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弁護士YA日記

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アメリカニュースメモ

2021.09.18
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​連邦最高裁のClarence Thomas裁判官が、招かれた大学での講演で、近年、連邦最高裁に向けられている批判に反論したそうです。

https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/justice-clarence-thomas/2021/09/16/d2ddc1ba-1714-11ec-a5e5-ceecb895922f_story.html

近年の批判、といっても、色々あるようですが、おそらく一番大きな批判は、二極化した政治状況を反映して、最高裁判所の判断も、法的解釈というよりは個々の裁判官の政治的信条がどこにあるかで左右されているのではないか、というものだと思われます。

Thomas裁判官は、この批判に対して、明確に、裁判官は個人的好みに基づいて判断することなどないし、望む結果が得られない時に、メディアが、政治的信条のせいであるかのように報道することは、法制度への信頼を危うくしてしまう危険がある、望む時に望む結果が得られないから司法機関そのものを破壊しようという動きの危険性(destroying our institutions because they don't give us what we want, when we want)を警告したそうです。

この辺は、バイデン政権が、有名なGinsburg裁判官死亡後に、最高裁判所の裁判官数を増やすことを検討する委員会を設立したことも念頭に置いているのではないか、と記事にありました。

Thomas裁判官だけでなく、Breyer裁判官、最も最近任命されたBarrett裁判官も、それぞれの講演で、それぞれの言い方で、裁判所、裁判官の独立を擁護していたことがニュースになっていたので注目していたのですが、9人しかいない最高裁の裁判官から、3人続けて、このような意見表明が出てくるというのは、それだけ、裁判官達の危機感が強いのだろうと感じます。

最高裁の裁判官が誰になるかが連日のトップニュースになるアメリカで、個々の裁判官が、自分の職務に集中する環境を整えるのは、ただでさえ、元々本当に大変なことなのだと思いますが、確かに、近年の政治状況の二極化は、他国民の目から見ても驚くしかないレベルになってきているので、その中で、司法の位置付け、司法の役割に対して根本的な不信感が醸成されることは、絶対に避けたいということなのだと思います。

私も、個人的にこういう言論に触れて心からほっとします。以前、法律家ではないお勉強仲間に、広島地裁の黒い雨判決の評価をめぐって、法律家に求められる能力について、下記のようにコメントしたことがあります。少し長いのですが、私が、Thomas裁判官の仰っていることに非常に安堵した理由の説明になるかなと思い、貼り付けますね。

裁判官一人一人は、憲法上、独立した地位を持っているので、裁判官によって考え方や価値観が違うことは当然の前提です。
ただ、その自由裁量も、当然、「司法」である以上、法律には従わなければいけないわけです。これはどういうことかというと、自分の出した判決が法律の解釈の範囲内にあるということを、説得的に文章で説明しなければなりません。裁判官個人がどのような価値観や心情を持っているかはともかくとして、この文章が論理的に説得的であることが、法曹に求められる能力ということになります。

余談ですが、弁護士も、自分の思想信条にクライアントの要望が一致しているかどうかで仕事をしているわけではありません。クライアントの要望が、誰が見ても自明な法的解釈でストレートに流れれば良いのですが、そうではないケースでも、法律の趣旨に遡って、こう解釈すべきだ、こう当てはめるべきだみたいなことを、いかに説得的に論理を流すかが、大事な能力になります。
 
その意味で、今回の判決は、法律の趣旨がこうだから、文言はこう解釈すべきだ、そして、その文言を適用するための基準はこうあるべきだ、そこを具体的にあてはめていくと、今回の原告は救済対象になる、と論理を流しており、その論理の流れがよどみなく説得的だと私は思ったので、王道的司法判断とコメントした次第です。

仮に、裁判官が、「原告が高齢でかわいそうだから救済してあげるべきだ」みたいな理由で勝訴判決を書いても、結果が望み通りとはいえ、さすがに国の控訴のやむなしでしょ、と思ってしまうと思います。
 
Thomas裁判官は、それ以外にも、色々なことをお話しくださったようで、代理人の法廷での口頭弁論に心動かされて判断が変わったことは、ほぼまったくない、と答えて、会場の笑いを誘い、やはり、口頭弁論以前に提出されている書面の質が決定的と述べたそうです。
この辺は、国を超えて分かりますね。分かりやすい文章で説得的に論理を流しつつ当該事案のあるべき結論を示す書面を提出することは、実務家の基本スキルです。

