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カテゴリ:弁護士業務
3連休中に、大切に録画していた、敬愛する木谷明先生のインタビューを中心とした「それでも、信じる負け続ける元裁判官」(NHK Eテレ)を拝聴できました。
私の感想に代えて、木谷先生にお送りしたメールを若干の修正を加えて、ここでもご紹介させて頂きます。見逃し配信もあるようですので、沢山の方々に見て頂きたいと心から思います。 今日も私も自分の持ち場で全力を尽くしたいと思います。 ***************** 木谷明先生 大変遅まきながら、3連休中に、ようやく録画しておりました先生の特集番組を拝聴することができました。 一言で申し上げると、先生のご発言やまなざしに、心が清い水で洗われ、真っ白な初心が自分の中からむくむく湧いてくるような、私にとって、今後、実務法曹として生きていくためのエネルギーを得ることができた番組でした。 84歳になられるというのに、先生の感性の瑞々しさ、しなやさか、鋭さ、まっすぐさ、優しさ、強さが、深いまなざし、ひとつひとつのご発言、ご紹介下さった判決や準備書面の一節に溢れ出ている感じがしまして、文字通り心打たれました。 樋口勝裁判長の下でお仕えされた1年3ヶ月が、先生にとっていかに大きなことだったか、ご著書で拝読していたものの、びっしり添削の入った(恐れ多くも木谷先生の下書きよりも添削部分の方が多かったような・・・本当にびっしりでしたね!)古い黄ばんだ起案を今も大切に保管されていることや、殺しのカツ等という物騒なあだ名を語られる際の懐かしそうな先生の表情から、ものすごく伝わってきて、樋口裁判官の素晴らしさと同時に、先生の常に原点を忘れない初心を大切にされる姿勢にも非常に感銘を受けました。 裁判官が本気で聞くこと、人間と人間として真摯に対峙すること、名前で呼びかけること等の先生の一貫して大切にされてきた姿勢が、当の被告人の側にも伝わっているのだということが、10数回も裁判を受けてきたという元暴力団組員の被告人のインタビューでよく分かりました。 「木谷さんは、他の裁判官と全然違った、私の顔から目を離さない、嫌になるくらい目が合う、ほんまに真剣に聴いてくれている、わかりますやん、そういうの」 という言葉を聞いて、気付くと涙が止まらなくなっていました。 あんなに一生懸命に自分に接してくれた人を決して裏切れない、約束を守る、そう思って生きてきた彼にとって、法廷で出会った先生が、人生の支柱であり続けてきたのだなあと思いました。 真実を知っているのは法廷の中で被告人のみなのに、それを裁く裁判官というのは恐ろしい仕事、そう仰る先生の、人間の尊厳に対する畏敬の念、自らの職分に対する謙虚な姿勢は、すべての技術以前に、実務法曹にとって必要不可欠な心構えであって、人間を扱う仕事の弁護士も常に持っていなければならないものだと改めて身が引き締まる思いが致しました。 訓示の中ではなく、審理の中で真摯な姿勢を伝えていかないと、訓示だけ凝っても意味がない、というくだりは、本当に頷けました。私たちは、言葉を扱い、言葉を練り、武器とする仕事ですが、その言葉に、真心がこもっていない限り、どれほど美しい言葉でも、人の心には決して入っていかないし届かないけれど、素朴な言葉であっても、そこに心があれば響くし届くのですよね。言葉が本来的に持つ力を発揮させるために必要な真心は、言葉の担い手こそが大事にすべきことなのだと思いますし、決して傲慢になってはいけないところだと思います。 登るのが好き、光が余り見えない中でも、登るのは好き、という何気ないご発言も先生の生きる姿勢と重なるところがあったので、きっと、NHKの担当者も冒頭と最後に引用したのではないでしょうか。素晴らしい番組構成だったと思いますし、それだけ、担当者が先生のお人柄に魅了されたのだと確信しました。 3連休が終わり、新たな週が始まりますが、先生に清らかに洗って頂いた心を携えて、今日も、守りたい誰かのためにも自分の成長のためにも、全身全霊で過ごしていきたいと思います。 本当にありがとうございました。
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Last updated
2021.09.21 11:31:23
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