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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2022.03.10
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カテゴリ:弁護士業務
2/25に始まった、ロシアによるウクライナ侵攻には、現在進行形で、ずっと衝撃を受け続けている。
第二次世界大戦のきっかけになった、ドイツによるポーランド侵攻に居合わせた時代の人々の緊迫した気持ちを、自分が体験することになるとは夢にも思わなかったし、今でも、夢であって欲しいと切実に思う。映像で見るウクライナの状況は地獄そのものだ。罪なき人々が泣いているのを見るのは辛すぎる。

 この二週間弱、様々な情報に接し、様々なことを考えたが、何かしらのまとまった考えが明確になっているわけではない。それでも、私がランダムに感じてきたことが消えてしまわないうちに、言葉でつなぎ止めておきたい。

1,フラッシュバック

 今回の映像を見て、東日本大震災&原発事故が起きた際の、何もかもが流され、沢山の方々がお亡くなりになったり行方不明になったりした上に、原発事故により地域から人がいなくなってしまう事態に至った時と、同じレベルの喪失感、無力感を感じた。この時期は、毎年辛いのに。「その土地に人が住んでいる」という前提がなくなっていく中での法の支配は、語るのも実践するのも非常に難しい。でも、不可能ではない。それが私の11年間だった。そう考えて、意識して自分を励ましている。 

2,正確な情報の大切さ

 ただ、さすがに、チェルノブイリ原発をロシア軍掌握というニュースを目にしたときは恐怖がピークに達し、目の前が真っ暗になってしまったが、客観的な情報を、UIUC留学時代のお勉強仲間で原子力工学者の櫻原達也さんから提供頂き、少しだけほっとした。正確な情報は、生きていく上でのインフラだと、パンデミック以来思うようになっており、今回も実感したので、今後も、できるだけ正確な情報を意識して冷静に取得したいと思う。

3,個人と国家の区別

 加熱するロシア、ベラルーシに対する経済制裁、非難の声をもっともだと認識しつつも、そのことと、両国の国民一人一人がどのように考えているかは別問題だということは、抽象的には常に思ってきた。ロシア人やロシア料理店への嫌がらせは恥ずべきことだ。
 ただ、やはり、そこに生身の人間をあてはめたときに、この抽象的思考は確信に達することを体感できたので、私の個人的なレベルでの体験をご紹介したい。

 UIUCの私の同級生にも、ロシア出身のセーラ(仮名)と、ベラルーシ出身のエミリー(仮名)がいた。セーラもエミリーも、優秀、英語も上手、努力家で勉強熱心で、尊敬する勉強仲間だった。今は、二人ともアメリカにいる。
 ロースクールのイベントで、スケート場を貸し切って、皆でスケートをした時に、アフリカ出身の子が、余りにも滑れなかったので、セーラと一緒に両側からその子を支えながら滑った思い出が蘇った。このとき撮影した写真は全員笑顔満開だ。
 エミリーは、私が原発事故賠償を研究テーマにしていると知ると、元々思慮深い目の色がすっと深くなった。強い関心を示してくれ、勉強会にも参加してくれた。チェルノブイリ事故が他人事じゃない地域で生まれ育ったからだろう。

 今回の侵攻を受け、2人が、ロシア、ベラルーシの出身であるということと、2人がどういう考え方を持っているかは別問題だ、そう思って、ふとFBのプロフィール写真を見たら、二人とも、写真にウクライナ国旗をあしらっていた。そうか、これが二人の意思なんだと分かって、ちょっと胸が一杯になった。セーラは、プロフィール欄に、Lawyer, global citizenと書いていた。そうなんだよね、私たちは、法律家だし、国籍の前に、地球の市民だ。

「とってもデリケートな話なのにごめんね、でも、私は、ウクライナの人だけじゃなくて、ロシアやベラルーシで苦しんでいる人達のことを案じてきたから、あなたの写真見て、すごいなって思った。これからも法の支配の価値を大事にする仲間でいようね」的なメッセージを送ったら、昨日、セーラから、「気付いてくれてありがとう、独立国への侵攻を正当化する根拠なんて皆無だし、妄想に取り憑かれて世界とロシアを危機に陥れているプーチンに私は怒っているの」という感じのメッセージが返ってきた。