日本の最高裁裁判官は、どんな考え方をしているのでしょうね。
退官された方のインタビューなどは本当に貴重ですが、現役の裁判官の声も聞いてみたいな、等と、こういう報道を見ると感じた私でした。






Last updated  2021.09.18 07:58:38


2021.09.10
​この一ヶ月ほど、アフガニスタン情勢ニュースに釘付けでした。

20年続いた長い戦争が残したものは何だったのか、当事者国であるアメリカにおける議論は本当に多種多様です。また折を見て、記事にしたいと思いますが、私が一番気になったのは、アフガニスタン駐留を検証するアメリカ国内の第三者機関​SIGAR​(Special Inspector General for Afghanistan Reconstruction)の​What we need to learnと題する報告書​に、アフガニスタンの文化を理解していなかったという文脈で、imposed formal rule of law on a country that addressed 80 to 90 percent of its disputes through informal means、つまり、80~90%の紛争が非公式な方法で解決される国に法の支配を押しつけた、という指摘があることです。法の支配という言葉に特別の感慨を持ってしまう私としては、この一節は非常に気になりました。

ただ、まだ私の思考もまとまっていないのですが、法の支配は、一人一人を尊重する個人の尊厳の上にしか成り立たない概念であるはずで、法の支配を唱える国は、個人の尊厳を守らなくてはいけない筈だと思うのですね。でも、アメリカは、本当にアフガニスタンにおいて個人の尊厳を大事にしていたのだろうか、と個人的には疑問に思います。待避計画中に実行されたISISによる自爆テロの報復として、子供を含む民間人を誤爆して殺害したのに、きちんと謝りもしない、というアメリカの態度を見て、私としては、法の支配を振りかざす資格があるのだろうか、といったどうしようもない違和感を感じました。

もう少し考えてみたいと思いますが、ぼんやり考えていることが逃げていかないうちに書き留めておきます。

さて、今日は別の話題です。
既に日本でも大きく報道されていますが、テキサス州が、妊娠6週間以上の妊婦の中絶を例外なしで一律禁止する法律を制定し、差し止め命令が連邦最高裁で認められなかったため(5対4)、8月末で発効しました。加えて、​以前にもお伝えした通り​、一般市民が中絶に関わったクリニック等を訴えて報奨金を得ることができるという法律も併せて施行されたため、現在、テキサスでは、該当する中絶手術を実施することは、違法かつ一般市民から訴えられるという多大なリスクを負うことになってしまっているようです。

妊娠の原因も問わず、妊娠したかどうかも分からない時期以降の中絶を一律禁止とは、余りにも厳しすぎる規制のように思われますが、この立法に、バイデン政権はカンカン、この度、司法省がテキサス州を被告として訴訟提起したそうです。

https://www.nytimes.com/2021/09/09/us/politics/texas-abortion-law-justice-department-lawsuit.html

ガーランド司法長官は、中絶するかどうかを決める憲法上保障されている権利をテキサス州は侵害していると指摘した上で、次の通り、司法省は、合衆国憲法を遵守し、法の支配を貫徹する義務があり、その義務を果たすためにこの訴訟を提起した、と記者会見で述べたそうです。こういう言い回しを司法長官がするということが、良くも悪くも凄くアメリカっぽいですよね。

“The Department of Justice has a duty to defend the Constitution of the United States, and to uphold the rule of law,” Mr. Garland said in a news conference at the Justice Department. “Today we fulfill that duty,” he said of the lawsuit.

ただ、トランプ政権時代に、最高裁はじめ連邦裁判所に、共和党の裁判官が多数任命されたことから、政権側の主張が簡単に認められることは期待できず、今回の訴訟が少なくともすぐに決着することはないだろうというのが識者の見立てのようです。
留学中、裁判官にお会いすると、「共和党です」「民主党です」と自らご紹介下さることが多くて、まさにカルチャーショックだったのですが、党派制と司法は、思った以上に深く結びついていますね。

連邦が、連邦憲法違反を根拠に、州を被告として訴訟提起する、という構造の訴訟、興味深いです。今後も注目していきたいと思います。






Last updated  2021.09.10 06:25:23
2021.08.14
先日、インディアナ大学が学生に対してワクチン接種を義務付けた措置を不満をする学生8人が、憲法違反として大学を訴えた事案において、連邦地裁が、大学側の措置を合憲と判断したことを​お伝えしました​が、この度、連邦最高裁でも、地裁判断が維持される決定が出たそうです。

https://www.nytimes.com/2021/08/12/us/supreme-court-indiana-university-covid-vaccine-mandate.html

地裁判断が出たのが7月18日で、​高裁判断​が8月2日、この度の最高裁の判断が8月12日ですから、一ヶ月も経たないうちに確定したというわけです。早いですね!

