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カテゴリ:ニャン騒シャーとミー八犬伝
虹色に入り乱れる霧の中から、三つの影が近付いてくる。 猫族の小さな体。黒い影、 次第に近づき、次第に表情が見え始める。
真ん中で先頭を歩いて来たのは、精悍な顔つきのキジトラの猫。 「兄さん。織(おり)兄さん。」 連が生まれるずっと前に亡くなった兄に、巫女の雛が叫んだ。
左に続いて来たのは、気品が漂う美しきサバトラの猫。 「風(ふう)じゃないか、あの時おいらを助けてくれた。」 山賊の弓矢から救ったあとに、突然姿を消した風をみて雷は言った。 最後に右から現れた、いつも穏やかな微笑みを絶やさない白地に黒の猫。 「瓜太さん。」 浜路はそう言って思わず駆け寄った。 それは遂に八犬士が揃い、各々が持つ仁義八行の珠をそれぞれ高く空に掲げた時のことだった。 八つの珠は眩しく光り、光は一つに集まり、集まった光は徐々に天に上り、天からも光が舞い降り一つになり、そこから七色の雲が湧きだし、霧となって彼らを覆い尽くした。 天から現れたそれは、始めは小さな点と思われたものが次第に近づき像をなし。 それは明らかな姿と変わった。 八つの牡丹の花のような斑を持つ八房に跨った伏姫である。 「伏姫様。」 丶大こと金碗大輔はそっと跪いた。 かつては主君里見義実から、伏姫の夫に望まれながら彼女の非業の死の後、丶大と名を変え僧として八犬士探索の流浪の旅に出てはや二十五年の歳月が流れていた。 八房の両脇に二人の白い犬族の男が付き従っていた。 「吾妻(あづま)兄さん。」 蘭が叫んだ。 「徹(てつ)兄さんも。伏姫様の所に二人とも一緒にいるの?」 雛と連の兄、織は言った。 「真の八犬士となった伏姫様の子らよ、今、安房里見義成様の下に帰参するのだ。」 雛は織に尋ねた。 「兄さん、どうやって?ここは武蔵の国、安房の国ははるか彼方。間には扇谷に与する上総の国千葉家がいるのよ。」 織は精悍な顔を崩して、妹の額に自分の額を押し当ててささやいた。 「今、お前の霊力が必要なのだ。お前の神技で安房への道を開くのだ。」 そう言って織は目を閉じた。 織が離れると、雛は突然何かにとりつかれたように立ち尽くし、やがてそれを見守る八犬士へと振り返り直立した。 突然両腕を大きく横に大きく広げ、体を後ろにのけ反らせ、顔を天に向け、そのまま爪先立ち、今にも空に舞い上がりそうな次の一瞬、大きく前に飛び出すと背を屈めた。 腕は鳥が空を飛ぶが如く、大きく肩の後ろに高く広げた。 シャン、シャン、シャン 彼女が懐から取り出し鈴の音が、厳かに鳴り渡る。 シャン、シャン、シャン シャン、シャン、シャン 左足で体を支え、右足をその更に左へと長く伸ばし、両腕は右へと力強く突き出す。 シャン、シャン シャン、シャン 今度は反対に手足を伸ばす。 シャン、シャン シャン、シャン 彼女の体は次第に熱を帯びたように赤く染まり、光を放つ。 シャン、シャン シャン、シャン 雛はひとしきり舞ったのち、両腕を抱え込むように抱きかかえ、何かを必死に願うように口の中で唸りを上げた。
シャン
ひと際大きく、重々しい鈴の響きと共に彼女は体を開き、両手を広げ、両足を広げ、胸を張った。 そして、そのとき・・・・
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父五里家の亡くなったメンバーだけでなく、他家の亡くなったメンバーまで登場ですね。
みな懐かしい名前ですが、忘れられない名ばかりです。 (2020.06.14 08:03:56)
そのときに、何が???( ゚Д゚)
(2020.06.14 14:09:31)
亡くなったにゃんず達、わんちゃん達の面々が出てきて、ちょびっと、涙がでてきましたよ。
その中で、雛ちゃんの舞姿、目に見えるようです。 (2020.06.14 21:31:19)
パパゴリラ!さんへ
パパゴリラ!さんへ ペットは伏姫様の所へ行きます。八房も伏姫のペットですから。 最後にパパゴリラ!さんのお気に入りの方もご登場になります。 (2020.06.17 18:28:36)
空夢zoneさんへ
終章では愛されキャラのあの子も登場です。 急遽終章にご出演依頼させていただきました。 実は彼女マスP文庫では常連さんの名女優なんです。 (2020.06.17 18:33:14)
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