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カテゴリ:ニャン騒シャーとミー八犬伝
現八は信乃の左腕の牡丹の痣を見ながらあることを思い出した。
今代官所に引き立てられている囚人がむち打ちをされているとき、その背中にも同じような痣があったのを。 「もしやその男は犬川という名前ではないか?」 信乃は驚いて現八に詰め寄った。 現八は信乃の勢いに圧されてのけぞったが、すぐにうなずいた。 「額蔵は私とは義兄弟の仲なのです。そして彼も八犬士の一人。」 信乃の言葉に現八は驚いた。 「まことか?ならばすぐに犬川を救いに参ろう。俺はこの事件どこかおかしいと思っていたのだ。犬川には主人を殺すいわれがないから、誰かに罪をきされているのではないかと同心のおひとりと密かに調べていたのだ。」 信乃もすぐに同意した。 「信乃さん、現八さん、ちょっと待っておくんなさい。」 それまで黙って聞いてた雷が口を挟んだ。 「あなた方が強いお侍さんでも、いくら何でも二人で代官所に乗り込むなんて無茶だよ。おいらにいい考えがあるから、乗り込むのは三日ほど待ってもらえねえか?」 雷の言葉に現八は食って掛かった。 「犬川の処刑は二日後なのだ。」 信乃も雷もこれを聞いて驚いた。 「額蔵が処刑されるのか?無実ではないのか?」 現八は苦々しい表情でつぶやいた。 「これには誰か、裏で糸を引いている奴がいて、そいつが何が何でも犬川に死んでもらいたいらしい。」 つまり、その裏で糸を引いている者こそ真の下手人なのだ。 「わかった。おいら今から急いで行って来るからお二人は代官所で様子を探っておいてください。現八さんなら代官所に出入りする身、何とか引き延ばせるんじゃねえかい?」 雷の言葉に現八はうなずきながら、先ほどから疑問に思っていたことを訊いた。 「ところで雷、お前どこに行こうと言うんだ?」 雷は苦笑いしながら、ひとこと言って姿を消した。 「今は言えねえ。」 「雷、その話本当だろうねえ?」 雷はうなずき今までの経緯を話した。 「何?喜利がその犬塚信乃って侍を助けたのかい?喜利の父親の父五里の旦那には深い恩がある。一肌脱ごうじゃないか。」 義盗賊螺良猫団の首領の黒猫螺良は隣に控える黒っぽい猫の佐飛に目配せした。 佐飛は息子の茶トラ猫の茶阿に指示した。 「今ちょうどあの悪代官と裏で結託して米の買い占めを企んでいる金貸しの扇屋の屋敷を探っている空と菜奈に代官所へ向かうように言っておくれ。アタシが駆けつけるまでに屋敷の間取りを調べておくようにってね。」 「佐飛母さん任せておくんな。ついでに代官屋敷の近くに適当な隠れ家も探しとくよ。」 茶阿はそう言うと消えるように走り出て行った。 「雷、あんたはどうするんだい?」 螺良の言葉に雷はニヤリと笑って言った。 「おいらはこれから山烏一族の所へ行こうと思っているんだ。」 螺良は眉を寄せて尋ねた。 「そんなとこに行ってどうするつもりだい?」 「山賊の手の者の訴えで信乃さんは捕まって代官所にしょっ引かれた。だが、あの珠はその価値を知らない代官から扇屋が体よく安く買い上げた。扇屋はそれを江戸の奉行所に持って行き一万両で売るつもりだと言ってやります。そうすればあの欲の皮の突っ張った山賊ども、必ず扇屋を襲うに違いない。代官所は扇屋を救うために捕り方たちを向かわせ、代官所は空っぽになるって訳です。」 雷の説明を聞き螺良は唸って言った。 「お前、頭がいいねえ。アタシたちと組まないかい?」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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