高裁は、1905年の天然痘ワクチン接種を義務付けた最高裁判例、​Jacobson v. Massachusetts​を引用して、天然痘ワクチンは、例外が一切認められない義務付けだったものの、インディアナ大学のCovid19ワクチンの場合、宗教上健康上の理由で接種しない自由を認めているし、そもそも大学には出席条件を設定する権限があるとして原告の訴えを退けたようです。

最高裁は、理由なし決定のようですが、理由を伏さないのは、​emergency applications​が申し立てられた際の最高裁の慣習だとありますね。emergency applicationsの適切な和訳が分からないものの、39ページに及ぶ長大な文書に、原告側代理人の本気度を感じます。

それにしても、このように、主要な書面や判決が、全部オンラインで公開されているのは、本当に便利です。
裁判の公開の本質は、単純に物理的に裁判所で誰でも傍聴できるということだけではなくて、手続の過程が公開されているということなんじゃないかなって思いますね。

変異株の蔓延で、またも感染爆発が懸念されるアメリカにおいて、ワクチン接種義務付けの動きはどんどん加速していくと思われますが、そこに司法がどう関わっていくのか、注目していきたいと思います。






Last updated  2021.08.14 05:55:10
2021.08.03
パンデミック下、誰もが使うようになったオンラインミーティングサービスのZoomですが、この程、"Zoombombing"と呼ばれるオンラインミーティング中に、ハッカーが侵入し、ポルノ画像や人種差別的なメッセージが流す、といった現象を許し、利用者のプライバシーを侵害したことでクラスアクションを起こされ、この程8500万ドル規模の和解に応じることになったそうです。

https://www.nytimes.com/2021/08/01/technology/zoom-lawsuit-zoombombing.html?referringSource=articleShare

和解の内容は、Zoomの契約者は契約料の15%相当額の払い戻し、もしくは、25ドルのどちらか大きい方の金額、その他のユーザーは15ドルまでの払い戻しがあるという内容だそうで、一人一人の契約者が受け取る金額は少ないですが、Zoomの契約者数、まして、ユーザー数を考えると、総額8,500万ドルに達するのも納得ですね。
また、Zoomは、Zoom利用者が会議中に他の会社のアプリを使用した際に(プライバシー流出リスクの)警告メッセージを流したり、従業員にプライバシーとデータ処理に関する研修を行っていくことも約束したそうです。

私はZoomユーザーですが、"Zoombombing"のことは、この記事を読んで初めて知りました。
そんなことがあったのですね!
ただ、もっと詳しい和解内容を見てみないと分かりませんが、このニュースを見る限りでは、アメリカ国民限定とは書いていないので、もしかすると、私も払い戻しの対象者なのかもしれない、とちょっとドキドキワクワクしております(笑)。

原告ではない人が、和解の結果を享受することができるのは、この訴訟がクラスアクションだからです。クラスアクションは、共通点を持つ一定範囲の人々を代表して、一人又は数名の者が、全員のために原告として訴えまたは被告として訴えられるとする訴訟形態(田中英夫編 英米法辞典)で、厳格な成立要件がありますが、権利侵害を自覚していなかった人も一挙に救われ、訴えられた被告にとっても、勿論、大変ではありますが、五月雨式に乱立する訴訟に対応していくよりは、一括対応で、解決できるというメリットがあります。

今回は、2020年春の時点で提起されていた14のクラスアクションが、カリフォルニアにある連邦地方裁判所に統合され1つの手続になったとのことです。この訴訟の統合もスケールが大きいですね。どうやってこんな大規模な訴訟を、この短期間で審理していったのか、裁判所の訴訟指揮が気になるところです。

日本でも、たとえば、「消費者の財産的被害の集団的な回復のため の民事の裁判手続の特例に関する法律」に基づく「共通義務訴訟」(医学部入試における女性差別対策弁護団がこの手続を利用されており、敬愛する佐藤倫子弁護士が詳しく​こちらでご紹介下さっています​)があって、クラスアクションと理念や仕組みが近いような気がします。ただ、佐藤先生のご紹介を拝読する限り、慰謝料や旅費や宿泊費が含まれない等、対象となる債権がかなり限定されているのでしょうかね、この辺は、私ももっとちゃんと勉強しなければ!

