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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2021.05.28
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カテゴリ:読書日記
Kindle Unlimitedという、月額980円で、電子本読み放題というサービスを利用して、手当たり次第に洋書を読む時間が、どんなに忙しい時も、そして、たとえどんなにわずかな時間でも、心を潤わせてくれます。

その中で、最近出逢った一冊が、1845年に書かれた件名の本です。アメリカで奴隷として生まれた後、転売先の女性主人が短期間ではあったものの文字を教えてくれたという偶然のきっかけとご本人の凄まじい努力で文字を覚え、後に、奴隷制廃止運動活動家として有名になったフレデリック・ダグラス氏の自伝です。

大長編なので、まだ全部は読めていないのですが、元奴隷で、虐げられた弱者が、自らの言葉で書く悲惨な現実に、息を呑むというか、恐怖で凍ります。白人の視点からじゃない、後から時代を俯瞰した歴史家の視点じゃない、虐げられて、踏みつけられて、人間の尊厳をすべて奪われた当事者の視点から見る奴隷制度はここまで過酷なものだったとは。同じ出来事を言葉に残すにも、どの立場の人が残したかで,読む側の印象は大きく変わります。言葉は、マイノリティや抑圧された側にとってこそ武器になることを実感しました。でもだからこそ、権力を掌握する側は、抑圧される側に、文字を教えない、与えない。奴隷制においても、奴隷に読み書きや教育を与えることは厳しく禁止されていました。世界中で繰り返されてきた、言葉を奪い、言葉を抑圧する歴史が何故実践されてきたか、彼の自伝が1つの答えだと思いました。

奴隷所有者による、奴隷が血飛沫を上げるのを見たいためのリンチ、奴隷の子は奴隷所有者の所有物になるという法律に基づき、所有する奴隷を増やすために、女性の奴隷に対して毎夜繰り返されるレイプ、衣類が特に子供には配給されないために、ほとんど裸で過ごすしかなく、夜寒さに震えて穀物用の空袋にくるまって寝る日々、奴隷所有を正当化するキリスト教の教え(所有者、管理者の白人は、皮肉なことに、日に何度も祈りを捧げる信心深い人が多いかったようです)、本当に読んでいて胸が苦しくなります。
そういえば高校の時の世界史のH先生が、キリスト教が支配者にとって都合の良い理屈を正当化するために使われてきた歴史を、情熱溢れる口調で教えてくださいました。ふとあの時の教室の空気が甦ります。私はあの時ローマ時代にタイムスリップできました。

1845年に書かれたということも関係しているのか、すっと読みこなせる文体ではないものの、何故自分は奴隷に生まれてしまったのか、何故こんな不条理が許されるのか、心の底から湧き上がる怒りの叫びが、文章にほとばしっており、目に心に飛び込んできます。日本語の本も一言一句読むというよりは、なんだか良くわからなくても、前へ前へと読み進められる的な不思議な吸引力がある本に出逢うことがありますが、日本語の本だけじゃなくて、英語でもこんな体験ができるんだということに自分で感動しました。

本物の言葉は、古くても言葉の壁を超えてでも迫ってくるのだと痛いほど感じました。
これからも沢山、本物の言葉に触れていきたいです。





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Last updated  2021.05.29 05:21:03



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