 そう、出身国やどの組織に属しているかと、個人の信条は、冷静に分けて考えなければいけない。私だって、「日本人だから」「弁護士だから」ということで、特定の考え方に与していると決めつけられては困る。これは、個人の尊厳の基盤となる大切な区別だと感じる。

 その意味で、兵庫県弁護士会が、ウクライナ侵攻後早々に、ロシアの市民へのエール、行き過ぎたナショナリズムへの警戒に言及した​会長談話​を出されたことに感銘を受けた(勝手ながら英訳をお手伝いさせて頂きました、貴重な機会をありがとうございます、いつも私の英訳を支えて下さるDaniel Young弁護士にも感謝です)。このようなメッセージが一人でも多くの人に伝わっていくことを願う。
 

4,一色に染まらないことを意識する

 数日前に、ご家族にベトナム出身の方がいらっしゃる知り合いのママ友達と、ばったり会って、ちょっと立ち話。鋭い感性を持ち、頭が良い彼女は、話すと楽しく、いつもはっとさせられる。「今回ね、ベトナムは、国連のロシアの非難決議に棄権したの。ベトナムの歴史、立ち位置、戦略、色んなところからその選択なんだなって思った」と仰っていて、はっとした。棄権した国の選択の意味、私は、全く深く考えていなかったので。
 また、彼女は、こうも言っていた。「今回、世界中が、注目しているじゃない?でも、これくらいのレベルの酷いこと、ミャンマーやアフガンでも起きていて今もまだ全然解決していないけど、世界的には無視されているじゃない。何故このニュースが別格に注目を集めるのかって、ちょっとうがった思考かもしれないけど、考えちゃった」・・・鋭い。

 世間が盛り上がっている時こそ、一色に染まらない強さ、芯となる自分の思考を冷静に保っていたいと感じた立ち話だった。

5,今一度、「法の支配」を考える

 第二次世界大戦のきっかけと似ているとはいえ、第二次世界大戦の際にはなかった仕組みが、国際連合含め、様々動いている。

 今朝見た、ドイツの通信社が配信した​ニュース​もその一例と思う。

 現在、ウクライナが、ロシアの侵攻を直ちに差し止める差し止め命令、injunction の申立てをオランダハーグの国際司法裁判所International Court of Justice (ICJ)にしているそうだ。
 ただ、そもそも、当事者両国が、ICJが管轄権を持っていることを認めない限り、判決が拘束力を持たない仕組みになっており、一方当事者のロシアはICJの管轄権を承認していないので、判決が出ても拘束力がないという。
 さらに、ロシアが聴聞手続を欠席していることに加え、進行中の戦争行為に差止命令が出されるかどうかも分からず、仮に、差止命令があっても上記のように実効性が担保されないと思われること、からなかなか厳しい道のようで、専門家は、この裁判所の命令で戦争が止まる可能性はゼロと言っているそうだ。

 それとは別に、国際刑事裁判所International Criminal Court (ICC)は、ロシアの戦争犯罪の審理を進めているところだとのこと。ICJは国と国の紛争を管轄する裁判所だが、ICCは個々人に対する戦争犯罪war crime を管轄するという違いがある。ただ、ICCの審理は、通常、数年単位で掛かっており、未だ2014年のクリミア侵攻のケースが終わっていないため、これまた実効性に疑問があるようだ。
 
 それでも、ICJ、ICCの各裁判所を利用する意味はウクライナにはあって、国際世論に訴え、ロシアの侵攻が法的にも正当化されないものだというお墨付きを得て、ロシアに、最大限の圧力をかけることにあるらしい。

 記事を読んだ限りでも、国際司法裁判所、国際刑事裁判所、双方に、様々改善点はあるのだろうし、完璧なシステムではないだろうし、よりよい世界への貢献度も不透明だ。ただ、それでも、司法の役割、機能が何だろうかと考える上で、非常に興味深いニュースだった。

 この時代に居合わせてしまった法律家の責任は、何なのか、法の支配の価値とは何か、いつも考えながら生きていきたいと思う。
 この間、考えてきたことを駆け足で書いてきて、少しだけ、心が整えられた。今日も自分の責任を果たしていこうと思う。





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Last updated  2022.03.11 05:07:27
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