まだまだ勉強しなければいけないことだらけですが、ちょっとずつでも、日々成長していきたいと思います。






Last updated  2021.08.03 05:48:54
2021.07.24
オハイオ州クリーブランドに拠点に置くメジャーリーグのチーム(MLB)のCleveland Indiansが、この程、名称変更し、Cleveland Guardiansに生まれ変わるそうです。

https://www.nytimes.com/2021/07/23/sports/baseball/cleveland-guardians.html?referringSource=articleShare

旧チーム名は、明らかに、Native Americanの差別用語を連想させるため、特にBLM(Black Lives Matter)運動が盛んになってから、抗議活動が勢いを増し、100年以上使用してきた名前を変更する決断をもたらしたようです。

こちらは、チーム名変更を報告する、Cleveland Indiansの​公式Twitter​です。地元に愛されてきたチームであることがよく分かります。

この決断には、賛否両論あるらしく、「否」のご意見の急先鋒が、前アメリカ大統領のトランプさんということで、なかなかに刺激的なご意見を​発表​されています。敢えて攻撃的な要素を省いて、言いたいことのエッセンスを要約すれば、少数の人々の意見が長年大切にされてきた文化や遺産を変えてしまうのはいかがないものか、といったところでしょうか。

今の価値観から見た評価が、当時の時代背景においては当然だったことを修正することが、どこまで許容されるかという議論自体は大いにあり得るところですし、歴史をどのように伝えていくか、記録に残していくか、ということは、世界中のあらゆる場所で難問となっていますよね。
私自身、世界史が好きなので、Kindle Unlimitedを利用して、歴史書や伝記を読むことが好きですが(英語だと全く知らなかった人の伝記や日本ではあまり紹介されていない国や地域の歴史に触れられます)、色々読めば読むほど、同じ出来事でも、どの視点から見るかによって、物事はまったく違って見えるんだなあと実感していて、面白くも難しくもあり、日々興味が尽きないところです。

それでも、私としては、アメリカ大陸の先住民族Native Americanの迫害の歴史を踏まえると、ここまであからさまなチーム名を変更する決断には、賛成です。

このような動きは、全米各地であるようで、どんな議論が展開されていくのか、今後も注目していきたいと思います。






Last updated  2021.07.24 20:52:12
2021.07.23
以前にも、​NY州と製薬会社(Johnson and Johnson, J.&J.)との間の和解成立​をお伝えしたオピノイド訴訟ですが、この程、製薬会社(J.&J.)及び大手販売会社3社(Cardinal Health,AmerisourceBrrgan,McKesson)と大半の州との間で、総額260億ドル規模の和解が成立間近な情勢になりました。

https://www.nytimes.com/2021/07/21/health/opioids-distributors-settlement.html?referringSource=articleShare

鎮痛薬オピノイドは、中毒性が強く、過剰摂取が社会問題化しており、連邦政府のデータによれば、1999年以降の約20年で、合計50万人以上が過剰摂取や違法取引による摂取で死亡しているとのことです。

製薬会社は、鎮痛剤オピノイドの原料を供給し製品の中毒性を過小評価していた責任、販売会社は、処方薬の出荷量を監視すべき責任があったのに、野放図に蔓延させたことの責任が、それぞれ問われている訴訟です。

原告は州であり、公害(public nuisance)によるコミュニティ破壊を訴えていたため、和解金は、オピノイドを服用して依存症になる等した直接の被害者ではなく、薬物使用の教育システムや啓発教育、患者の治療等、州の薬物対策政策に使われることが予定されている他、製薬会社や販売業者とは独立した情報収集機関を設立し、流通量を監視するという政策が盛り込まれているそうです。

また、この和解が成立するのは、一定の割合以上の州が和解に合意した場合という条件付きで、その割合に達しない場合は、和解不成立で訴訟が続行します。大半の州が賛成するのではないかと見られていますが、ワシントン州は、生じた被害に見合う金額ではないと今回の和解には応じない姿勢を表明している他、Tribal Govermentというネイティブアメリカンの自治政府や複数の部族も今回の和解とは別枠組での交渉を継続中のようです。

