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2020.12.27
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めっきり強くなった日差しの中で蝶のキタテハは舞う。

何十年、何百年と受け継いで来たし、これからも受け継いで行く春の風景。

花は香りに我が身を託し、目にもまばゆい極彩色で虫達を誘う。

これもまた、幾百年も繰り返して来た春の習わしである。

春は己を待ちわびる数多の命に優しく囁く、「冬は去った。代わりに温かな風を運んで来た。だからさあ出ておいで。」と。

躍動、飛翔、徘徊、

虫達はそれぞれの形でそれに応える。

春はたゆたう磯の波に似て、ある時は逆巻く波に洗われ、凍える風雨に阻まれながらも、今この場所に安住の場所を求めようとしている。

 

キタテハは目覚め、花の差し出す蜜の香りに誘われて、巻き取った舌をそこに伸ばす。

 

「うっ!冷たい!」

 

キタテハはあまりもの冷たさに今度は本当に目覚めた。

 

辺りは暗く、相変わらず凍り付くような寒さだ。どうやら寝惚けたらしい。

キタテハは落胆のため息を漏らしながら、再び忍耐の冬眠に戻った。






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最終更新日  2020.12.27 00:00:18
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