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カテゴリ:ガンダム:ネタ
ガンダムを出しに結局ガンダムと関係ない工学の話をするこのコーナー。
第1回にしておそらく最終回、今回のテーマは【人間工学】です。 まずは以下の引用をお読みになってください↓ 『取りたてて斬新さのないRX-178であったが、そのムーバブル・フレームは人間工学を 極め(ママ)、システムとしての剛性と柔軟性を兼ね備えた設計であることが判明した。』 (ガンダムウォーズII ミッションダブルゼータより) はい。この1文はおかしい部分があります。それが【人間工学】の用法。 この文だと、ムーバブル・フレームは“人体の運動に関する構造の学問を究めた” と読み取れますね。しかしこれは根本的に【人間工学】を間違って理解しているのです。 では【人間工学】どういった学問でしょうか。 『人間の身体的、心理的特性に適合した機械や器具を作ることで、操作性を向上させると ともに、作業者の負担軽減、作業効率および安全性を高めることを目的とする学問。 エルゴノミックス。』 (大辞泉より) 『human engineering 人間の身体的特性や精神的機能を研究し、それに適合した使いやすい機械を設計したり、 活動しやすい環境をつくったりするための学問。 』 (大辞林より) もうおわかりでしょう。ミッションダブルゼータの一文を読んで字の如く受け取るなら 『ガンダムMk-IIは乗り心地が良いMSだ』という意味の説明になってしまいます。 ではこの場合どういった学問体系と結びつけると適切な表現になるのかですが、 基本的には【生体工学】という語が最もそれらしいでしょう。 『生物のもつ機能や構造を解析し、それを人工的に再現して利用しようとする学問。』 (大辞林より) つづき ただ、今回のテーマは【ムーバブル・フレーム】では無く、あくまで【人間工学】なので 話をそちらに戻します。 【人間工学】という観点からMSをみてみると、いくつかそれに基づいて設計されている ものが浮かび上がります。MSと言えど乗り物ですから操縦者に極力負担をかけないに こしたことが無いからです。では具体的にはどの部分がそれに当てはまるのかを 概観していきましょう。 <全天周囲モニター> 人の方向感覚に基づき、空間的に全周囲を景色そのままに映し出すことによって、 自然体で目視が出来るモニターです。 たとえばパネル型モニターを前面に多数配置してしまうと、特に慣れていないと どのモニターがどこの景色を映しているのかがわかりにくく、瞬間的な迷いの原因と なってしまいます。全天周囲モニターならば普段の生活と同じ感覚でモニターを見れる ので、操縦者のストレスが軽減されます。ただし、人体の特性上、前面からの視界の範囲 に意識が集中しやすいというデメリットが生じます。後方モニターだけは別ディスプレイ で表示された方が便利な場合もあるでしょう。 <リニア・シート> シートそのものがアームに支えられ、半分宙に浮いている状態になっています。 アームが微妙な角度制御をすることによって、操縦者の平衡感覚を保てるような配慮が なされていると思われます。同時にダンパーの役目も果たしているのでしょう。 MSは車両よりもはるかに複雑な動きが可能ですが、裏を返すと操縦者に複雑なGを与えて しまいます。その軽減措置としてとらえてみると面白いですね。 ちなみに、【椅子】というのは人間の体に直接フィットするものであるため、【人間工学】 が適用されやすい道具です。特にマッサージチェアーなどは人間がリラックスできる形状 というのを追求するので、それ自体が【人間工学】的発想で設計されます。 <アーム・レイカー> 人の掌を自然体で乗せることが出来、更に少ないアクションで多くの操作が可能である 操縦桿です。スティック・レバー型よりもリラックスした体勢で操縦が出来るのが売りですが 実戦では手が滑りやすいというこれまた【人間工学】的発想からレバー型の操縦桿に 戻されてしまいました。 なお、手に持つもの、握るものというのはさりげなく【人間工学】に基づいて設計されて いるものが多いです。 例えばペン類。握りやすい太さ、手と指にフィットし易い“くびれ” があったりしますね。 親指以外の指部分が一体となっている手袋などはよく見れば人の掌をそのままかたどって いるのではなく、人差し指と親指の間は、蛙のヒレを思わせる一見余分に見える部分が あります。これなどはフィットさせすぎるとかえって布が親指の動きを拘束してしまうため、 あえて膨らみをもたせているわけです。 アーム・レイカーと非常に似通った思想で設計されているのがパソコンの“マウス”。 意識してマウスを握ってみてください。それが【人間工学】の極みですw あとは手すりやつり革、自転車やバイクのグリップなんかもそうですね。 【人間工学】はあまり割り切れる学問でもないのですが、今回はそういった学問もある という紹介と、ではそれはガンダムにどのように応用されているのかを書いてみました。 今まで見たことのなかった視点だったので。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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