和解に応じる州も、州内の自治体の参加率によって、和解金額の変動がある内容ということで、なるべく多くの自治体の同意をもらえないと、州に入る和解金も減少するという事情がある他、州によっては和解金がオピノイド対策に適切に使われるよう州法を制定することが必要だとのことです。

原告の多さ(州内の自治体も原告になっているため)、和解内容の複雑さ、和解金支払システムの複雑さ等から、合意は、数百頁にも及んでいるとのことで、「和解」という言葉で一般に想定する分量をはるかに超えています。

原告代理人らの報酬も、和解内容に含まれ、その複雑な内容を主導した評価なのでしょうか、総額20億ドル!だそうです。とはいえ、和解が成立しないと、この支払もなくなってしまうので、原告代理人としても何としても依頼者である州や自治体を説得するために必死に頑張ることになりそうです。

いつもながら、このような大規模不法行為における、和解のスケールの大きさ、ダイナミックさ、内容の複雑さには、本当に驚きます。裁判所が、司法権にとどまらず、立法権や行政権の機能まで果たしているような感覚がありますね。司法の役割、裁判所の役割、弁護士の役割、こういうニュースを目にすると、頭も心も沢山刺激されます。

実は、以前は、刺激された結果を、すぐに「じゃあ、日本はどうあるべきなの」とか具体化することまでできないと、実務家として駄目なのかなー、だからどうなの?どうしたいの?って聞かれたときに答えられないと意味がないのかなーって発信をためらうことがありました。日々立ち向かうべきことが溢れている即時即断していかなければならない日常の実務に関係ないことは、私の中に留めておけば良いことで、社会の役には立たないことかもしれないと。

でも、だんだん、そんなことはないんじゃないか、って何故か思うようになっている自分がいます。
何か明確な転機があったわけではないですが、そう考えると発信が楽になりました。
感じたこと、考えたことをなるべく新鮮なうちに言葉にしていくことは、私の人生の根幹です。
今後も、自分の興味関心のアンテナを鋭く活き活きと発動させ、また、それを言葉にしていきたいと思います。






Last updated  2021.07.23 06:31:44
2021.07.20
​​​インディアナ州の名門州立大学インディアナ大学では、宗教的理由、ワクチンに対するアレルギー、健康上の差し控えた方が良い理由等がある場合を除き、対面授業に参加する全学生にワクチン接種を義務づけているところ、このワクチン接種義務付は、学生らの自らの身体の保全と自律性を行使する権利を侵害するとの理由で、8人の学生が大学を訴えたそうです。

このほど、連邦地裁は、同義務付は、公衆衛生のための合理的な措置であり、合衆国憲法修正第14条のDue Process条項に違反しないとして、学生側の訴えを退けました。

https://www.nytimes.com/2021/07/19/us/indiana-university-vaccine-mandate-ruling.html

まず、大学が学生にワクチン接種を義務づけていることが、素直に興味深いです。ワクチン接種が簡単であることが前提にないと、義務づけという発想にならないと思われるからです。

背景事情として、アメリカでは、ワクチン接種を受けたいと思う人は気軽に無料で受けられる体制が整っており、ワクチン接種に関する最近のホットトピックは、ワクチン接種に懐疑的な人をいかに説得するか、という点です。強固なアンチワクチン派も当然いますが、黒人やヒスパニック系、低所得者層といった、マイノリティに属する人々が、歴史的な背景からワクチン接種に懐疑的であるという現実への対応が課題になっています。

次に、この義務付けにつき、学生が訴訟を起こす、裁判の場で権利主張するというのも、アメリカらしいと思いました。そういえば、一斉にオンライン授業になった際も、ハーバード大学でオンラインなら学費を返せという集団訴訟が起きていました。今どうなっているのかフォローできていないのですが、是非はともかくとしても、裁判が本当に身近に活用されていることを感じます。

そして、修正14条は、様々な訴訟で引用される条文なので、何度も目にする機会があるのですが、法律実務家的には、​判決​の、双方の主張を丁寧に整理し、双方の利益のバランスを取りながら、条文の趣旨に遡って結論に至るというプロセスが、当たり前なのですがとても親近感があって、興味深いです。下記は結論部分です。

Recognizing the significant liberty interest the students retain to refuse unwanted medical treatment, the Fourteenth Amendment ​permits​ Indiana University to pursue a reasonable and due process of vaccination in the legitimate interest of public health for its students, faculty, and staff. 

