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第3料理長はたった今、厨房にある皿の山を倒して床を破片の絨毯に変えてしまったアリランにゆっくり近づき覗き込みながら言った。 「お前の顔は見覚えがないがどこから来た?」 アリランは臆することもなく第3料理長に視線を合わせて言った。 「私、韓国から日本料理の勉強のために来ましたアリランと申します。アントコックさんに雇っていただき、今日が初めての厨房です。アントコックさんはここに来る直前に急に体調を崩され代わりに行くように申しつかりました。連絡はまだ入っていませんか?」 第3料理長は顔をしかめ背筋を伸ばして、アシスタントアリを手招きした。 アシスタントアリは第3料理長から事情を聴くとアリランに向かって言った。 「アントコックさんの紹介であれば間違いはないはずですが、調べますのであなたの身分証明IDカードを私に渡しなさい。」 アリランがカードを渡すとアシスタントは厨房の壁にあるカード認証リーダーに自分のカードとアリランのカードを読ませて、アリランの認証が有効であるか調べ始めた。 「私は持ち場に戻っていいでしょうか?」 アリランが尋ねると第3料理長は眉を少し持ち上げると言った。 「それはこの砕け散った皿の後始末をしてからだ。」 アリランはニコリと微笑み、さっそく掃除を始めた。
ドアが開き、1人のセキュリティが入って来た。 「おい君そこで何をしているんだ?」 セキュリティはキャビネットを開いているアリマッグローに近づいて尋ねた。 アリマッグローは魅惑的な視線をそのセキュリティに向けると、セクシーな足取りで近づき触れそうになるほど顔を近づけ、小声でささやいた。 「あら?あなたさっきあっちのフロアで見かけたけど、セキュリティの方だったのですね?あなたのような方にもっと早く出会えていたら、あの浮気男からあんな惨い仕打ちを受けずに済んだのに。」 そう言って彼女は憂いを込めた瞳で、上目づかいに彼を見つめた。 セキュリティはニヤッとしたが、自分の任務を見失うことはなかった。 まっすぐ彼女に視線を向けると言った。 「ところで君はここで何をしているんだい?」 マッグローは彼の口調が微妙に変わったのを聞き逃さなかった。 彼女はうなじを少し傾けて胸元までの線を微妙に強調した。 小指を口元に押し当てながら言った。 「私、『和食材における血糖値への影響』というライブラリカードを探しているんだけど見つからないの。」 セキュリティは舌打ちしながら答えた。 「ここは、レベル3機密文書保管室だからセンター内の所員なら閲覧は禁止ではないけど、分野が違わないか?」 「えっ?ここ342号資料室じゃないの?」 「ここは324号資料室ですよ。」 セキュリティはマッグローの言葉にこう返した。 「あらいやだ、私部屋番号を間違えてたわ。」 そう言って部屋を出ようとしたマッグローにセキュリティは付け加えた。 「君、セキュリティカードを出してくれないか?詳しく調べるから。場合によっては報告しなくちゃいけないからな。」 マッグローは青ざめた顔で懇願した。 「お願い。私部屋を間違えてたの信じて。」 「そうかい?それじゃ俺の部屋に行って詳しいことを聞こうか?」 そう言ってセキュリティの男はマッグローの肩に手をかけ、二人は部屋を出た。 そして、マッグローは後ろ手に親指を立て部屋を後にした。
物陰に隠れていた残りの4人はこのサインを見届けた。 「マッグローさんはどうなるんだ?」 トットさんが心配そうに聞くとモハメドアリは不敵な笑い顔でこう言った。 「あの男、上司から散々説教を食らった挙句クビになるだろうな。これで奴も一介の働きアリだ。」 「どういう事だ?」 「だって、勤務中に居眠りしてちゃまずかろうってもんだ。」 モハメドアリは軽くウィンクした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
それからどうなるのかな??(^_-)-☆
(2019.10.24 17:27:33)
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