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カテゴリ:太っちょポッポのトットさん
これまで地球から数十万光年も離れたビリノン星でグーとタラが催したお別れ会に、突如地球バトのトットさんが唐突として現れたため、トットさんとは一体何者かを知っていただくために過去のトットさんをご紹介しました。 さあこれからトットさんがビリノン星に現れるまでの物語が始まります。 それは2年前。 トットさんが神戸に行ったとき、そこで知り合ったマリリンという猫と子供たちが住む場所を失い、若く賢い相棒の若鳩ジョンピーと神戸の街で新たな住み場所を探し回った時のことだ。 「トットさん。色々探してみたけどやはりどこに行っても人ばかりで、マリリンさんたち野良ネコさんや野良イヌさんたちが住める所なんてないね?」 ジョンピーの言葉にトットさんはハトのくせに吠えた。 「大体人間のやつら、自分たちだけがこの世界で生きていると思っていやがるんだ。俺たちハトは羽があるからどこにでも行けるが、それでも餌やり禁止とか、駅のホームにも網や棘でハトが寄り付けないようにしてやがるし・・・・・。」 「でもトットさん、羽があっても飛んで行けないじゃないか?」 「ああ、そうだな。俺ハトのくせに飛べないし・・・・・?他人の事はほっとけ!余計なお世話だ。」 そう言ってトットさんは相変わらず、マリリンさんたちが住める安住の地を求めて神戸の町をさまよった。 しばらく行くと町の小さな本屋が目に留まった。 その本屋の店先には最近売れている本がこれ見よがしに陳列してあり、どうにか人の視線を集めようとあの手この手の宣伝文句が本棚に貼られていた。 『キッズ・ファイター。留守宅の子供たちを襲った恐怖の一夜。』 『人類滅亡。その先に来るものは?』 『日本経済は今こうして蘇る。そして、あなたは今何をするべきか?株必勝法!』 など、派手なポップで人目を引こうと躍起になっているのが手に取るように分かった。 「うん?これは?」 トットさんは一つのポップに目を留めた。 『北海道阿寒湖、東北ブナ原生林、兵庫県六甲山、四国四万十川、日本ミステリーゾーンを求めて。』 「どうしたのトットさん?」 そう言ってジョンピーもそのポップを見つめた。 「六甲山にミステリーゾーンがあるんだろうか?」 二人の心はあの一年前の大冒険に戻っていた。 突如死の病に襲われたマリリンさんを救う不思議な木の実が、六甲山の野生動物しか知らないある場所に実っており、それを食べさせればマリリンさんの病気は治せるという。そこでトットさんとジョンピーはお互いを紐で結びつけ、いつも強風に吹きさらされるある六甲山の渓谷で決死の大飛行を繰り広げ、見事その実を持ち帰りマリリンさんは救われたのだ。 「トットさん、あの場所がミステリーゾーンなのだろうか?」 ジョンピーはトットさんに尋ねた。 「さあな?そこは何でも知っているジョンピー先生の方が詳しいんじゃないか?」 「そんな事、僕にも分らないよ。でも・・・・。」 ジョンピーが言葉を切ったのでトットさん聞き直した。 「でも、何だ?」 「でも、確かにあの場所はなんだか不思議な雰囲気があったね?第一いつも強風が吹き荒れるなんて、何かありそうな感じはするよね?」 「そうだなあ・・・・。」 トットさんはそう言うとしばらく考えてこう言った。 「ジョンピー、もう一度あそこに行ってみようじゃないか?何か面白い事がありそうな気がするんだ。」 ジョンピーはハトが豆鉄砲を食らった様な顔をして、もっとも正真正銘そうなんだが、 「えっ?また重たいトットさんをぶら下げてあの強風の渓谷を飛ぶの?」 と叫んだ。 「ああそうだ。お前も今じゃ立派なレース鳩だし、それくらい大した事じゃないだろう。」 「でも、トットさんをぶら下げるなんてもう・・・・・。」 不平を言うジョンピーにトットさんは言った。 「これもマリリンさんとかわいい子供たちのためだ。」
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