学生の望まない医療的な行為を拒否する自由は大変重要ではあるものの、修正第14条は、インディアナ大学が学生、教職員、およびスタッフの公衆衛生の正当な利益のために合理的かつ適正な予防接種プロセスを追求することを許容している。

抽象的な条文が、現実の問題を解決する上でどう機能するか、どう機能させるべきか、現実の仕事の中で、日々追求していきたいと思います。



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Last updated  2021.07.20 06:16:19
2021.07.10

テキサス州で、妊娠6ヶ月以降の中絶を実施したクリニック、医師、手助けをした人を、州当局が規制できなくする代わりに、一般市民が当該関係者を訴えることができ、違法な中絶と認定された場合は、原告となった市民が10000ドル(約100万円)の報奨金を得られる、とする法律が施行されるそうです。

https://www.nytimes.com/2021/07/09/us/abortion-law-regulations-texas.html?referringSource=articleShare

実際に被害を受けたわけではない市民に、不公正な商取引や虚偽情報を流布している企業を訴える権利を与えている州は確かにあるそうですが(例えばカリフォルニア州)、州が規制できないものを一般市民が事実上規制できるとする法律に基づき訴訟が行われるという形態は前例がなく、裁判所がどのようにこのようなケースを扱うかが注目されています。

背景事情としては、アメリカにおいて、中絶をする権利の有無は、宗教的信念と結びついて常に論争の的であり続けており、一般的に保守層は、中絶絶対反対、という考え方を持つ方が多いのですが、テキサス州は中絶反対運動が激しい州のひとつであるということのようです。

…率直にすごく萎縮効果のある法律だなあっていう気はしますね。テキサス州のクリニックはいつも見張られているような恐怖の中、日々の業務をしなければならないですものね。

弁護士的視点からは、この法律に対応していくための具体的方法が注目です。州の規制であれば、その規制が憲法違反かどうかという観点から争う法律構成が可能であったものの(そして現にこれまで中絶を実施したクリニックの代理人弁護士は、そのような戦略を取り、州裁判所ではなく、この種の訴訟の勝率が高い連邦裁判所に持ち込んで闘ってきたそうです)、敢えて州の規制を外されたことで、新たに導入される法律の問題性をどのような法律構成で争っていけば良いのか戦略が必要となり、クリニック側の代理人弁護士たちは対応を検討中という状況のようです。

このニュースには、州毎に異なる法律が適用される連邦制国家であること、州裁判所と連邦裁判所の特性の違い、依頼者を守るための弁護士の戦略の立て方等、多くの興味深いトピックが含まれていると思いました。今後どうなっていくのか注目していきたいです。







Last updated  2021.07.10 06:39:42
2021.07.02

アリゾナ州で新たに導入された2つの選挙規制(1、選挙管区を間違って記載した票は無効、2、家族や介護人、選管の公務員を除き、選挙運動家など他の人が、在宅で書いた票を投票所に集めて持ってくることの禁止)が、少数者の選挙にアクセスする権利を侵害しているのではないかと民主党が提訴していたケースで、連邦最高裁は、3人のリベラル派の裁判官が原告を支持したものの、6:3でアリゾナ州の導入した規制を維持すべき、原告敗訴と判示したそうです。

https://www.nytimes.com/2021/07/01/us/supreme-court-arizona-voting-restrictions.html?referringSource=articleShare

多数意見の核が、courts should strike down voting restrictions only when they impose substantial  burdens on minority voters that effectively block their ability to vote.(裁判所は、少数派の有権者に実質的な負担を課し、投票能力を効果的に妨げる場合にのみ、投票制限を撤廃すべき)というものなので、全米に多数係属中の選挙規制法に対する異議が認められる見通しがは相当に小さくなったというのが識者の評価のようです。

この種の選挙規制は、詐欺的な投票を防ぐ趣旨として説明されていますが、現実的には、しょっちゅう投票所の場所が変更される中で、ラテン系、アフリカ系、ネイティブアメリカン系のアメリカン人は、白人系アメリカ人よりも管区を書き間違えやすい傾向があったり、貧しかったり、障害があったりする人たちは、票を集めて届けてくれる人がいないと実際に投票することができない、などの現実的な問題があり、結局は、マイノリティの1票を無効にするための措置ではないかという点が批判されています。

