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カテゴリ:グーとタラの宇宙放浪記
『俺たちゃ一番』号はくしゃみをするように大きくビクンと震えた。 「痛ーい!」 床下の動力室で船の修理をしていたタラは、先ほどの振動で床に置いていたスパナが落ちてきて頭に直撃し、その痛いのなんので思わず叫んだ。 「おいグーどうしたんだ?」 タラはまだ痛む頭をさすりながら動力室の開いた床からひょっこり顔を出して、操縦室に座っているグーに声を掛けた。 だがグーは両手で頭を抱えて茫然と操縦パネルを見つめているだけだった。 「おいグーどうしたんだ?」 タラはもう一度グーに声を掛けた。 「大変だあ!」 グーはそう叫んだまま、また押し黙ってしまった。 タラは汚れクリーナーで両手の汚れをきれいに落としながらグーの傍までやって来た。 「おいグー一体何が大変なんだ?」 タラが聞くとグーは頭を抱えたまま叫んだ。 「跳躍ユニットが完全に吹っ飛んじゃった!」 それを聞いてタラの顔は一気に青ざめた。 「何だって!?」 二人ともあまりにものショックでしばらく声も出せずに赤く灯る操縦パネルの跳躍ユニットのランプを見つめていた。 ====== 彼らが茫然となっている間に、この物語についていくつかお知らせしておきたい。 時は宇宙標準465年第5区間月16日。 宇宙標準元年は宇宙統一言語が定められ、それに合わせて宇宙統一憲法が制定された日を宇宙標準0年第1区間月1日としている。1宇宙標準年は20区間月に分けられ、1区間月は20日である。つまり1宇宙標準年は400日という事になる。 1日の長さは自転速度の違う惑星ごとに違うから、光の進む時間の1000万分の1を1秒としてしている。 ちなみに地球の秒で表せば3.8秒だから、1日は91.2時間となる。 宇宙標準元年に科学技術や文化、精神レベルが一定の水準に達している星が、それまでそれぞれに持っていた時間単位や言語、法律を宇宙統一基準に合わせる事に合意して宇宙国家が誕生したのだ。現在この宇宙国家に所属する星の数は384まで増えていた。 宇宙国家では最近宇宙船手作りキットが大ヒット商品となり、ご多聞に漏れずグーとタラもなけなしの貯金をはたいて宇宙船を作り、こうやって旅を続けているのだが、旅に出てもう2宇宙標準年が過ぎる。 ここでお断りしておくが、宇宙標準言語は地球に無数に存在する言語とは全く異なるため、この物語は宇宙標準言語を地球の日本語に自動翻訳してお届けしている。 ====== 「グー?それで今どこに俺たちはいるんだ?」 タラはようやく気を取り直してグーに聞いた。 グーはさっそく宇宙船の広域宇宙マップを調べてうめいた。 「キョーヘン宙域のシゲン太陽系だ。このあたりで生物が住んでいる星はそこに見える星で、宇宙標準発展レベルは10段階の下から2番目。当然レベル7以上でないと加盟できない宇宙国家には所属していないし、宇宙標準言語も通用しないし、そもそもこの星の生物は宇宙統一国家の存在自体知らないし、おそらく自分たち以外他の星に生物がいる事も知らないだろう。 だからこの宇宙船用の宇宙跳躍ユニットなんて売ってるわけがない。」 タラは試しに未知の星用の自動言語アナライザーを星に向けてみた。下から2番目のレベルの星でも原始的な通信技術は持っているようだ。 しばらくして彼はつぶやいた。 「なになに?この星のやつら、自分たちの星の事を『地球』と呼んでいるみたいだぞ。」
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