東南アジアの国々の存在感に感動すると同時に危機感も感じました。完全にマイノリティになる体験をすると、数は力だということが綺麗事を並べている余裕がなく肌身に沁みて分かります)。

また、Jury Trialが民事でも刑事でも憲法に基づく権利として導入されており、市民の司法参加が制度的に強制される結果、普通の市民にとって司法が身近になるという側面もあるように思います。たとえば、最高裁判所の裁判官が誰になるか等ということが国民的関心事になります。

さらに、私が思いついたわけではなく、留学時代の勉強仲間の一人で日本の官公庁から留学されているKさんに教えて頂いた調整文化の違いという視点も少しご紹介させて下さい。

「意見に食い違いが起きたときにどう決めますか、というのは、国家の大事な機能であって、それを政治でやるか、司法でやるか、みたいなところはあって、なんとなく日本は政治的に事前調整する方が好きで、司法にいくのは相当覚悟があっていくんですよね。事前調整できないものはそもそも決定できないから時間がかかっていく。一方で、アメリカは司法を使うことに慣れているし、なんとなく話せばわかるなんて言っていても仕方ないので事前調整に変に時間をかけないのだと思います。その分、戦いに慣れているので、逆に実際に戦いになったら、解決策として上手く和解を使うっていうことまで含めて慣れているのかなと。アメリカだとそもそも2大政党制で、どっちが正しいかは別に、意見が食い違っていることを認めたうえで議論する文化があるということだと思います。」

上記挙げてきたことが、ご質問の説明として正しいかどうかと言われると、自信がないのですが、私が現在思いつく限りのことを書いてみました。なお、それぞれが独立した要素ではなく相互に繋がっているというのも私の実感です。

 

Q5 アメリカの裁判のIT化について任意なのか、義務なのか。また、直接主義との関係について教えて下さい

 先に述べたとおり、連邦と州にそれぞれ裁判所があるので、まず連邦裁判所からお答えします。連邦裁判所においては、Case Management/Electronic Case Files (CM/ECF) と呼ばれる訴状や異議などの準備書面をオンラインで提出できる仕組みがあり、弁護士はこのシステムで提出することが義務づけられているということです。CM/ECFについては、連邦地裁裁判所のホームページに詳細が出ています。

 https://www.uscourts.gov/court-records/electronic-filing-cmecf

 

州裁判所は、すべてをフォローできないのですが、少なくともイリノイ州裁判所は、少なくとも民事事件につき、書類のオンライン提出を義務づけているとウェブサイトに記載がありました。

https://www.champaigncircuitclerk.org/courthouse-information/news/circuit-clerk-encourages-use-of-online-services-in-response-to-covid-19/

 

 これら一連のオンライン申請と直接主義との関係は、とても興味深いテーマなのですが、簡単に調べられることではないため、調査未了です。

 

Q6 日本はいち早く教育を止めましたが、アメリカでは止まらなかった点に関し、日本とは異なる権利意識があるということなのでしょうか。

 難しいご質問ですが、アメリカと日本、どちらの国が権利意識が強いかということは、正直なところ何とも分かりません。

 ただ、少なくともイリノイ州、そして、子どもたちが通っていた学区の場合、元々、各公立学校で、コンピューターを使う土壌がありました。幼稚園ならiPad、小学校以上ならノートパソコン、を生徒一人ずつ支給し、オンライン教材を利用した計算練習やリーディング、タイピング練習、調べ物学習、レポート提出などで毎日学校で使用していたのです。そのため、元々学校に人数分用意されていたコンピューターを生徒に支給することができたというハード面は大きいと感じます。

 また、研修中でも触れた通り、教育面だけではなく安心して過ごせる唯一の場所であるという子どもたちもいるので(温かいご飯や整った医療体制がある)、公立小学校が子どもたちの生存権を支えるような役割もあるというところも、影響したかもしれません。下記は、今年37日付のNYタイムズの記事ですが、公立学校の関係者が、 long-term closings an extreme measure and a last resort”(学校を長期間閉鎖するのは、極めて異例な最終手段です)と明言している興味深い内容です。

https://www.nytimes.com/2020/03/07/nyregion/nyc-schools-coronavirus.html

 

Q7 政府から独立した専門機関CDCのような機関は各州にもあるのでしょうか。

    CDCCenters for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病予防センター)は、各州から上がってきた情報を集約したり、ガイドラインを出したりしていますが、それとは別に、各州の保健当局が、データの収集や公表を行っています。たとえば、私が住んでいた地域の保健当局は、ウェブサイトに詳細な情報を開示していました。

https://www.c-uphd.org/champaign-urbana-illinois-coronavirus-information.html

 

Q8 Pandemic下のアメリカの医療体制はどのようなものだったでしょうか

 このご質問に包括的にお答えできるような知識はないのですが、実際に起きたこととして報道されているニュースがアメリカの医療体制を色々な意味で象徴しているような気がするので、ご紹介しておきます。

 これは、NYタイムズの音声ニュースDailyで、729日に配信されたものです。

7/29 NY Times Daily

https://www.nytimes.com/2020/07/29/podcasts/the-daily/china-trump-foreign-policy.html?rref=vanity

 内容としては、NYの病院において実際に起きた不条理を追求した調査報道です。ごく簡単に内容を抜粋します。

・公立病院はメディケアを受けている高齢者層、無保険者を含む低所得層、市立病院は富裕層が利用しており、元々、スタッフの数や設備の整い方、先進医療や実験的治療を受けられるか否か、等で違いがあった。

・今回のパンデミックでは、スタッフの数の違いが治療の質に大きな差異をもたらした。たとえば、Emergency Roomにおいて、私立病院では一人の看護師が67人の患者を担当したのに対し、公立病院では、一人の看護師が1020人の患者を診なければならなかった。

・公立病院は、突然、容態が急変する患者や、転倒事故などに対応しきれなかったし、proningと呼ばれていた、56人の人手が必要な患者の呼吸を助ける療法が(私立病院では頻繁に使われていた)公立病院ではなかなかできなかった。公立病院の中には、致死率3倍となった病院もある。

・公立病院と私立病院との間の強力システムが確立されておらず、また、利益を上げるという観点からも、公立病院から 私立病院への患者受け入れが進まず、結局、公立病院から私立立病院に移送された患者数は50人以下にすぎない。

・連邦政府や州の肝いりで新たに作られたNational Epicenterも、不要不急の官僚主義(大量の書類を医師らに作成させたり、オンラインの使い方のトレーニングに時間を割いたり等)があったり、厳しい患者受け入れ制限があったり、救急車と各病院との契約のために、患者を直接Epicenterに受け入れることができない仕組みになっていたり等の原因で機能せず、たった79人の患者しか受け入れられなかった。






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Last updated  2020.08.06 05:39:50



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