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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2021.08.07
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カテゴリ:留学
 この度、大学、大学院時代の指導教官である後藤昭先生(一橋大学・青山学院大学名誉教授)の古希をお祝いする論文集​「裁判員時代の刑事証拠法」​に、「米国陪審裁判における非経済的損害の算定」と題する論文を寄稿させて頂きました。




  後藤先生のご専攻は刑事訴訟法、本の題名も「裁判員時代の刑事証拠法」ですので、21名の執筆者のうち、私以外の20名は、刑事司法の第一線でキラキラと頑張っていらっしゃる研究者や弁護士の方々という状況の中、刑事証拠法はひとかけらも出てこない、米国陪審裁判の非経済的損害の在り方がテーマの、一実務家にすぎない私の論文が入ってしまって良いのだろうか、という引け目があるのは事実ですが、貴重な機会を頂いたことを、素直に心から嬉しく思います。後藤先生はじめ、編集者の先生方、出版社の担当者の方々の多大なご尽力に、一寄稿者として、心から感謝申し上げます。

 論文は、UIUCのロースクールで受講したCivil Procedure(民事訴訟法)の講義中に紹介された実際に発生した交通事故事案に接したことがきっかけで、米国陪審裁判の非経済的損害(日本の精神的損害と近い概念ですが完全に一緒ではありません)の算定の在り方に非常に驚き、その驚きを何とか言葉に残したい一心で、書きました。

​ この事案に関しては、留学中、原発事故に興味があるという共通項で専門分野が違う学生が集まって定期的に開催していた研究会、Nuclear ENGR and LAW Seminarで、​報告​をしており、この報告が、本当に思いがけず、今回の論文の下書きに結果的になりました。何がどう繋がり発展していくか分からないところが、学びの海の醍醐味ですね!私のよく整理されていない報告を受けて、コメントをして下さった研究会メンバーに大感謝です。

 ただ、仲間うちにとりあえず伝えたいというレベルの大雑把な箇条書きを作るのと、論理がきちんと流れる文章を作ることは全く違う作業で、ちゃんと論理が流れる骨子を作るだけで(流れていないかも・・・)想像以上に難しく、帰国後は、研究ではなく仕事を最優先にせざるを得ないこともあり、とにかく苦労しました。一方で、自分の考えを、依頼者を背負うことなく、自分の言葉にしていくというのは何と面白く楽しいことなのだろう、という人生で初めて感じる喜びも味わいました。そう、目の前の誰かを守るために数限りなく書いてきた書面と異なり、論文は自分の考えを書くためのものなのです!全部自己責任の孤独さと苦しさはあっても、学ぶ喜び、成長する喜びをダイレクトに感じました。

 とはいえ、論文を書くのは初めてだったので、とにかく不安で仕方なく、何人かの信頼できる方に、事前に草稿を見て頂き、ご意見を頂きました。特に、留学前から心からご尊敬申し上げ、折に触れて的確なアドバイスを頂いている中村多美子弁護士には、本質的な指摘を多数頂き、論文の中身を根本から見直すきっかけになりました(直っているかどうか分かりませんが(^_^;)。多美子先生のような素敵な姿勢を私もいつも持っていたいと強く憧れます、本当にありがとうございました!

 いざ活字になってみると、色々と見直したいところもありますし、まだまだ考えなければならないことばかりだなと思いますが、せっかくなので、末尾に論文の項目と、最後の「日本の精神的損害賠償算定実務への問題意識」の項目のごく簡単な骨子だけ、ご紹介しておきますね~。
 
 論文本体を読んで頂いたり、ご感想・ご意見を頂けたりしたら、本当に嬉しくありがたく存じますので、万が一読んでみたいな、という方がいらしたら、是非お手にとってご覧下さい。申し訳ないことに、まだまったく他の執筆者の方々の論文を読めていないのですが、執筆陣からしてキラキラの内容と思われます!

 さいごに、後藤昭先生、古希をお迎えになること、心よりお祝い申し上げます。
 この度は貴重な機会を頂き、本当にありがとうございました。どうぞ、いつまでもお元気でいらして下さい。そして、今後ともどうぞご指導下さい。

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米国陪審裁判における非経済的損害の算定

1 はじめに
2 米国司法における非経済的損害の枠組み
3 一般的な非経済的損害の種類
4 イリノイ州で実際に起きた交通事故の実例紹介
5 米国における非経済的損害の算定の特徴
6 日本の精神的損害算定実務への問題意識
 
 日本における精神的損害の算定においては、交通事故における赤い本、福島事故における中間指針のように、費目、金額が詳細に定められた基準が、立法手続きも司法手続きも経ていない参考基準であるにもかかわらず、司法の場においてすら、絶大な影響力を持っている実態がある。基準の法的性質につき、以下述べる視点から突き詰めて考える必要がある。

 第一に、詳細な基準の設定は、事案の個性を没却してしまう危険性があるということを常に意識しなければならない。
 第二に、仮に基準を設けることが、損害賠償実務を効率的及び公平に進めるために必要な場合があるとしても、基準には、正統性がなければならない。
 第三に、仮に参考となる行政基準があったとしても、事案の個性に応じた非経済的損害の算定がなされるよう、基準にあてはまらない、もしくは、基準に満足していない人が、不服を申し立て、相当因果関係のある損害を主張していく中で、基準を修正していく司法手続きがきちんと整備されていなければならない。
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Last updated  2021.08.07 10:08:02
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