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カテゴリ:我が良き虫の世かな
地上に飛び立ち僅か1週間しか生きられないセミは、実は地中で7年間も幼虫時代を過ごす、虫の中では長寿な生き物なのだという事をご存知だろう?アメリカでは、更に13年周期と17周期の13年ゼミと17年ゼミがいて、この周期性の謎が科学者の間で盛んに論議されている程だ。先日アメリカのあるアイスクリーム屋がセミ入りアイスを出したところ予想に反して大ヒット。しかし当局から発売禁止命令であえなく消えたという話題もあった。 シロアリの女王アリは100年以上生きるものもいるらしいが、これは別格としてもやはり長寿なのだ。 セミの幼虫が7年も生きると言うと、「でも暗い地中の中ででしょ?」とか「お日様を1週間しか見られないんだよ。」という反論が返ってくる。だが人間の感覚で虫の世界を推ってはならない。地中にいるのが不幸なら、暗闇にいるのが不幸なら、ケラやミミズは悲劇の主人公、ロミオとジュリエットどころではないではないか。勿論そんな事はない。彼等はそこに好んで住んでいるのであり、それが幸せなのだ。 もうすぐ夏。地中ではセミの幼虫達の卒業式が開かれていた。 「送辞。6年生の皆さん。長い間僕たちの優しいお兄さんお姉さんとして、遊んでくれたり、教えてくれたり、励ましてくれだり、注意をしてくれたりして、幼稚園から7年間本当にありがとうございました。・・・・・・・」 : 式は続いて、 : 「卒業式もそろそろ終りです。それでは6年生の皆さん一人一人から答辞をいただきたいと思います。」 「在校生の皆さん、私たちは間もなく旅立ちます。皆さんと過ごした7年間とても楽しかったです。」 「僕はきっと素晴らしいお嫁さんを見つけて卵を産んでもらいたいと思います。」 「私は大きくて丈夫な卵を産みます。」 「僕は大きな音で思い切り鳴きたいと思います。」 「僕も大きな声で負けないように頑張ります。」 : 最後にメソメソ泣き虫のミンミンが残った、 : 「私はもっとここにいたかった・・・」と、消え入りそうな声で話し始めたが最後に、 「後一週間しか生きられないと思うと悲しいし寂しいけど、これが今までのご褒美と思って一週間を思う存分楽しみたいと思います。」とはっきりした大きな声で締めくくった。 会場から一際大きな拍手と歓声が沸き上がった。 奇しくもミンミンが言ったように、地上で一週間しか生きられない事をセミ達は悲観しているばかりではなく、最後のひとときをパッと花開かせる、 そう、 7年間の光跡を残し、最後に大輪の花を咲かせる花火の様な虫なのだと私は思うのだ。 : 式はようやく終わり、 : 一匹また一匹、背中がむず痒くなると地上へ出て行った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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