アメリカの選挙規制をめぐる闘いは、国を二分する熱い論点になっていて、ずっとニュースのトップランナーです。民主主義の基本となる選挙権が、民主主義国家の代表格アメリカで激しく争われていることは、日本にとっても他人事ではないと思います。

なお、以前に、選挙権に関するドキュメンタリー番組をご紹介したことがあります。最高裁判決のニュースに触れてまた観たくなりました!

https://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/202101180000/

https://m.youtube.com/watch?v=t6jVGswLPd8







Last updated  2021.07.02 08:53:51
2021.06.30

以前から、気になるニュースを時折メモしたり、親しい友人たちにシェアしたりしていたのですが、ブログでもご紹介しようと思います。

私の主な関心事は、アメリカの大規模訴訟関連ですが、それ以外のことも私のアンテナに引っ掛かったら、触れるかもしれないです。

なお、感想部分はもちろん、内容に触れる部分も、文責はすべて私にあります。

まずは、最近引っ掛かった、大規模訴訟関連ニュース二つ。

1、オピノイド訴訟でNY州が製薬会社Johnson and Johnsonと和解

https://www.nytimes.com/2021/06/26/nyregion/johnson-johnson-opioid-lawsuit-new-york.html?referringSource=articleShare

オピノイドという鎮痛剤に、依存性があって、全米に依存症の患者が増えてしまったという問題で、製薬会社を被告に、全米に3000件以上の訴訟が係属中なのですが、この度、NY州を原告とする訴訟で、陪審裁判に行く直前に和解が成立し、製薬会社が約230億円を同州に払うことになったそうです。

州の請求理由が、我々のコミュニティを壊した、という理由だったこと、製薬会社側は激しく過失責任を争っていたこと、から、あくまでも広報のあり方やマーケティングの手法に問題があったというところでギリギリ折り合い、和解内容は、個々の患者への賠償ではなく、今起きている被害を和らげるための対策や、薬物教育など将来に被害を防止することに使われる名目であると共に、今後、製薬会社がNY州だけでなく全米でオピノイドを販売しないこと、などが盛り込まれたとのことです。

2、ノースカロライナ州が電子タバコメーカーJuulと和解

https://www.nytimes.com/2021/06/28/health/juul-vaping-settlement-north-carolina.html?referringSource=articleShare

ノースカロライナ州が、10代の若者に依存症を引き起こしたとして、電子タバコメーカーを訴えた事案で、被告側が約40億円を支払う和解が成立したそうです。和解の内容には、電子タバコ販売は、店頭ではなくカウンターで行うこと、オンライン販売時には第三者機関による年齢認証システムを導入すること、製品を取扱う各店舗に潜伏し年齢調査をする店員を配置して10代の若者への販売を防ぐこと、35歳以下のモデルを広告に使用することを禁止し、学校近くにはポスターを貼らないことなどが盛り込まれました。

同様の訴訟が、13州で係属しており、カリフォルニアでは、広域係属訴訟(Multi District Litigation,MDL)に統合され、原告を、1、中毒症状や肺疾患などの健康上の問題を訴えるグループ、2、中毒になるような恐れのある製品に対する多額の支払いの払い戻しを求めるグループ、3、学区や週内の郡(county)といったノースカロライナのような形態の賠償を求めるグループに分け、既に、原告らの証言供述書の取得を開始していて、2022年2月に陪審裁判に行くというスケジュールで進めているそうです。

(感想)

いずれのニュースも、州が原告になっています。そこがまず面白いです。州内部に訴訟の専門部署があるんですかね。賠償金を薬物教育のために使うとか、学校近くにポスター貼らないとかは、州が原告であることとも関連しているのでしょう。

和解内容も全般的に非常に興味深いです。判決も和解もそれぞれのメリットデメリットはありますが、内容の柔軟性は間違いなく和解の特性ですね。陪審裁判のリスクは特に被告にとって本当に大きいようで、陪審裁判に行く直前での和解というニュースは頻繁に目にします。

2、では、特殊な訴訟手続であるMDLにも触れられていますが、グループ分けの仕方は面白いと思いつつ、これほど多種多様な内容のケースを一つの手続で物理的にどのように進めるのだろう、この大規模訴訟の枠組みの中における少数者の主張はどのように守られるのだろうかと、興味が尽きません。







Last updated  2021.06.30 10:13:05
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