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カテゴリ:ニャン騒シャーとミー八犬伝
氷垣残三は各隊の頭、七犬士、螺良猫団の佐飛、茶阿の他に雷も参加して軍議を開いていた。 穂北荘の兵は未だ士気は衰えることなく奮闘はしているものの、やはり数の優位と、最近定正に追加で招集され身体万全の新たな三千の兵の勢いで、劣勢の様子が見え始めたからだ。
「みなも知っての通り、戦況ははっきり言って芳しくない。螺良猫団の方々からもたらされる情報も、最近敵も感づき始めており警戒も厳しくなってきている。そこでみなに集まってもらい、何か良い案はないか知恵を出し合ってもらいたい。」 そう言って残三は唇を噛んだ。 だが、なかなかいい案など出るものではない。 「ここは一度、思い切って打って出るか?」 定正憎しの道節は言った。 「いや、ここは先に動いた方が大きな痛手をこうむることになる。」 慎重な荘助は反対した。 「氷垣様。私が配下の者と密かに敵の背後に回り、時を同じくして奇襲をかけては。」 この地を知り尽くした侍頭の弥平が言った。 「今、敵は三つの峠に陣を構え、お互いを守り合っている。三つの陣の背後に回り、それぞれの陣に向かって正面から挟み撃ちにするには、余りにも我が方の兵は足らぬ。」 残三は否定した。 「私たち螺良猫団が各陣に火を掛け、混乱に乗じて攻めては。」 佐飛の意見に現八は反対した。 「いや佐飛さん。あの間抜けな扇谷の者たちも、最近そなたたちの存在に気づき始めている。初めの頃は兎も角、今はあまりにも危険すぎる。」
行き詰った雰囲気の中で腕組みをして途方に暮れかけた残三がふと目を上げると、娘の重戸が誰かを案内して部屋に入ってきた。 彼は続いて入って来た旅の僧に気付いて立ち上がり思わず叫んだ。 「おお、丶大様。」 これには当然七犬士たちも一斉に振り向いた。 丶大は静かに足を踏み入れた。 そしてその次に若い武者が続いた。 七犬士には、この若武者が誰なのか見当もつかなかった。 彼らは犬江親兵衛はまだ四、五歳の童と聞いていたからだ。 その後ろに続くのは犬族の比瑪。 さらに姿を現したのは父五里姉妹の次女である喜利。 「喜利さん、どうしてここへ?」 信乃だ。 信乃は山賊山烏一家に捕らえられたとき、喜利に守られ、脱出の手伝いをしてもらったのだ。そのとき、喜利と連絡し合って信乃を山から村まで案内してくれたのが雷だ。 最後に入って来たのは喜利の姉、長女の蘭だ。 蘭は崖から落ちて気を失った道節を救ってくれた。 逆に小文吾は喜利の妹、三女の芹と山で拾った幼い猫の子ども芽恵を山賊から守ってくれ、従妹の百合と共に蘭の元へ無事送り届けてくれた。
かつて里見義実が伏姫の夫にと望んだ里見家臣団きっての猛者金碗大輔こと僧丶大は、父親の病を治すために蝦蟇の油を求めて筑波山へ父五里姉妹に同行し、そこで犬江親兵衛に遭遇したことを説明した。
「穂北荘の方々、そして犬士の方々、私は犬江親兵衛と申しまする。以後よろしくお願いいたしまする。」 ほんの幼き童と聞かされていた犬士は、親兵衛の説明を聞き終わるまで信ずることはできなかった。
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我が家の娘たち、再登場と相成りました。
皆がそろったら、皆が揃たら、螺良猫団の一節をいざ歌わんかな、舞わんかな、いざ狂わんかな~! さてどうなる? (2020.06.11 05:42:17)
とうとう、八犬士が集まったのかな。初見参ってところですね。
これから、風向きが変わるのでしょうか。 (2020.06.11 21:09:41)
パパゴリラ!さんへ
父五里姉妹はここで、パパゴリラ!さんのために手に入れた蝦蟇の油を使いつくしてしまいます。 でもご安心を、最後に素敵な贈り物があります。 (2020.06.14 13:00:39)
空夢zoneさんへ
八犬士に八ニャン士がそろい、大団円と向かいます。 実は途中訳あって間をすっ飛ばして最後になります。 ここへきて初めてマスPオリジナルの10話になるのですが、我ながらよくこんな作戦を考えるなと思います。 私も結構軍師になれるかも。 まあ大体軍師てのは性格が悪くないとなれないと思いますが。 (2020.06.14 13:03:52) |